21 / 35
異世界漂流編
兎人と狐人1
しおりを挟む
「何驚いてんだ?元は魔人軍の仲間だった奴なんだろ?じゃ、魔王に近い俺が仲間になれって言えばなんとかなるんじゃなゲブュッ」
言い終わる前に制服の首元をミラに掴まれる。足を動かしているが、空中に浮いて進まない。
「ふざけないでください!!貴方様は私達の最後の希望なんですよ!それなのに死んでしまったら、わ、私達は……」
「そうだよ!彼方様は闘わずに遠くから見といてよ」
「それじゃあ俺が勇者として認められないんだよ。だから、俺が闘うか、魔王の正体隠し説得して引き返してもらしてうしかないだろ。んで、俺はヘタレ野郎だから闘いたくないの」
「このヘタレ野郎めっ!!」
「おいおい、未来の上司に向かってヘタレとはなんだ!!」
「君が言い出したんだよ」
ウルファにミラの鷲掴みの手を外すのを手伝ってもらいながら、彼方は二人をまず切言する。
しかし、険悪な顔つきのミラは今すぐにでも彼方をもと来た道に引き返そうとさせ、
「状況打開にはこれしかないんだよ!!」
ウルファとミラから距離を置き、走り出す。
「付いてくるなら来いよ」
そう言い残すと、彼方は路地裏を抜け出し表通りに躍り出る。
住民はもうとっくに非難したのか、人通りは少なく、騎士がちらほらと見える。建物を影に騎士が走り去る方向に足を向ける。
「ハァ、ハァ、ハァー!」
城を抜けてから走りっぱなしだったのが足枷となり、彼方のスピードを落としていく。城壁までは一向に着かない。
上腿に手を付き、呼吸を整える。
そこで、
「ねぇ、君さー彼方くんだよね?」
気配も感じることなく、肩を掴まれる。恐る恐る後ろを振り向くと、初めて見る顔ぶれであった。
「お嬢、今は民間人などに世話を焼いてる暇なんかないんですよ」
「モノクルはさっきの儀式みてなったのー?」
「本を読んでいました!」
逆切れ気味に声を張り上げる片眼鏡の狐人に、動きと喋り方の反比例が激しい兎人。
両方獣人で、勇者の儀に列席していることから獣の王冠であることが推測できる。
獣人は差別がひどく、固まって騎士団を作り上げたのが獣の王冠である。その他の騎士団に所属している獣人は神憑りの切札のロットただ一人だけだ。
「期待した私がバカだったよぉー!」
兎人は怒ってます、と言わんばかりに頬を膨らませる。間の抜ける喋り方とは裏腹に、身体は今にも走り出したそうにジャンプしつづける。見てて鬱陶しくなりそうだ。
何あれ話している間が好機と見た彼方は、そっとその場から離れる。
「申し訳ありませんでした。あっ、その勇者様が逃げようとしてますよ。放心するのはよくないですよ、お嬢。それではその勇者様も連れていきましょう」
遠くへ逃げる彼方を兎人が大きな踏み込み一つで、距離を縮める。
捕まえた彼方をモノクルに渡し、何事もなかったかのように話をまた始めだした。
「モノクルに説明してたからー、逃げ出したんだー!それにー、彼方くんは勇者じゃなくてー逃亡者だよー!ハイッ、モノクルは彼方くん抱えてー」
「待てって!俺は誰よりも速く魔獣に会いに行かなくちゃいけないんだ、離せよ!!」
モノクルと呼ばれる狐人に抱えられる彼方は、動きを止めるために必死にもがく。
「だからー、彼方くんを逃がさないように一緒に連れて行くからー。一番速くにー、連れて行けばいいんでしょー?」
「あそっか。なら速くしてくれ!」
あっさりと納得してしまう彼方。
「あいあいさー!」
「何故に、捕まえられている分際でお嬢に命令しているんですか?!」
「ではではー、いざ出発っっ!!」
魔獣の襲来と逃亡者に少しずれた対応をするマイペースな二人。いざ、始動するとその速さは尋常じゃない。顔の皮膚が置いてかれそうになる。
あまりの速さに彼方は、
「・・・まさに脱兎の勢いだな、兎だけに」
頭のネジが吹き飛んだ。
「私のことよんだー?」
「何仕様もないこといってるんですか?!」
その言葉に名前をまだ知らない兎人と狐人のモノクルが三者三様の反応をする。
「・・・三月兎のように気が狂っているだったか?」
「先程からお嬢をバカにしているでしょ!?」
「・・・兎に角急ごうよー」
「貴方のせいでお嬢が真似し始めたじゃないですか!!」
「・・・犬兎の争いだな!」
「貴方は言いたいだけでしょ!!」
「モノクルよ。・・・狐目でこちらを睨まないでくれ」
「こちらにまで被害がきたっっ!!」
彼方は大物なのか、出会って数分の二人と仲良く魔獣がいるであろう、雲域が怪しい王都の壁の方角に向かう。まるで遠足気分だ。今から立ち向かう相手の怖さを知らない彼方だからこそだろう。
言い終わる前に制服の首元をミラに掴まれる。足を動かしているが、空中に浮いて進まない。
「ふざけないでください!!貴方様は私達の最後の希望なんですよ!それなのに死んでしまったら、わ、私達は……」
「そうだよ!彼方様は闘わずに遠くから見といてよ」
「それじゃあ俺が勇者として認められないんだよ。だから、俺が闘うか、魔王の正体隠し説得して引き返してもらしてうしかないだろ。んで、俺はヘタレ野郎だから闘いたくないの」
「このヘタレ野郎めっ!!」
「おいおい、未来の上司に向かってヘタレとはなんだ!!」
「君が言い出したんだよ」
ウルファにミラの鷲掴みの手を外すのを手伝ってもらいながら、彼方は二人をまず切言する。
しかし、険悪な顔つきのミラは今すぐにでも彼方をもと来た道に引き返そうとさせ、
「状況打開にはこれしかないんだよ!!」
ウルファとミラから距離を置き、走り出す。
「付いてくるなら来いよ」
そう言い残すと、彼方は路地裏を抜け出し表通りに躍り出る。
住民はもうとっくに非難したのか、人通りは少なく、騎士がちらほらと見える。建物を影に騎士が走り去る方向に足を向ける。
「ハァ、ハァ、ハァー!」
城を抜けてから走りっぱなしだったのが足枷となり、彼方のスピードを落としていく。城壁までは一向に着かない。
上腿に手を付き、呼吸を整える。
そこで、
「ねぇ、君さー彼方くんだよね?」
気配も感じることなく、肩を掴まれる。恐る恐る後ろを振り向くと、初めて見る顔ぶれであった。
「お嬢、今は民間人などに世話を焼いてる暇なんかないんですよ」
「モノクルはさっきの儀式みてなったのー?」
「本を読んでいました!」
逆切れ気味に声を張り上げる片眼鏡の狐人に、動きと喋り方の反比例が激しい兎人。
両方獣人で、勇者の儀に列席していることから獣の王冠であることが推測できる。
獣人は差別がひどく、固まって騎士団を作り上げたのが獣の王冠である。その他の騎士団に所属している獣人は神憑りの切札のロットただ一人だけだ。
「期待した私がバカだったよぉー!」
兎人は怒ってます、と言わんばかりに頬を膨らませる。間の抜ける喋り方とは裏腹に、身体は今にも走り出したそうにジャンプしつづける。見てて鬱陶しくなりそうだ。
何あれ話している間が好機と見た彼方は、そっとその場から離れる。
「申し訳ありませんでした。あっ、その勇者様が逃げようとしてますよ。放心するのはよくないですよ、お嬢。それではその勇者様も連れていきましょう」
遠くへ逃げる彼方を兎人が大きな踏み込み一つで、距離を縮める。
捕まえた彼方をモノクルに渡し、何事もなかったかのように話をまた始めだした。
「モノクルに説明してたからー、逃げ出したんだー!それにー、彼方くんは勇者じゃなくてー逃亡者だよー!ハイッ、モノクルは彼方くん抱えてー」
「待てって!俺は誰よりも速く魔獣に会いに行かなくちゃいけないんだ、離せよ!!」
モノクルと呼ばれる狐人に抱えられる彼方は、動きを止めるために必死にもがく。
「だからー、彼方くんを逃がさないように一緒に連れて行くからー。一番速くにー、連れて行けばいいんでしょー?」
「あそっか。なら速くしてくれ!」
あっさりと納得してしまう彼方。
「あいあいさー!」
「何故に、捕まえられている分際でお嬢に命令しているんですか?!」
「ではではー、いざ出発っっ!!」
魔獣の襲来と逃亡者に少しずれた対応をするマイペースな二人。いざ、始動するとその速さは尋常じゃない。顔の皮膚が置いてかれそうになる。
あまりの速さに彼方は、
「・・・まさに脱兎の勢いだな、兎だけに」
頭のネジが吹き飛んだ。
「私のことよんだー?」
「何仕様もないこといってるんですか?!」
その言葉に名前をまだ知らない兎人と狐人のモノクルが三者三様の反応をする。
「・・・三月兎のように気が狂っているだったか?」
「先程からお嬢をバカにしているでしょ!?」
「・・・兎に角急ごうよー」
「貴方のせいでお嬢が真似し始めたじゃないですか!!」
「・・・犬兎の争いだな!」
「貴方は言いたいだけでしょ!!」
「モノクルよ。・・・狐目でこちらを睨まないでくれ」
「こちらにまで被害がきたっっ!!」
彼方は大物なのか、出会って数分の二人と仲良く魔獣がいるであろう、雲域が怪しい王都の壁の方角に向かう。まるで遠足気分だ。今から立ち向かう相手の怖さを知らない彼方だからこそだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる