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思い知らせて
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だが頷いた後で、今日秀一と大和が美姫を挟んでしていた会話を思い出した。
「なぜ秀一さんは、大和に『初めまして…』って言ったのですか?」
私の思っていた通り、秀一さんは大和のことを知ってた。でも、なぜ秀一さんはそれを隠す必要があったの?
「彼と直接話したのはあれが初めてでしたからね。まぁ向こうも私の存在を知っていることは分かっていましたが……
それと……」
秀一はそこまで言うと、口を閉ざした。美姫が首を傾げ、隣の秀一を見上げた。
「それと?」
「……羽鳥大和に嫉妬する気持ちがあって、大人気ない対抗心を燃やしてしまったのも事実です」
秀一はその時のことを思い出したのか、少し罰が悪そうな顔をした。
「え……」
う、そ…秀一さんが、嫉妬してたなんて……
いつもヤキモキするのは自分ばかりだと思っていた美姫は、秀一の言葉と表情に驚きと共に嬉しさを感じていた。
秀一は、すでに美姫と大和との間に何があったのか理解しているような口ぶりで言った。
「おおかた、叔父と姪が禁忌の関係であることを諭されたのでしょう。私のことは、諦めろ…と」
「え、えぇ……」
まさか、私と大和のいたカラオケBOXに盗聴器仕掛けてた、とかではないよね……
コンサートの最中にそんなことが出来るはずない、と分かっているものの、秀一の行動や考えは美姫には計り知れない。美姫は背中から汗が滲み出るのを感じた。
秀一は、大和への嫌悪感を露わにした。
「あの男は何も分かっていませんね……貴女のことを諦められるものならとっくに諦めていました。それは美姫、貴女も同じでしょう?
私は、たとえ誰に責められようとも非難されようとも、貴女との愛を貫き通します。どんな困難が降りかかろうとも、私は…貴女を離す気などありません」
柔らかく包み込んでいた手を取り、口づけをした。まるで、騎士に忠誠を誓われた姫のような気分になった。
「秀一さん……」
「貴女は…誰にも渡しませんよ……」
思い知らされる。やっぱり私には、秀一さんしかいないのだと……
私も…秀一さんを誰にも渡したくない。離れることなんて、考えられない。
美姫の肩が更に引き寄せられ、二人の距離が近付く。見上げると、秀一の細められた優しい瞳が美姫を見つめている。その眩しさに思わず目を閉じると、唇が優しく重なった。
秀一さんが、好き。叔父と姪であっても、構わない。一緒に、いたい......
美姫は秀一への想いを改めて感じた。
ドンドンドンドン……!!!
『シューイチー!ラストチャンスだよーっ!!これからみんなで打ち上げだからぁっ!!』
突然、扉をノックする音ともにザックの声が響く。美姫はビクッと躰を震わせ、反射的に秀一から退いた。
秀一の眉間に皺が寄せられ、静かに立ち上がった。
「少し、待っていて下さい……」
秀一が扉を開くと、そこにはザックの嬉しそうな顔があった。
『シューイチ!打ち上げ行く気になった?』
『なりませんよ。私達はこれから帰りますから。明日、気をつけて帰国して下さいね。モルテッソーニによろしくお伝え下さい』
秀一は美姫の方へと振り返った。
「さ、美姫。行きますよ」
美姫はザックに申し訳なく思いながらも秀一に従い、彼の元へと急いだ。まだキスの余韻が残り、美姫の頬は赤く染まったままだった。ザックが恨めしそうな顔でふたりを見上げる。
『シューイチーっ!!!』
『では、ご機嫌よう』
美姫は秀一の後ろから控えめに顔を出し、ザックに英語で声をかけた。
『ザック…今日は会えて嬉しかったです。
貴方と秀一さんの連弾も素晴らしかったし……頭の中にモルダウ川の壮大な景色が映像で流れてきて…感動しました!今回はアンコールしか聴けなかったんですが、ぜひ今度はソロで聴かせてくださいね』
ザックはその言葉を聞くと美姫の腕を引き、強く抱き締めた。
『ミキー!!僕も君に会えて嬉しかったよ!あぁ、ほんとに打ち上げ行く気はないの?残念だなぁ。もっと日本の女の子の話が聞きたかったし、紹介もしてもらいたかったのに…あ、もしオーストリアに来ることがあればぜひ連絡してよ。シューイチもいずれはこっちに来ることになるだろうし。あ、それから…』
「行きますよ、美姫……」
秀一がザックから美姫を引き剥がし、話が止まりそうにないザックを見限って美姫の腕をひいた。美姫は秀一に腕を引かれながら、ザックに手を振った。
『あ...では気をつけて帰国して下さいね』
『わぁーん、待ってーっっ!!まだ話が終わってないのにぃーーっっ!!!』
「なぜ秀一さんは、大和に『初めまして…』って言ったのですか?」
私の思っていた通り、秀一さんは大和のことを知ってた。でも、なぜ秀一さんはそれを隠す必要があったの?
「彼と直接話したのはあれが初めてでしたからね。まぁ向こうも私の存在を知っていることは分かっていましたが……
それと……」
秀一はそこまで言うと、口を閉ざした。美姫が首を傾げ、隣の秀一を見上げた。
「それと?」
「……羽鳥大和に嫉妬する気持ちがあって、大人気ない対抗心を燃やしてしまったのも事実です」
秀一はその時のことを思い出したのか、少し罰が悪そうな顔をした。
「え……」
う、そ…秀一さんが、嫉妬してたなんて……
いつもヤキモキするのは自分ばかりだと思っていた美姫は、秀一の言葉と表情に驚きと共に嬉しさを感じていた。
秀一は、すでに美姫と大和との間に何があったのか理解しているような口ぶりで言った。
「おおかた、叔父と姪が禁忌の関係であることを諭されたのでしょう。私のことは、諦めろ…と」
「え、えぇ……」
まさか、私と大和のいたカラオケBOXに盗聴器仕掛けてた、とかではないよね……
コンサートの最中にそんなことが出来るはずない、と分かっているものの、秀一の行動や考えは美姫には計り知れない。美姫は背中から汗が滲み出るのを感じた。
秀一は、大和への嫌悪感を露わにした。
「あの男は何も分かっていませんね……貴女のことを諦められるものならとっくに諦めていました。それは美姫、貴女も同じでしょう?
私は、たとえ誰に責められようとも非難されようとも、貴女との愛を貫き通します。どんな困難が降りかかろうとも、私は…貴女を離す気などありません」
柔らかく包み込んでいた手を取り、口づけをした。まるで、騎士に忠誠を誓われた姫のような気分になった。
「秀一さん……」
「貴女は…誰にも渡しませんよ……」
思い知らされる。やっぱり私には、秀一さんしかいないのだと……
私も…秀一さんを誰にも渡したくない。離れることなんて、考えられない。
美姫の肩が更に引き寄せられ、二人の距離が近付く。見上げると、秀一の細められた優しい瞳が美姫を見つめている。その眩しさに思わず目を閉じると、唇が優しく重なった。
秀一さんが、好き。叔父と姪であっても、構わない。一緒に、いたい......
美姫は秀一への想いを改めて感じた。
ドンドンドンドン……!!!
『シューイチー!ラストチャンスだよーっ!!これからみんなで打ち上げだからぁっ!!』
突然、扉をノックする音ともにザックの声が響く。美姫はビクッと躰を震わせ、反射的に秀一から退いた。
秀一の眉間に皺が寄せられ、静かに立ち上がった。
「少し、待っていて下さい……」
秀一が扉を開くと、そこにはザックの嬉しそうな顔があった。
『シューイチ!打ち上げ行く気になった?』
『なりませんよ。私達はこれから帰りますから。明日、気をつけて帰国して下さいね。モルテッソーニによろしくお伝え下さい』
秀一は美姫の方へと振り返った。
「さ、美姫。行きますよ」
美姫はザックに申し訳なく思いながらも秀一に従い、彼の元へと急いだ。まだキスの余韻が残り、美姫の頬は赤く染まったままだった。ザックが恨めしそうな顔でふたりを見上げる。
『シューイチーっ!!!』
『では、ご機嫌よう』
美姫は秀一の後ろから控えめに顔を出し、ザックに英語で声をかけた。
『ザック…今日は会えて嬉しかったです。
貴方と秀一さんの連弾も素晴らしかったし……頭の中にモルダウ川の壮大な景色が映像で流れてきて…感動しました!今回はアンコールしか聴けなかったんですが、ぜひ今度はソロで聴かせてくださいね』
ザックはその言葉を聞くと美姫の腕を引き、強く抱き締めた。
『ミキー!!僕も君に会えて嬉しかったよ!あぁ、ほんとに打ち上げ行く気はないの?残念だなぁ。もっと日本の女の子の話が聞きたかったし、紹介もしてもらいたかったのに…あ、もしオーストリアに来ることがあればぜひ連絡してよ。シューイチもいずれはこっちに来ることになるだろうし。あ、それから…』
「行きますよ、美姫……」
秀一がザックから美姫を引き剥がし、話が止まりそうにないザックを見限って美姫の腕をひいた。美姫は秀一に腕を引かれながら、ザックに手を振った。
『あ...では気をつけて帰国して下さいね』
『わぁーん、待ってーっっ!!まだ話が終わってないのにぃーーっっ!!!』
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