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愛の為に
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こうして、1週間の間に3つの課題をこなし、直貴の元へと通う生活が始まった。
課題は、大学のこと、公でのルールのこと、生活面のことに分かれて毎週出された。生活面では、ゴミの仕分けや洗濯の仕方だけでなく、脱いだ靴下を洗濯カゴに入れることやバスルームを使ったら換気扇をかけるとかトイレの便座を上げっぱなしにしないとか、ありとあらゆる細かいことを課題にされた。
幸田は僕のことをそれはよく把握してくれていて、今まで甘えきった我儘坊ちゃんの改革が出来ることを心から楽しんでいるようにみえた。
そして、課題をこなした僕に与えられた面会の時間。それは嬉しくもあり、辛くもあった。
カウンセラーの予想通り、直貴は母親から虐待されていたという過去が明らかになり、鬱状態に陥った。表情は虚ろで生気がなく、いつもにも増して眠れていないようだった。
「直貴……」
話しかけても、目線すら合わそうとしてくれない。まともに会話が出来ない。まるで、魂の抜けたゾンビだ。
暗く重い空気が僕を押し潰し、ここに流れる時間はまるで泥をたっぷりと含んだ濁った水のようだった。どうしていいのか分からずに立ち尽くしていると、直貴の瞼が重くなり、閉じられた。
ゆらゆらと、躰が揺蕩う。僕は祈るように、彼をじっと見つめていた。
「夕貴、そんな悲観に暮れた顔をしないで下さい。貴方にはそんな表情は似合いませんよ」
「創一様……」
僕の、神……
直貴に代わり、創一様が再び主導権を握ることになったみたいだ。
創一様は懐かしそうに僕を見つめた後、苦しそうに眉を寄せた。
「夕貴。貴方が無事で、本当によかった……滑車が夕貴の頭上に落ちてきた時……私は、無我夢中でした。貴方のことが、自分の命よりも大切なのだと、その時に思い知ったのです」
創一様の言葉に胸が熱くなり、今すぐその胸に飛び込みたくなる。 けれど、創一様はそんな僕の心中を察したのか、制するように僕の胸を掌で押し返した。
「本当は、夕貴をずっと独占していたいのですが……今、夕貴と一番話が必要なのは、素直でしょう」
そうだ。僕は直と、あれから一度も話していない。
「彼を、呼び出してみますね。直接呼び掛けることが出来ないので、難しいですが……」
直貴は直を呼び出すことは出来ないし、直は自分の意思で出てくることが出来ない。けれど、創一様は直にスポットライトを当てることは出来るようだ。
創一様はそっと瞳を閉じた。瞳を閉じる仕草まで、なんて神々しいんだろうと感じた。
課題は、大学のこと、公でのルールのこと、生活面のことに分かれて毎週出された。生活面では、ゴミの仕分けや洗濯の仕方だけでなく、脱いだ靴下を洗濯カゴに入れることやバスルームを使ったら換気扇をかけるとかトイレの便座を上げっぱなしにしないとか、ありとあらゆる細かいことを課題にされた。
幸田は僕のことをそれはよく把握してくれていて、今まで甘えきった我儘坊ちゃんの改革が出来ることを心から楽しんでいるようにみえた。
そして、課題をこなした僕に与えられた面会の時間。それは嬉しくもあり、辛くもあった。
カウンセラーの予想通り、直貴は母親から虐待されていたという過去が明らかになり、鬱状態に陥った。表情は虚ろで生気がなく、いつもにも増して眠れていないようだった。
「直貴……」
話しかけても、目線すら合わそうとしてくれない。まともに会話が出来ない。まるで、魂の抜けたゾンビだ。
暗く重い空気が僕を押し潰し、ここに流れる時間はまるで泥をたっぷりと含んだ濁った水のようだった。どうしていいのか分からずに立ち尽くしていると、直貴の瞼が重くなり、閉じられた。
ゆらゆらと、躰が揺蕩う。僕は祈るように、彼をじっと見つめていた。
「夕貴、そんな悲観に暮れた顔をしないで下さい。貴方にはそんな表情は似合いませんよ」
「創一様……」
僕の、神……
直貴に代わり、創一様が再び主導権を握ることになったみたいだ。
創一様は懐かしそうに僕を見つめた後、苦しそうに眉を寄せた。
「夕貴。貴方が無事で、本当によかった……滑車が夕貴の頭上に落ちてきた時……私は、無我夢中でした。貴方のことが、自分の命よりも大切なのだと、その時に思い知ったのです」
創一様の言葉に胸が熱くなり、今すぐその胸に飛び込みたくなる。 けれど、創一様はそんな僕の心中を察したのか、制するように僕の胸を掌で押し返した。
「本当は、夕貴をずっと独占していたいのですが……今、夕貴と一番話が必要なのは、素直でしょう」
そうだ。僕は直と、あれから一度も話していない。
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直貴は直を呼び出すことは出来ないし、直は自分の意思で出てくることが出来ない。けれど、創一様は直にスポットライトを当てることは出来るようだ。
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