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告白
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瑞貴はなんだか不機嫌で、目も合わせず無言でお風呂場まで連れて行ってくれ、私はお風呂の椅子に座らされた。
そして私の足元に湯桶を置き、シャワーを出して温度の調整を始める。
「瑞貴、あとは自分でやれるから」
「いいから」
瑞貴の声が少し曇っていて怖かった。
瑞貴はシャワーのお湯を湯桶に溜めて、その中に私の足を入れる。
「ねえ、足汚くて恥ずかしいから、もう自分でやらせて」
「綾ちゃんに汚いところなんてないですよ」
瑞貴はボディーソープを手に取り、私の足を持つと、丁寧に洗い始める。
正直一日働いた足なんて触られたくないし、匂いも気になるので、この状況に生きた心地がしなかった……。
私は玄関で痴態をさらし、今は匂いが心配な汚い足を洗われている。
恥ずかしさでいっぱいだった。
一日働いて、最後は走り切った足なんて……絶対臭いよね……。
もう、これはいい機会なのかもしれない。
ここは潔く、きっぱりと、女としてみられるのを諦めよう。友達同士なら、臭かろうが笑って終わらせられる。
この日をもって、瑞貴を異性として意識しない。
往生際の悪い私に、もういい加減諦めなさいと、神様からの啓示なのだろう。
健全で割り切ったルームメイトとなる。
ブロッコリーだって一人で茹でて食べる。
……恋の終わりは……どんな形でも胸を締め付ける。
しかも年内二度目。
心は悲しみで一杯になり、息苦しい。涙が出そうなのを、必死に我慢した。
瑞貴は黙々と私の足を洗っており、十分綺麗になっているはずなのに、その手の動きは止まらなかった。
いつの間にか足の裏のマッサージが始まり、くすぐったいような、気持ちいいような感覚に襲われ、思わずクスっと笑ってしまった。
私の微笑に、瑞貴もやっと目を合わせて笑ってくれた。
少しだけ心が晴れ、気持ちが軽くなった。
瑞貴は私を見つめながらマッサージを続ける。
……なんだか……その視線は熱っぽいような……。
ちょっと待って、そんな目で見られたら勘違いしてしまう。
瑞貴の大きな手の平と長い指先が、足からふくらはぎまで移動してきた。瑞貴の指先が触れた場所が熱を持ち、敏感になっていく。
そんな風に触らないで……必死に気持ち我慢してるのに……。
蒸気でバスルームは温まり、お互いに頬が赤く染まっていた。身体まで火照り出しているのは、やはり私だけだろうか……。
煩悩から意識を逸らそうと、瑞貴の頭を見れば、湿気を帯び始めた彼の髪がうねり出し、ボリュームが増すので、その姿に私は笑ってしまった。眼鏡だって曇り出していて、かなり面白い姿になってる。
視界を確保させてあげようと、瑞貴の眼鏡を取り、両手で彼の髪をかき上げてあげた。
はっきりと表れた瑞貴の顔は、なぜ今まで見落としていたのだろうと思えるほど、端正な顔立ちだった。
息を止めて、まじまじと彼の顔を魅入っていた私の頬と腰に、瑞貴の濡れた手が触れる。
だから……そんな目で見つめられたら……期待してしまう……。
さっき誓ったはずなのに、胸がどうしても熱くなり、鼓動を速めてしまう。本当に私は往生際が悪い。
そうやって悶えていれば、瑞貴が私の意思を確かめるかのように、ゆっくりと、触れるか触れないかの距離まで唇を寄せて来た。
私は彼のぽってりとした唇を見つめながら、その唇までの残りの距離を、自ら縮めてしまう。
瑞貴は、私の腰に当てていた手に力を入れて、私を抱き寄せキスをしてきた。
あまりに強く引っ張るものだから、椅子から落ちて瑞貴の膝に跨ってしまった。
前回はダメだと言っていたのに、今は私を膝に乗せたまま、夢中になって唇を重ねてくる。
瑞貴が濡れた手で、私の頬や首筋や、肩や背中や腰を、艶っぽく撫でたり掴んだりするので、すでに着ていたシャツは濡れて、身体に張り付いていた。
「本当は……もう少し絞ってから告白するつもりでした……」
「え……? 絞る?」
「だって、またこうなった時、次は逃したくなかったから……」
そう言って瑞貴は自分のシャツのボタンを外し始める。
そこに現れた胸板と腹筋は鍛えられたもので、もうトドとは絶対に言われない身体だった。
「綾ちゃん、僕の彼女になってくれませんか?」
思いもよらなかった告白に、息が止まりそうになった。すぐにでも頷きたかったが、僅かに残っていた理性が口走る。
「それは、私が好きって言いかけたら、瑞貴がダメって言ったじゃない……」
「あれは、綾ちゃんから告白しないでって意味だったんです。告白は絶対に僕からしたかった」
瑞貴は私の理性をことごとく揺さぶって来る。
「……でも……社長の息子の相手が、こんな平社員っていうのは……周りが何て言うか」
「コンプラ窓口に、社長の息子が社員に手を出した、とかいくかな?」
「いや、コンプラって。しかも、話が逆だって……」
私はつい笑ってしまった。
「コンプラ窓口は嫌だなあ……。ねえ、僕が社員に手を出したって、コンプラで問題にされないためには、綾ちゃんは僕とただ付き合うんじゃなくて、結婚を前提に付き合ってくれたらいいんじゃないかな?」
「ええ!?」
「綾ちゃんは……僕じゃ、嫌なの?」
「い……嫌なわけ、ないでしょ……」
瑞貴は顔を綻ばせ、両手で私の頬を包んで、優しくキスをしてから、真剣な表情で私をじっと見つめている。
「嵯峨にも、誰にも、綾ちゃんを渡したくないんだ……」
「瑞貴……」
「ねえ、彼女になるって言って……」
「でも私は……瑞貴の立場が心配なわけでっ——」
瑞貴は私の口を塞ぐようにキスをして、小さく甘い声で囁いた。
「問題ないし、後悔させない」
囁き声でも、瑞貴の言葉は力強かった。
こんなに愛されてると感じたのは、生まれて初めてかもしれない……。
「瑞貴の彼女に……なりたい」
その後私は、瑞貴がキスもあっちもとんでもなく慣れた様子で上手い事を知り、嬉しさ半分、謎の過去への嫉妬半分で朝を迎える事となった。
そして私の足元に湯桶を置き、シャワーを出して温度の調整を始める。
「瑞貴、あとは自分でやれるから」
「いいから」
瑞貴の声が少し曇っていて怖かった。
瑞貴はシャワーのお湯を湯桶に溜めて、その中に私の足を入れる。
「ねえ、足汚くて恥ずかしいから、もう自分でやらせて」
「綾ちゃんに汚いところなんてないですよ」
瑞貴はボディーソープを手に取り、私の足を持つと、丁寧に洗い始める。
正直一日働いた足なんて触られたくないし、匂いも気になるので、この状況に生きた心地がしなかった……。
私は玄関で痴態をさらし、今は匂いが心配な汚い足を洗われている。
恥ずかしさでいっぱいだった。
一日働いて、最後は走り切った足なんて……絶対臭いよね……。
もう、これはいい機会なのかもしれない。
ここは潔く、きっぱりと、女としてみられるのを諦めよう。友達同士なら、臭かろうが笑って終わらせられる。
この日をもって、瑞貴を異性として意識しない。
往生際の悪い私に、もういい加減諦めなさいと、神様からの啓示なのだろう。
健全で割り切ったルームメイトとなる。
ブロッコリーだって一人で茹でて食べる。
……恋の終わりは……どんな形でも胸を締め付ける。
しかも年内二度目。
心は悲しみで一杯になり、息苦しい。涙が出そうなのを、必死に我慢した。
瑞貴は黙々と私の足を洗っており、十分綺麗になっているはずなのに、その手の動きは止まらなかった。
いつの間にか足の裏のマッサージが始まり、くすぐったいような、気持ちいいような感覚に襲われ、思わずクスっと笑ってしまった。
私の微笑に、瑞貴もやっと目を合わせて笑ってくれた。
少しだけ心が晴れ、気持ちが軽くなった。
瑞貴は私を見つめながらマッサージを続ける。
……なんだか……その視線は熱っぽいような……。
ちょっと待って、そんな目で見られたら勘違いしてしまう。
瑞貴の大きな手の平と長い指先が、足からふくらはぎまで移動してきた。瑞貴の指先が触れた場所が熱を持ち、敏感になっていく。
そんな風に触らないで……必死に気持ち我慢してるのに……。
蒸気でバスルームは温まり、お互いに頬が赤く染まっていた。身体まで火照り出しているのは、やはり私だけだろうか……。
煩悩から意識を逸らそうと、瑞貴の頭を見れば、湿気を帯び始めた彼の髪がうねり出し、ボリュームが増すので、その姿に私は笑ってしまった。眼鏡だって曇り出していて、かなり面白い姿になってる。
視界を確保させてあげようと、瑞貴の眼鏡を取り、両手で彼の髪をかき上げてあげた。
はっきりと表れた瑞貴の顔は、なぜ今まで見落としていたのだろうと思えるほど、端正な顔立ちだった。
息を止めて、まじまじと彼の顔を魅入っていた私の頬と腰に、瑞貴の濡れた手が触れる。
だから……そんな目で見つめられたら……期待してしまう……。
さっき誓ったはずなのに、胸がどうしても熱くなり、鼓動を速めてしまう。本当に私は往生際が悪い。
そうやって悶えていれば、瑞貴が私の意思を確かめるかのように、ゆっくりと、触れるか触れないかの距離まで唇を寄せて来た。
私は彼のぽってりとした唇を見つめながら、その唇までの残りの距離を、自ら縮めてしまう。
瑞貴は、私の腰に当てていた手に力を入れて、私を抱き寄せキスをしてきた。
あまりに強く引っ張るものだから、椅子から落ちて瑞貴の膝に跨ってしまった。
前回はダメだと言っていたのに、今は私を膝に乗せたまま、夢中になって唇を重ねてくる。
瑞貴が濡れた手で、私の頬や首筋や、肩や背中や腰を、艶っぽく撫でたり掴んだりするので、すでに着ていたシャツは濡れて、身体に張り付いていた。
「本当は……もう少し絞ってから告白するつもりでした……」
「え……? 絞る?」
「だって、またこうなった時、次は逃したくなかったから……」
そう言って瑞貴は自分のシャツのボタンを外し始める。
そこに現れた胸板と腹筋は鍛えられたもので、もうトドとは絶対に言われない身体だった。
「綾ちゃん、僕の彼女になってくれませんか?」
思いもよらなかった告白に、息が止まりそうになった。すぐにでも頷きたかったが、僅かに残っていた理性が口走る。
「それは、私が好きって言いかけたら、瑞貴がダメって言ったじゃない……」
「あれは、綾ちゃんから告白しないでって意味だったんです。告白は絶対に僕からしたかった」
瑞貴は私の理性をことごとく揺さぶって来る。
「……でも……社長の息子の相手が、こんな平社員っていうのは……周りが何て言うか」
「コンプラ窓口に、社長の息子が社員に手を出した、とかいくかな?」
「いや、コンプラって。しかも、話が逆だって……」
私はつい笑ってしまった。
「コンプラ窓口は嫌だなあ……。ねえ、僕が社員に手を出したって、コンプラで問題にされないためには、綾ちゃんは僕とただ付き合うんじゃなくて、結婚を前提に付き合ってくれたらいいんじゃないかな?」
「ええ!?」
「綾ちゃんは……僕じゃ、嫌なの?」
「い……嫌なわけ、ないでしょ……」
瑞貴は顔を綻ばせ、両手で私の頬を包んで、優しくキスをしてから、真剣な表情で私をじっと見つめている。
「嵯峨にも、誰にも、綾ちゃんを渡したくないんだ……」
「瑞貴……」
「ねえ、彼女になるって言って……」
「でも私は……瑞貴の立場が心配なわけでっ——」
瑞貴は私の口を塞ぐようにキスをして、小さく甘い声で囁いた。
「問題ないし、後悔させない」
囁き声でも、瑞貴の言葉は力強かった。
こんなに愛されてると感じたのは、生まれて初めてかもしれない……。
「瑞貴の彼女に……なりたい」
その後私は、瑞貴がキスもあっちもとんでもなく慣れた様子で上手い事を知り、嬉しさ半分、謎の過去への嫉妬半分で朝を迎える事となった。
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