裏切りの魔男

takupon

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異世界漂流編

兎人と狐人2

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「見つけました!!探しましたよ彼方さ「彼方くんこんなところにいたんだね!」」

屋根を走る二人と彼方に、分かれてばかりのウルファとミラが追いつく。ミラの言葉にウルファが被せたのは、様付けだと不審な関係だと疑われるかもしれないからだろう。

「おや、私達が楽しんでいたというのに邪魔するとはどこぞの騎士団ですか?」

走る脚を立ち止まり、モノクルが背後に野次を飛ばす。

「おいおい、モノクル楽しんでいたのか「黙りなさい!それに誰が名前で呼んでいいと許可したんですか!?」」

「彼方さ・・・くんは随分楽しそうですね。」

「何だミラ、嫉妬か?モテるのはやはりつらいな!」

「真面目な話です!!彼方さんはどうして、そのお二方とおいでなのですか」

「そうだよ。それ僕んとこの団長と副団長だよ」

それ、とウルファが指差す方向には彼方と、モノクルと兎がいる。
彼方を目を白黒させてから、

「もしかしてもしかすると、こっちの兎が団長?!」

「そうだよー!尊敬したー?」

誇らしげに胸を張る兎人ラパンの双丘が揺れる。
彼方は顔を青ざめ口早に喋り出す。

「ま、ずは、自己紹介でもしよっか?」

自分を落ち着かせるために、たわいもない話を提案する。

「私はねー団長のミミ、兎人ラパンだよー。そんでねー彼方くんを抱えてるのがモノクルー。狐人ヴォルペで、副団長だよー」

彼方はミミの申告に戦慄する。今まで笑いあってた兎と狐は、肉食強者だったのだ。

「ちょっ、自己紹介ぐらいさせてくださいよ!はぁー、それでウルファはなぜこの場にいるのですか?命令では住民の撤退を優先させてくださいと言ったはずですが?しかもなぜ他方の騎士団と一緒にいるのですか?と言うより貴方、ウィザードの副団長ではありませんか?」

副団長であるモノクルが団員である、ウルファにプレッシャーを掛ける。
普通の上司と部下の関係なら、ここで手の平を返すように謝るのだが、

「それは、知人の彼方くんが心配にでして。居ても立っても居られず飛び出してしまったわけですよ。そこで同じ知人であるミラと一緒に探索することにしたんだよ」

ウルファは会話を楽しむように、目を細める。こんな危険な場所で、二人の探り合いが始まる。止まられると困る彼方はモノクルの腕から飛び出し、屋根の上を走り出す。覚束無い足取りは、次第にスピードが速くなる。すぐに順応する彼方は、特異なのだろう。
自分の脚力に自信を持つ彼方であったが、

「そっちはー魔獣がいる方向だよー。自殺しに行くのー?」

「ついてくんの速っ!!」

彼方の全速力に後ろ走りで追いつくという余裕を見せるミミが首を傾げ問いかけてくる。ミミの後ろには、ウルファとモノクルを置いてきたミラがついてきている。

「俺がそんな度胸ある奴に見えんのか?」

「度胸が有り余ってるからー、魔獣に向かってることだけは分かるよー?」

「そうだけどっ!!自殺するどころか魔獣を倒しに行くんだよ!!てか、そろそろ脚が限界なんだけど、一瞬で魔獣がいるとこに辿り着く方法とかないの?!」

「ありますよ」

「あるのっ!!何でミラはそれ先に言わないの?!」

ミラが、当然ですとばかりに言葉を返すので、思わず足場が不安定な屋根上で立ち止まってしまう。彼方は手を屋根に付き、カッと眼を見開きながら問う。

「私とウルファを置いて行ったのはどこの誰でしたっけ?」

「俺だっ!!」

「・・・なんで偉そうなんですか。もういいです。私に掴まってください」

ミラは立ち止まると彼方にそう促す。
したらば、

「おい、何してんだ?」

彼方がミラの腰を掴むと、反対側にミミがやって来る。

「彼方くんがー、どうやって闘うのか知りたいんだよー」

のびのびとした声で一緒に行きたいと告げる。すると彼方は喧しそうな顔をし、

「はぁ、これからのことは他言無用だぞ」

「分かったー!」

「それじゃあ、行きますよ。しっかり掴まっていてください」

ミラが詠唱を行う。

「【鏡よ鏡、世界を映したまえ、世界を明かしたまえ、世界を導きたまえ、世界を照らしたまえ】」

一枚の大きな鏡が出たかと思うと――風景が変わる。

「【反射鏡ミラーリフレクション】」

降り立ったのは王都を囲む城壁だ。

「すごーい!!」

「なんだ今の!!瞬間移動か?!」

彼方とミミは目を輝かせながらミラに詰め寄る。褒められることに満更でもなさそうなミラは得意そうに答える。

「そんなものですね!けど飛べるのは直線だけで、障害物があるとそこで止まってしまうんですよ」

「ケッ、なんだ使えねぇじゃねぇーか」

ミラのスキルを聞き終わると、彼方は無垢な子どものような瞳を止め、地に唾を吐き口を曲げる。あっという間の変化であった。

「使えないからって愛想悪くするの止めてくださいよっ!さっきの純粋な瞳に戻ってください!」

「ほらそれよりも魔獣だよ。どこにいんの?」

「流された・・・」

ガックリと肩を落とすミラを尻目に、まだ誰も到着しておらず閑散としている城壁を見渡す。
そこへ、地響きが聞こえる。嫌、地響きの音ではない。魔獣が侵攻してきたのだ。
最初は鳥が飛んでくるようであった。影が段々と大きくなる。





『ォォォォォォーーーーーーーンン』





囀りをしながら目の前に爆風をまき散らし着陸する。
その姿は摩天楼。その背中には瑠璃色の翼。その身体には無数の鱗と煌めく宝石。










「――――まじか」










その姿は――――――ドラゴンだ。
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