裏切りの魔男

takupon

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指名手配編

死人への伝言

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「ウザウサギ!!てめぇ何やってくれたんの?!俺の宿敵との最終決戦がお前の蹴り一つでパァーになっちまったじゃねぇか!!しかも何?お前俺と赤い糸でも繋がってんの?
こんなところでまで会いたくなかったし、お前の抜けた喋り方も聞きたくなかったよ!!」

「私はー、君の保護を頼むってー緊急クエストでー、通りかかった騎士団に掛かったからー、助けに来てあげたんだよー?それなのにー、邪険扱いされるとー泣いちゃうよー!しかもー、私とー君はー初対面だよー?何処かで会ったことあるのー?」

「知らねぇよ!間違いだ!人違いだ!ウサギ違いだ!後その伸ばし棒の多い喋り方を止めろってんだよ!」

今は『彼方』の姿をしていない桜は慌てて訂正する。
ここはまだ森の中だ。桜とミミの周りには、桜が懸命に倒したゴブリンとミミの人蹴りで吹き飛んだゴブリンの残骸がある。
口喧嘩しながらも桜はミミから情報を得る。

「んで、誰が俺の保護なんか頼んだんだ?俺の保護者はとっくに他界したぞ」

「生々しいのは止めてよー。君の親なんか知らないしー、クエストを発注したのはー、君のお姉さんだよー」

お姉さんと言われ飛鳥の顔を浮かべるが、咄嗟にその考えを遮断する。
姉が自分のことを知っているはずないのだ。
そうすると、思い付くのは一人だけだ。

「……キルラか」

「確かそんなー名前だったよー。二つ名の方が有名だよねー。んーあれれー?呼び捨てだけどー二人はー、姉妹じゃーなかったのー?」

ここで自分の証明をした方が良いと考えた桜は答える。

「あれだ!今は喧嘩中なんだ。だからつい呼び捨てになっちまったんだよ」

「そうなのー?それじゃー早く仲直りする為にー、ギルドに向かおっかー。名前はーなんて言うのー?」

桜の言葉を信じきっているミミ。疑う心を知らないのだろうか。

「桜だ」

「不思議な名前だーねー」

「……お前の安直な名前よりはマシだっつぅーの」

「私ー名前言ってたっけー?」

桜は気をつけていながらも墓穴を掘ってしまう。
しかし落ち着いた様で、

「んー、お前団長だから名前ぐらい知ってんだよ」

「私ー有名人だねー」

初対面の設定なのにどんどん話をする桜とミミ。脚を動かすしながら口も動かす。
そこで桜は自分の立場を危うくする賭けにでようとする。

「あのさ、ミミはさ、騎士の団長なんだろ?それじゃ勇者ってどんな奴らなんだ?!」

それは魁斗達の安否だ。

「一般人には普通ー秘密なんだよー?」

そう言いながらも簡単に口を滑らすミミ。団長としての自覚が無さすぎる。

「勇者様達との面識はー、余り無いんだけどー、情報なら入ってきてるよー。んとねー前までー、勇者様の友達が死んじゃってー落ち込んでたんだけどー、最近は元気になってーちゃんと訓練に励んでいるよー」

色々と暴露しでかしているミミを今王様が見ていたら発狂しているだろう。
ペラペラ喋るミミを黙って聞く桜。今は一つでも多くの情報が欲しいのだ。

「良かった……」

姉や親友が『彼方』の死を意に介さないことには少し心が傷つくものの、元気でいてくれることは本心から嬉しい。

「私もーその勇者様の友達とは会ったことがあるんだけどねー」

自分のことを話されると人間こそばゆい感じになることが多いが、桜は気にしない。

「どんな奴だったんだ?」

「ヘタレ!」

ミミの一言が桜の胸を抉る。
落胆する桜に、

「それでねー、人を馬鹿にする癖があったりー、狡猾でニヤけるところがあったりするー、ちょっと変な奴なんだよー!」

連打攻撃するミミ。
桜の心はもうボロボロだ。





「でもねー、嫌な奴じゃなかったんだよー!」






その言葉に桜は顔をガバッと上げる。

「闇があるような眼をしててー、肝心なところでー弱音を吐いてー、それでいて態度がデカいーバカな奴だったけどー、嫌な奴じゃなかったんだよー!」

ミミは手をブンブン振りましながら嬉しそうに喋る。

「周りの大切な人の手は借りずに置いてく癖に、ずっと心配ばっかしてる臆病でアホな奴だったんだよ!」

間のある喋り方から一変して真剣に話し出す。

「だからちょっと死んじゃったのは残念かな……もうちょっと仲良くなりたかったよ。でも叶わないからね」

空を向き悲しそうにするミミ。死んだ『彼方』のことを想っているのか、それとも天国にいるであろう『彼方』を見ているのだろうか。
申し訳ないところだが『彼方』は直ぐ横にいた。
そもそも、『彼方』が死んだのなら天国ではなく地獄に堕ちるのではないだろうか。

「そっか……ありがとな」

「ん、なんか言った?」

「なんでもない。きっとその人には伝わってるよ、ミミの気持ちがさ!俺が保証してやるよ!」

先を駆ける桜。
ミミが見た桜の後ろ姿は、泣いているように見えた。
ミミは桜を追いかけようとし、






「疲れたからおんぶしてくれ」






走り出したと思いきや、踵を返し戻ってくる桜。感動のシーンが崩れる。

「あれっ!?なんかさっきまで私の話聞いて泣いてくれてなかった!?雰囲気ぶち壊しだよっ!」

「それ欠伸だ」

「欠伸っ!?」

「てか、喋り方戻せよ。なんか驚きすぎて喋んの早くなってんぞ。どっこいせ、っと」

ミミの確認を取らず背中に伸し掛かる。

「そうだねー、落ち着くよー。って軽っ!!桜ちゃーん軽すぎるよー?胸もツルーンてしてるしー、栄養はどこ行っちゃったのー?!」

桜の身体の軽さに、驚愕に見舞われるミミ。
重さを感じる為か、連続ジャンプをする。

「胸ツルーンって!女に言ったらダメなやつじゃん、タブーだよ。てか、俺は男だから!」

「今、タブーって言った?……って男ーーっ!!!」

桜の言葉に又喋り方が変わり、身体を仰け反らせる。危うく転げ落ちるとこであった。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





「良かったっっ!!!」





桜を待っていたのはゴブリンとの死闘の後により、どきつい痛みが及ぶことになる抱擁だった。

「げふっ!!!」

キルラの体当たりをお腹でキャッチする。

「ありがとうございます、騎士様!桜を助けていただいて!」

桜を抱きしめ涙ぐみながら何度もお礼を言うキルラ。余程心配していたのだろう。
ここにはクエストを受けた騎士団の代表のミミとモノクル、受付嬢のミファ、そしてキルラと桜がいる。

「おいおい、こいつらに礼なんて言う必要ないって!それよかこのウザウサギ、俺の邪魔したんだぜ!」

「だからー、それは保護する為だったんだよー」

「助けてあげたのにこの無礼!美少女だからってお嬢に無礼を働くのはこのモノクルが許しませんよ。しかも貴方初対面でこいつらって!」

桜を女と勘違いするモノクル。面倒なのでそのままほっておくことにする。

「……お嬢と受付嬢って何か被るよね」  

一人ボヤくミファ。

「まぁ!なんてことを言うのよ桜!確かに騎士団はオンボロの集まりってよく言われてたけど、今だけは礼儀正しくしとかなきゃ!」

「それ目の前で言ったら意味ないと僕思うよ!」

ギルドに個性豊かなキャラが集合し、思い思いに喋り出す。
因みに、桜は横イスに寝転がりキルラに膝枕をしてもらっている。筋肉痛で身体が麻痺していた。勿論、ここに寝転ぶ前にギルドの治癒師ヒーラーに回復魔法を使って貰った。なんと桜は両方とも骨折した脚で平然と歩いていたらしい。そのツケが回ってきたのか、今は動くこともままならない。

「それにしても、なんでお前らがクエストを受けたんだ?」

懐疑的な顔をする桜。喋り終えるとキルラの太腿に顔を埋まらせる。キルラは嫌そうな顔をするどころか、満更でも無さそうだ。

「それがねー、騎士団の第一任務を左遷させられてー、今は賞金首を探してるのー」

「お嬢!そう言うのは他言無用にして下さい!何処に犯罪者が隠れているかも分かりませんのですよ!」

「だからギルドに来てたんだね。僕はてっきり彼方を探しに来たのかグヘェ!!」

桜の音速を超えるアッパーがミファの腹に決まる。

「御免、ミファを見てるとゴブリンのことを思い出しちまった」

「僕の容姿はそんなに醜くないからね?!」

桜は見事誤魔化したかとミミやモノクルをチラ見するが、結果は違っていた。
ミミがバッと立ち上がりミファに詰め寄る。

「彼方くんを知っているのですかー?!彼は今何処にいるのですかー?」

ミファと桜はあちゃ〜、と手を額に当てる。

「そっ、それは……」

ミファの眼が桜とミミを何度も行き来する。
助け船を出そうとするが、

「そんなことより騎士様は仕事の方は大丈夫なのですか?」

キルラが言葉を遮る。
キルラが指差した方向には、ギルドの前で待機している獣人の騎士達の姿が見える。
モノクルは「確かに…」と手をポンと叩き、

「お嬢、この話はまた今度にしましょう。非常に残念ですが任務が優先です。さぁ、行きましょう。あっこれをどうぞ」

モノクルが差し出したのは一枚の手配書だった。
桜は手配書の似顔絵を見ると、





「――――ッッ!!」





身震いする。
似顔絵には、桜が魔獣事件の日、最後に眼にした仮面の顔であった。
恐る恐る桜は聞く。

「こいつ何やらかしたんだ?」

「連続殺人犯ですね。しかも殺すのが大物ばかりなんですよ。まぁ、その話はそこに居る受付嬢にでも聞いて下さい。ほら行きますよ」

顎でミファを指す。
モノクルはミミのキュートなうさ耳をガッチリ掴むと引きずりながらギルドを出て行く。
ミミは何か考え事をしているのか、先程から黙ってしまい、引きずられていることにも気づいていない。
ミミとモノクルを見送ると桜は寝転がりながらミファに話の続きを聞く。

「それで、続き、は?」

声が震えているのは未だに仮面との遭遇が記憶に新しいからだ。
連続殺人犯との出会いなど早々無いはずである。

「僕が知ってることはそう多くないよ。その仮面が悪人や貴族、それに金持ちなんかを殺してるってことぐらいかな?性別も年齢も種族も何にも分かってないんだよ。でも殺し屋だから、きっと闇ギルドの人かもね!」

「闇ギルドだぁー?」

聞いたことない単語に桜は男勝りな声を上げる。と言うか、声だけなら男だ。

「王都伝説の一つだね!僕そういうの大好きなんだよ!」

「なんだそりゃ、都市伝説のパクリみたいなもんか?」

「他にも古都伝説と帝都伝説なんかもあるよ!」

「うん、パクリ決定だな。それより話を闇ギルドに戻そうぜ」

「あっ、そうだったね。闇ギルドっていうのは主に人殺しを仕事とする犯罪者集団のことだよ。まぁ、噂なんだけどね」

「ふーん。そんでその仮面野郎はなんか失策ヘマして指名手配された訳か?」

「ううん。それが二年前ぐらいから捜索はされてたんだよ。でも全然見つからなくてね。王都を離れたのかなって騎士団は考えたんだけど、つい最近又尻尾を出したんだよ。確か魔獣事件の日だったかね」

「へぇ〜」

そこからは二人共黙ってしまう。桜はきな臭いな、とあの日のことを思い出そうとする。天井を見上げようとしたところでキルラの視線とぶつかってしまう。
フワフワした印象のあるキルラは、今はどこか上の空でもっとフワフワした状態になっている。
眼を合わせても反応しないキルラに、

「キルラは仮面と会ったことあるか?」

「ひゃ、ひゃっい!!」

頬っぺたを突く。
現実に戻ってきたキルラは桜の質問に肩を揺らす。

「なんで、そんなこと聞くの?」

「ん、魔獣事件の時にさ、見たっていう人が居たらしいからキルラも見たかなって……」

桜の声が段々と低くなる。キルラが桜をギュッと抱きしめたからだ。

「どうしたんだ?」

「えへへ、なんでもないよ。私は仮面さんとは会ったことないかな。……桜は仮面さんのことどう思う?」

抱きしめた先でキルラの声が耳元で聞こえてくる。
桜は呻き声を上げながら悩んでいたと思うと、





「殺しはダメかな」





きっぱりと言う。






「幾ら嫌われ者だからって、幾ら悪人だからって、殺して良いとはならないんだなこれが。殺しをしたら一生消えない傷が残るんだよ、自分自身にさ。魂は一人一つだ。……大事にしないとなぁー」






どこかを見据える桜。それは経験したことがあるような発言であった。



「やっぱり……そうだよね」



キルラのか細い声はギルドの騒がしさに掻き消えた。
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