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異世界漂流編
その頃
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「かなたんはどこ行ったの?もうすぐ勇者の儀が始まるんだよ!彼方くんのための儀式なのに本人が居ないと意味がないじゃない!」
立夏が廊下を走り回りながら叫び散らす。脚をドカドカと鳴らしながら。見た目通りの元気な印象をつけたような性格だ。
今、立夏達は彼方を騎士団と協力し捜索しているところである。ちなみに彼方はピュアな王女と邂逅している頃であろう。
「落ち着けって。彼方が俺らに迷惑掛けるのは今に始まった話じゃないだろ?適当に探せばヒョコッと現れるだろうよ」
「その迷惑掛けられるのが当たり前になっているのが釈然としないわ。見つけたら殴ってやる」
魁斗が立夏のイライラを鎮めると共に彼方の安否確認を放棄する。魁斗はこのグループのまとめ役だ。
魁斗の言葉に難癖をつけ、物騒な宣言をする小百合は肇の恋人である。何かと彼方を攻撃しようとする癖がある。
元は彼方の恋人だったとか・・・。
「二手に分かれて彼方くんを探しましょう。肇君と小百合ちゃんは一、二階を探してください。私達は三、四階を探します」
「分かった。行こうか、羽倉ちゃん」
愛梨はいつもしっかりしている委員長タイプだ。真面目な性格としていじめられていつも孤立していたが、彼方が声を掛けてこのグループに入るようになった。
返事をした肇はかわいい顔をしていて女の子と間違える程の美貌をしている。簡単に言えば男の娘なのだ。性格は根暗で引っ込み思案なところがあり、元引きこもりの素性がある。
「よし、ほんじゃ行きますか」
魁斗の号令で各々が動き出す。魁斗の後ろに愛梨と立夏がついていき、肇と紗友里が逆方向に歩いていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
応接間、ホール、食堂、あちこち回り歩く魁斗達。
「うぎゃーーーっっ!!あいつ本当にどこ行ったんだ?!けっこう探したぜ!」
「んんー。三階はホールがでかいから他の部屋はもうないはずです。四階に向いましょう」
頭に血を登らせ絶叫を挙げる魁斗に、愛梨が三階の端にある螺旋階段に向かいながら返答する。
「今、書庫に誰か入らなかった?もしかしたらかなたんじゃない?」
いち早く四階に上がった立夏が書庫に目を向けながら魁斗と愛梨に言い放つ。
「なにっ?!よくやったぞ、立夏!」
魁斗は愛梨の腕を掴み階段を駆け上がり、立夏が指差す書庫に足を向ける。
書庫の中は静かにする、というルールを守りながら彼方を探す。不意に、誰かの会話が聞こえてきた。
立夏と愛梨が顔を合わせ駈け出そうとするが、魁斗に肩を押し戻され本棚の隙に隠れる。魁斗は人差し指を口に当てながらこそこそと話し出す。
(会話にしちゃ大人の声しか聞こえないだろ?しかも、こんな人気のない場所で会話とか、怪しい話に決まってるだろ)
そこまで言うと魁斗は黙り込む。耳をそば立てているのだろう。そのことに気づかない、立夏と愛梨がこそこそと喋りだす。
(あれ、あの人!この前の儀式で獣の王冠にいた人じゃないの?)
(それに、対話している人って確か十字架の魔術師の副団長なんじゃないですか?肇くんがミラさんって言ってました。なんで敵対してる騎士団同士で密談しているんですか?)
(そんなことぐらい分かってて耳を澄ませてんだよ!二人共、少し静かに!)
魁斗が一喝すると、二人が申し訳なさそうに黙り込む。静かに耳を澄ましてると会話がくっきりと聞き取れるようになる。
「本当に魔王様が現れたの?というか気配を感じたの?それとも姿をご覧になったの?」
獣の王冠の狼耳をした男が尋問するように言葉を重ねていく。
「違うわよ。あなたも、ディアメル様の家の近くでほんの少し魔王様の気配を感じたでしょ?きっと蘇ったに決まってるわ」
十字架に、杖が二本交差したマークがついたローブを着た、片目が眼帯な十字架の魔術師の副団長は男を言い聞かすようにする。
魁斗達は騎士の話しを理解できていないが、これだけは分かる。―――魔王と。
つまりこいつらは魔人なのだ。重要な話なのだと分かれば、ここから離れるわけにはいかない。
「邪教徒の奴らにも気が付かれているはずだわ。一刻も早く魔王様を探すわよ!」
「そういえば、少し前にディアメル様の家を騎士団が消しかけたって聞いたよ。神憑りの切札|だってさ。それで一人、異世界人連れ帰ったらしいよ。そいつが魔王様なんじゃない?」
異世界人と言われ、隠れている三人組は彼方の顔を頭に浮かべる。張り詰めた空気に嘆いてしまう一歩前だ。
「はぁっっ!!何それ、初めて聞いたんだけど!ディアメル様が死んだら奴隷の私達も死ぬのよ!もうちょっと危機感ってものを持ちなさいよ、ウルファ!」
そう言うと副団長は目を細めウルファと呼んだ狼耳男とは違う方向をみる。そちらの方向は、魁斗達が隠れている本棚がある。
「ねぇ!盗み聞きしてる奴、出て来きないよ!」
心肺停止寸前にまで追いやられるほどの威圧が本棚の向こうから流れてくる。
冷や汗が物凄い。愛梨はヘタレて泣きかけている。立夏は眼を瞑りその時を待った。魁斗は背筋を凍らせる。
――バレたっっ!!!と。
ちなみに彼方はソフィアに魔王呼ばわりされている最中である。
立夏が廊下を走り回りながら叫び散らす。脚をドカドカと鳴らしながら。見た目通りの元気な印象をつけたような性格だ。
今、立夏達は彼方を騎士団と協力し捜索しているところである。ちなみに彼方はピュアな王女と邂逅している頃であろう。
「落ち着けって。彼方が俺らに迷惑掛けるのは今に始まった話じゃないだろ?適当に探せばヒョコッと現れるだろうよ」
「その迷惑掛けられるのが当たり前になっているのが釈然としないわ。見つけたら殴ってやる」
魁斗が立夏のイライラを鎮めると共に彼方の安否確認を放棄する。魁斗はこのグループのまとめ役だ。
魁斗の言葉に難癖をつけ、物騒な宣言をする小百合は肇の恋人である。何かと彼方を攻撃しようとする癖がある。
元は彼方の恋人だったとか・・・。
「二手に分かれて彼方くんを探しましょう。肇君と小百合ちゃんは一、二階を探してください。私達は三、四階を探します」
「分かった。行こうか、羽倉ちゃん」
愛梨はいつもしっかりしている委員長タイプだ。真面目な性格としていじめられていつも孤立していたが、彼方が声を掛けてこのグループに入るようになった。
返事をした肇はかわいい顔をしていて女の子と間違える程の美貌をしている。簡単に言えば男の娘なのだ。性格は根暗で引っ込み思案なところがあり、元引きこもりの素性がある。
「よし、ほんじゃ行きますか」
魁斗の号令で各々が動き出す。魁斗の後ろに愛梨と立夏がついていき、肇と紗友里が逆方向に歩いていく。
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応接間、ホール、食堂、あちこち回り歩く魁斗達。
「うぎゃーーーっっ!!あいつ本当にどこ行ったんだ?!けっこう探したぜ!」
「んんー。三階はホールがでかいから他の部屋はもうないはずです。四階に向いましょう」
頭に血を登らせ絶叫を挙げる魁斗に、愛梨が三階の端にある螺旋階段に向かいながら返答する。
「今、書庫に誰か入らなかった?もしかしたらかなたんじゃない?」
いち早く四階に上がった立夏が書庫に目を向けながら魁斗と愛梨に言い放つ。
「なにっ?!よくやったぞ、立夏!」
魁斗は愛梨の腕を掴み階段を駆け上がり、立夏が指差す書庫に足を向ける。
書庫の中は静かにする、というルールを守りながら彼方を探す。不意に、誰かの会話が聞こえてきた。
立夏と愛梨が顔を合わせ駈け出そうとするが、魁斗に肩を押し戻され本棚の隙に隠れる。魁斗は人差し指を口に当てながらこそこそと話し出す。
(会話にしちゃ大人の声しか聞こえないだろ?しかも、こんな人気のない場所で会話とか、怪しい話に決まってるだろ)
そこまで言うと魁斗は黙り込む。耳をそば立てているのだろう。そのことに気づかない、立夏と愛梨がこそこそと喋りだす。
(あれ、あの人!この前の儀式で獣の王冠にいた人じゃないの?)
(それに、対話している人って確か十字架の魔術師の副団長なんじゃないですか?肇くんがミラさんって言ってました。なんで敵対してる騎士団同士で密談しているんですか?)
(そんなことぐらい分かってて耳を澄ませてんだよ!二人共、少し静かに!)
魁斗が一喝すると、二人が申し訳なさそうに黙り込む。静かに耳を澄ましてると会話がくっきりと聞き取れるようになる。
「本当に魔王様が現れたの?というか気配を感じたの?それとも姿をご覧になったの?」
獣の王冠の狼耳をした男が尋問するように言葉を重ねていく。
「違うわよ。あなたも、ディアメル様の家の近くでほんの少し魔王様の気配を感じたでしょ?きっと蘇ったに決まってるわ」
十字架に、杖が二本交差したマークがついたローブを着た、片目が眼帯な十字架の魔術師の副団長は男を言い聞かすようにする。
魁斗達は騎士の話しを理解できていないが、これだけは分かる。―――魔王と。
つまりこいつらは魔人なのだ。重要な話なのだと分かれば、ここから離れるわけにはいかない。
「邪教徒の奴らにも気が付かれているはずだわ。一刻も早く魔王様を探すわよ!」
「そういえば、少し前にディアメル様の家を騎士団が消しかけたって聞いたよ。神憑りの切札|だってさ。それで一人、異世界人連れ帰ったらしいよ。そいつが魔王様なんじゃない?」
異世界人と言われ、隠れている三人組は彼方の顔を頭に浮かべる。張り詰めた空気に嘆いてしまう一歩前だ。
「はぁっっ!!何それ、初めて聞いたんだけど!ディアメル様が死んだら奴隷の私達も死ぬのよ!もうちょっと危機感ってものを持ちなさいよ、ウルファ!」
そう言うと副団長は目を細めウルファと呼んだ狼耳男とは違う方向をみる。そちらの方向は、魁斗達が隠れている本棚がある。
「ねぇ!盗み聞きしてる奴、出て来きないよ!」
心肺停止寸前にまで追いやられるほどの威圧が本棚の向こうから流れてくる。
冷や汗が物凄い。愛梨はヘタレて泣きかけている。立夏は眼を瞑りその時を待った。魁斗は背筋を凍らせる。
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