裏切りの魔男

takupon

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異世界漂流編

勧誘作戦

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『分かりました。彼方様の条件は何でしょう?』

存意では心底喜ぶ彼方であるが、面には顕わさない。ラピスの娘という、一人もとい一龍の命が係っているからだ。
 
『条件はそうだな、俺の奴隷・・・それだと響きが良くないな。そうだ、俺の家族になれ!』

すると、彼方の横にいる二人は盛大に噴き出す。何事かとそちらを見ると、ミミもミラも彼方をいかがわしい者を見るような眼で見ている。

『彼方くん娘さんを助ける代わりにラピスさんと求婚しようとしているんですか?』

『ドラゴン妻と結婚とかー、最低なー行いだよー?』

彼方の心に悪罵の言の葉が突き刺さる。ミミのドラゴン妻は人間で人妻のことを言っているのだろう。
彼方も今し方気づいたのか、慌てた様子でラピスに弁解する。

『あ、あれだよ?!結婚したいとかじゃなくてただ家族のように親しくしてほしいなーみたいな感じだったんだよ?!あ、待ってけどほらラピスに魅力が無いわけじゃないんだよ!!ラピスにはいいとこ一杯あるからね!!そのつぶらな瞳とか、誰でも包んでくれそうな翼とか、心をえぐり取ってきそうな牙とか!!』 

思慮を巡らした結果がこれだ。不甲斐なさの極みである。
彼方が言ったラピスのチャームポイントは全て彼方が恐怖した部位なのだ。
真に受けたのか、鼻息が荒い。飛ばされてしまいそうだ。

『大丈夫ですよ、彼方様。私は人化を使えますので、これで彼方様とも結婚出来ますよ!』

ラピスにはもう結婚するのが決定しているのか、声に張りがある。
 
『【龍の涙、人の遺骨、天使の血肉、神よ今我に身体を分けたまえ】』

ラピスの身体を光が包む。

『【人化】』

面喰らっている彼方達の目の前には一人の女性が立っている。城壁にも勝る巨体が今は城壁の上にポツンと佇んでいる。
瑠璃色の髪と瞳に黒いポンチョをしている。少し赤らめた頬、窮屈そうに服からはみ出しそうな双丘、そして腰のあたりからヒョコッと飛び出しているドラゴンの尻尾。ラピスだ。
容姿はクッキリとした異世界人顔で、貫禄がある大人の女性といった感じである。
あまりの美しさに呆けてしまっていた彼方は、頭を大きく振り我に返る。

『それだとしてもラピスの旦那が可哀想だから却下な!』

周章狼狽している彼方を落ち着かせるようにラピスがそっとフォローを入れる。

『私に夫となる者はいませんので安心してください』

違う方向にフォローを入れたラピスは、気のせいか頬の鱗を赤らめているようにも見えなくない。

『え、じゃあどうやって娘生んだんだ?』

彼方はドラゴンであるラピスにデリカシーの無い質問を繰り出す。

『貴方平気で親にそういう事聞く人なの?!』

露骨な質問をする彼方に、ミラが頬っぺたを抓る。

『それよりー、早く本題に入ったほうがいいんじゃなーい?』

ミミの言う通りだ。いつまでもこの団欒が続けられるわけではないのだ。
こうしてはいられない。

『あぁ!!もう契約とかいいから娘の特徴だけ言え!!どうせ城の中にでも幽閉されているんだろ?』

そう宣すると彼方の腕に巻き付いていた鎖が浮き彫りの如く現実に現れる。契約は除外するらしい。

『多分それは無いと思います。娘はまだ生まれておらず宝石ジュエルのままなのです。なので、黒みがかった紺色の宝石ジュエルを見つけ出してください。私はここで待っておきます』

『はぁ、なによそれ?宝石ジュエル探すとか意味わかんないわよ!』

ラピスが人化をしたこともあってか、ミラが激情する。
しかし、

『あ、やば』

彼方のその一言を最後に、魔法陣が消失する。

「どうしたの彼方っ!!」

息を切らせ、そのまま地面に手をつく彼方に、ミラが駆け寄る。

「大丈夫、ただの貧血だ」

「それは貧血じゃなくてー魔力の使い過ぎなんだよー」

ミミが跳ねながら彼方の肩を持ち立ち上がらせる。

「大丈夫ですか、彼方様?!」


「あぁ心配ありがとうラピス」

ラピスも脚まである長さのポンチョを揺らし、慌てて彼方に近くに寄る。





「「「えっっ??!!」」」





そこで彼方達は異変に気付く。

「なんで人語喋れんの?」

一同を代表し、彼方が幽霊でも見たかのように漂白しながら聞く。

「それはですね。初代魔王様に面白半分で教えられたところ、すっかり覚えてしまったんですよ」

何てこともないようにラピスが答える。

「俺の必殺念話テレパシーがあぁぁ!!!」

俺のバカァァー、と叫び散らしながら頭をポカポカと殴る。擬音が本当の音とあっているかは不明だ。

「貧血にまでなってやったのにー、無駄だったねー」

「傷口に塩塗るの止めてくれないか!!」

膝をついた体勢から歩こうとするが身体が思うように動かない。思っていたよりも体力は消耗されいるようだ。
それでも脚を踏みしめる。

「来ましたね」

ラピスが呟くと身体が光に包まれ、地に着いたときの地鳴りがすごい巨体に戻る。
ふと、途方に続く城壁の向こうに多くの人影が見える。騎士団だ。

「やばっ!騎士の野郎どもだ。早く城に行くぞ。鏡の奴もっかいやるから掴まって!」

ミラが急いで魔法陣を展開する。
彼方はラピスの安否が気になり摩天楼の巨体を見るめるが、やがて、


『グルルルルルルルルッッッ』

低く唸る。きっと、行ってくださいと言っているのだろう。念話を使う前と使った後では、怖さが格段と違う。彼方の眼からでは、今や愛らしくも見えてくる。
彼方は後ろを振り向かず、ミミと一緒にミラに掴まる。

「【反射鏡ミラーリフレクション】」

丁度詠唱を終え、あばら家の屋根に到着した。

「おい、まだ城に着いてないぞ」

そうは言うものも、彼方にだってここに降り立った理由は言わずと知れたことなのだ。
目の前には、未だ討論中のウルファとモノクルがいる。
いきなり現れる三人にモノクルは動転するが、ウルファは慌てずに声を掛ける。

「おかえり。どこ行ってたの?」

切羽詰まっている彼方達は、何も言わず二人を掴み魔法で飛び立つ。
着いたのは城門だ。

「ミミ、早く宝物庫に!」

「分かったー!」

ミミに先導されながら城の宝物庫を目指す。
後方ではミラがウルファとモノクルにこれまでの経緯いきさつを説明している。今更だが、魔人二人が彼方に協力するのは分かるが、騎士団であるミミとモノクルが共助してくれるのかは不明だ。本当に今更なのだが。
彼方は今はそれよりも大事なことがあると割り切り、ミミの支えられながら階段を駆け上がる。騎士も従業員も出払っているのか、城内は忽然としていた。
皆が皆緊張が高まる中、彼方は心の中で歓喜していた。今自分は冒険している、と。
彼方は一人呟く。





冒険ロマンスの時間だ」
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