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2. バイト先『塩結び』
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駅前商店街の中にあるおにぎり屋『塩結び』でバイトしている。
ロッカールームにつくと、肩下まである黒髪を一本に結び、赤色のエプロンがハンガーラックに掛かってるので、自分に合うMサイズを取って身につけた。
「白高下さん、ごめん、俺にもLLサイズのエプロン取ってこっちに投げてくれる?」
店内に続く入口にかかる暖簾を片手で避けながら、体育大に通う堂島昂牙さんがこちらに顔を覗かせていた。
「あれ? 堂島さん、今日シフト入ってましたか?」
私の問いに答えたのは、堂島さんではなく、彼の背後の方から聞こえる、姿の見えないパートの秋田さんの声。確か今日は秋田さんが昼からラストまでシフトに入っていた。
「透子ちゃん、ごめーん! 本当はこの時間帯も私なんだけど、今子供から店に電話が掛かってきて、怪我したとかですぐに帰らないといけなくなったのよぉ。そしたらちょうど堂島君がおにぎり買いに来てて、このままシフト変わってくれるってなって」
「秋田さん、お子さん怪我してるならすぐ帰ってください。店長には俺からシフト変わった事情説明しておきますんで」
「堂島君本当ありがと~。お言葉に甘えて任せちゃうね」
大柄な堂島さんの後ろから、ひょっこりと小柄な秋田さんが現れれば、小走りでロッカーまで戻ってきて、カバンを取り出し、エプロンを洗濯籠に投げ入れ、わずか数十秒の間に消えて行った。
「白高下さん、ほら、お客さん来ちゃうからエプロン投げて」
「あ、はい」
私がLLサイズのエプロンを堂島さんに向かって投げれば、堂島さんはパシッとエプロンを掴んで二ッと白い歯を私に見せた。その姿は短い黒髪の良く似合う、体育会系好青年といったところ。
「ナイスシュー」
堂島さんは爽やかで裏表のない良い人だけど、二人でシフトに入る時は決まってこんな会話になる。
「白高下さんって今も彼氏欲しいとか思わないの?」
「ないです」
堂島さんは恋愛トークが大好きなのだ。
彼の武勇伝は散々聞かされたし、歴代彼女の愚痴もしかり。
「えー、高校生の時なんて、部活と恋が一番楽しかったけどなあ。って、俺は今もだけど。
片思いもないの?」
「ないです」
「うっそだあ~。お嫁さんになりたいとかないの?」
「ないですね。コスパ悪いことはしませんから」
「コスパ悪いか?」
「悪いですよ。恋も結婚も。片思いなんてして、相手のことばかり考えるとか、それでフラれて傷ついて何も手につかないとか、時間と労力の無駄でしかないですし、もし両想いになってしまえば、その後その男に時間を割くため自分の時間減らすとか、プレゼントやデート代とか、結婚なんて帰ってこない父を待つ母を見ていて、むしろ一人の方が良かったんじゃないかとも思えますし、とにかく、時間と労力だけじゃなく、もはや浪費です」
「浪費って……。でもさ、人生を豊かにするために必要な浪費もあるじゃん?」
「浪費に必要なものは無いです。だから、浪費です」
「じゃあ、白高下さんって夢はないの?」
「あります」
「お! なになに?」
「就職率の高い大学を出て、福利厚生の手厚い優良企業に就職することです」
「お、立派だねぇ。
それで、それはなんのために?」
「なんのためって、生活のために決まってるじゃないですか」
「うーん、そうなんだけど、それって大学で何を学びたいとか、やりたい仕事があるってわけじゃないんだよね?
福利厚生の手厚い企業希望ってことは、プライベートを大切にしたいってことなんでしょ? じゃあ、プライベートで何を充実させたいためなの?」
「充実させたい?」
「白高下さんの様子だと、家庭や子供を持ちたいから、とかじゃなさそうじゃん? 旅行が趣味にも思えないし、何のために働くのかな? って」
「堂島さん」
「ん??」
「老後のためです」
「はは、そうか」
ロッカールームにつくと、肩下まである黒髪を一本に結び、赤色のエプロンがハンガーラックに掛かってるので、自分に合うMサイズを取って身につけた。
「白高下さん、ごめん、俺にもLLサイズのエプロン取ってこっちに投げてくれる?」
店内に続く入口にかかる暖簾を片手で避けながら、体育大に通う堂島昂牙さんがこちらに顔を覗かせていた。
「あれ? 堂島さん、今日シフト入ってましたか?」
私の問いに答えたのは、堂島さんではなく、彼の背後の方から聞こえる、姿の見えないパートの秋田さんの声。確か今日は秋田さんが昼からラストまでシフトに入っていた。
「透子ちゃん、ごめーん! 本当はこの時間帯も私なんだけど、今子供から店に電話が掛かってきて、怪我したとかですぐに帰らないといけなくなったのよぉ。そしたらちょうど堂島君がおにぎり買いに来てて、このままシフト変わってくれるってなって」
「秋田さん、お子さん怪我してるならすぐ帰ってください。店長には俺からシフト変わった事情説明しておきますんで」
「堂島君本当ありがと~。お言葉に甘えて任せちゃうね」
大柄な堂島さんの後ろから、ひょっこりと小柄な秋田さんが現れれば、小走りでロッカーまで戻ってきて、カバンを取り出し、エプロンを洗濯籠に投げ入れ、わずか数十秒の間に消えて行った。
「白高下さん、ほら、お客さん来ちゃうからエプロン投げて」
「あ、はい」
私がLLサイズのエプロンを堂島さんに向かって投げれば、堂島さんはパシッとエプロンを掴んで二ッと白い歯を私に見せた。その姿は短い黒髪の良く似合う、体育会系好青年といったところ。
「ナイスシュー」
堂島さんは爽やかで裏表のない良い人だけど、二人でシフトに入る時は決まってこんな会話になる。
「白高下さんって今も彼氏欲しいとか思わないの?」
「ないです」
堂島さんは恋愛トークが大好きなのだ。
彼の武勇伝は散々聞かされたし、歴代彼女の愚痴もしかり。
「えー、高校生の時なんて、部活と恋が一番楽しかったけどなあ。って、俺は今もだけど。
片思いもないの?」
「ないです」
「うっそだあ~。お嫁さんになりたいとかないの?」
「ないですね。コスパ悪いことはしませんから」
「コスパ悪いか?」
「悪いですよ。恋も結婚も。片思いなんてして、相手のことばかり考えるとか、それでフラれて傷ついて何も手につかないとか、時間と労力の無駄でしかないですし、もし両想いになってしまえば、その後その男に時間を割くため自分の時間減らすとか、プレゼントやデート代とか、結婚なんて帰ってこない父を待つ母を見ていて、むしろ一人の方が良かったんじゃないかとも思えますし、とにかく、時間と労力だけじゃなく、もはや浪費です」
「浪費って……。でもさ、人生を豊かにするために必要な浪費もあるじゃん?」
「浪費に必要なものは無いです。だから、浪費です」
「じゃあ、白高下さんって夢はないの?」
「あります」
「お! なになに?」
「就職率の高い大学を出て、福利厚生の手厚い優良企業に就職することです」
「お、立派だねぇ。
それで、それはなんのために?」
「なんのためって、生活のために決まってるじゃないですか」
「うーん、そうなんだけど、それって大学で何を学びたいとか、やりたい仕事があるってわけじゃないんだよね?
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「充実させたい?」
「白高下さんの様子だと、家庭や子供を持ちたいから、とかじゃなさそうじゃん? 旅行が趣味にも思えないし、何のために働くのかな? って」
「堂島さん」
「ん??」
「老後のためです」
「はは、そうか」
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