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異世界漂流編
魔女
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――ここは何処だ?
頭が追いつかない。さっきまで修学旅行中で楽しいひと時を過ごしてたではないか。
もう一度言おう、ここは何処だ!?
見渡す限りの木々、空に浮かぶ島、見たこともない花や虫、身体に絡みつく根っこ。
えっ?
「――――ッッッ!!」
身体が動かせない。凄い勢いで根を張っている。四肢が締め付けられ、土に押し付けられる。
土に還るとはまさにこのことではないか。
「……すけて…れ!!」
助けを呼ぼうにも声が出ない。
――――このまま訳も分からず、何処かも知らない場所で死ぬのか。
――――胸が熱い。焼けるほど熱い。文字が刻まれる感覚だ。
服の内側から浮き出す模様。全身の血の流れが急速になる。
力が湧き上がる。手に血管が浮かぶ。
痛い。苦痛、激痛、疾痛、鈍痛、沈痛、疼痛、絶痛、哀痛、憤痛、痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛……。
「ああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」
一筋の光の柱が天を突き抜ける。漆黒の光は次第に消滅していき、根っこに纏わりつく。するとどうだろう。根っこは途端に萎れていく。それだけではない、近くにある木々も腐っていく。
発生源は少年の胸からだ。
少年の身体を侵食し――――
「すみません、お待たせしました」
――――何処からか声が聞こえる。
息が続かない。視界が眩む。
人影が目の前に現れる。その姿はまるで――魔女の様だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あぁ、遂にこの世界に来てしまったんだね、彼方」
闇を連想させる光の柱は世界のあちらこちらで観測された。
馬車に揺られる黒髪の男は、その光を愛おしそうに見上げる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「又、争いが始まってしまうのね。……貴方が巻き込まれないことを切に願うわ」
大都市の端に聳え立つ学園のテラスの窓越し。眼鏡を掛けた女性は悲しそうに呟いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「戦争だ!戦争が始まるぞ!各地に散らばった仲間に連絡しろ!魔王になっていいのは俺だけだ!!」
声を張り上げた魔男は、紅い絨毯の先にある一つの席ににふんぞり返っていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方――――何で私に会いに来てくれないの?」
監獄の中、天井を見上げる少女。ある少年の名前を嬉しそうに呟いてたと思うと、ここには居ない少年に忌々しそうに問いかける。
答えは返ってこなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ねぇ。あの光何だと思う?」
「悪魔でも降臨したんじゃないですか?」
「悪魔なんているわけあるか。漫画かよ」
「異世界に召喚された時点で漫画の次元を超えているよ」
「あ、もしかしたら、かなたんじゃない?!」
「彼方ならありえそうだね。黒が似合うもん。嫌味ったらしく笑うところとかさ」
「人を小馬鹿にするところだろ」
「……いつでも悪巧みしてそうなとこ」
「「「それだ!!」」」
「彼方くんはそんな意地悪な子じゃないですよ!」
「まぁ、とにかくだ。彼方が危険に晒されることが無いように願いことでもしとこうぜ」
「流れ星じゃんそれ!」
「願いは三回言った方がいいかもね」
「だからそれ流れ星じゃん!」
五人の勇者は、城の訓練場から黒の柱に願いを授けた。
この世界は少年――――彼方を歓迎するだろう。
頭が追いつかない。さっきまで修学旅行中で楽しいひと時を過ごしてたではないか。
もう一度言おう、ここは何処だ!?
見渡す限りの木々、空に浮かぶ島、見たこともない花や虫、身体に絡みつく根っこ。
えっ?
「――――ッッッ!!」
身体が動かせない。凄い勢いで根を張っている。四肢が締め付けられ、土に押し付けられる。
土に還るとはまさにこのことではないか。
「……すけて…れ!!」
助けを呼ぼうにも声が出ない。
――――このまま訳も分からず、何処かも知らない場所で死ぬのか。
――――胸が熱い。焼けるほど熱い。文字が刻まれる感覚だ。
服の内側から浮き出す模様。全身の血の流れが急速になる。
力が湧き上がる。手に血管が浮かぶ。
痛い。苦痛、激痛、疾痛、鈍痛、沈痛、疼痛、絶痛、哀痛、憤痛、痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛……。
「ああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」
一筋の光の柱が天を突き抜ける。漆黒の光は次第に消滅していき、根っこに纏わりつく。するとどうだろう。根っこは途端に萎れていく。それだけではない、近くにある木々も腐っていく。
発生源は少年の胸からだ。
少年の身体を侵食し――――
「すみません、お待たせしました」
――――何処からか声が聞こえる。
息が続かない。視界が眩む。
人影が目の前に現れる。その姿はまるで――魔女の様だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あぁ、遂にこの世界に来てしまったんだね、彼方」
闇を連想させる光の柱は世界のあちらこちらで観測された。
馬車に揺られる黒髪の男は、その光を愛おしそうに見上げる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「又、争いが始まってしまうのね。……貴方が巻き込まれないことを切に願うわ」
大都市の端に聳え立つ学園のテラスの窓越し。眼鏡を掛けた女性は悲しそうに呟いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「戦争だ!戦争が始まるぞ!各地に散らばった仲間に連絡しろ!魔王になっていいのは俺だけだ!!」
声を張り上げた魔男は、紅い絨毯の先にある一つの席ににふんぞり返っていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方彼方――――何で私に会いに来てくれないの?」
監獄の中、天井を見上げる少女。ある少年の名前を嬉しそうに呟いてたと思うと、ここには居ない少年に忌々しそうに問いかける。
答えは返ってこなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ねぇ。あの光何だと思う?」
「悪魔でも降臨したんじゃないですか?」
「悪魔なんているわけあるか。漫画かよ」
「異世界に召喚された時点で漫画の次元を超えているよ」
「あ、もしかしたら、かなたんじゃない?!」
「彼方ならありえそうだね。黒が似合うもん。嫌味ったらしく笑うところとかさ」
「人を小馬鹿にするところだろ」
「……いつでも悪巧みしてそうなとこ」
「「「それだ!!」」」
「彼方くんはそんな意地悪な子じゃないですよ!」
「まぁ、とにかくだ。彼方が危険に晒されることが無いように願いことでもしとこうぜ」
「流れ星じゃんそれ!」
「願いは三回言った方がいいかもね」
「だからそれ流れ星じゃん!」
五人の勇者は、城の訓練場から黒の柱に願いを授けた。
この世界は少年――――彼方を歓迎するだろう。
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