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4. 強引な魔法使い①
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飼い犬がご主人様の帰りをしっぽを振って喜ぶ気持ちが良くわかる。
上に向かおうとする口角を必死に抑えて、何ともない顔をしながら扉が開くのを待った。
「透子ちゃん、いる? 帰ったよ」
伊勢さんがそう言いながら扉を開ければ、リビングのソファに座る私と目が合った。
伊勢さんは父性溢れる優しい笑顔をふわりと私に向けてくれた。その途端、包まれるような安心感に満たされた。
「おかえりなさい、伊勢さん」
「ただいま、透子ちゃん」
ほころぶ表情が抑えられないと思ったけど、意外にもあっさりと引いた。予想外のものが視界に入ってきたから。
伊勢さんの後ろから、見知らぬ異国の青年も一緒にリビングに入ってきたのだ。
ゆるいくせ毛の金の髪は地毛だろう。少し長めの前髪からのぞく瞳は、太陽の光を浴びた新緑のよう。
優しげな目元に、柔らかな微笑みを携えた表情はまさに王子様。
肌は陶器のように白く、背は伊勢さんよりも高い。
新人のアイドルか、モデルとかだろうか?
伊勢さんの彼に向ける視線が温かく、思わず金髪青年を怪訝な顔で見つめた。
「透子ちゃん、彼はセラドナイト・モンテルーと言って、年は透子ちゃんと同じ。突然で驚くと思うけど、今日からここで暮らしてもらおうと思う」
「え!? ま、まってください。一体何があってそんなことに?」
「突拍子もない話に聞こえると思うけど、彼はね、異世界から転移してきて頼るあてがないんだ」
「は?」
目が点になった。
もしかして、伊勢さん出演のドッキリ番組に使われているのだろうか?
そう思いキョロキョロと部屋の中を見まわした。
「透子ちゃん、カメラとかないから安心して。真面目に話してるから」
「そんなこと、真面目に話してる方が困ります」
「いつか話さないととは思ってたんだ。ほら、私が児童養護施設出身なのは知ってるだろ?」
そう。伊勢さんと暮らし始めてから知った。家族のいない伊勢さんが頼れる人は、私の父だけだったとも。
「私も、彼が暮らしていた世界から転移してきたんだよ」
「………………はい?」
相変わらず伊勢さんの目は真剣だ。それがまた現実離れしたセリフと噛み合わず滑稽である。
「私の本当の名前はカイリ・ブラッドモア。トランスレーン王国という国の王太子だった」
「ど……」
目の前には宇宙が広がった。
驚きは呆れに変わり、もう、言葉も上手く出ない……。
だけど伊勢さんは首を傾げながらも、私が声を出せるように誠実に待ってくれている。
だから、しかたなく言葉を続けた。
「ど……どこの中二病ですか?」
「はは、まあ、そうなるよね」
荒唐無稽な話をしているのはそっちなのに、無知な子供を扱うような笑顔に少しイラついた。
「次は魔法が使えるとか言い出さないでくださいよ」
「いや、私は魔法は使えない。使えるのは彼だ」
私の顎が勢いよく落ちた。
私が言葉を完全に失っている間にも、「でもセラドナイトはこの世界で魔法は絶対使っちゃだめだよ」とか「はい、わかりました」とか、二人は平然とその設定を貫き通していた。
もう、これは絶対にどこかにカメラがあるはず。
私はもう一度眉を顰めて部屋中を見回した。
「カメラはないよ、透子ちゃん。
それで、セラドナイトはわからないことだらけだから、透子ちゃんにも色々と面倒をみてもらいたいんだ」
伊勢さんは、私に面倒を見ろと頼む金髪の青年を、まるで懐かしむような、我が子でも見るかのような温かな眼差しで見つめていた。
伊勢さんの心の中にあった私のスペースが、今は彼のものとなりつつあるのがわかった。
「いい加減にしてくださいっ!!」
一瞬で部屋の中は静まり返った。
私は、初めて伊勢さんに大声を上げてしまった。
「大きな声を出してごめんなさい……ちょっと、部屋で休ませてください……」
伊勢さんが手を伸ばして何か言いかけていたけど、私はそれを振り切り、リビングにある螺旋階段を昇って自室へと戻って行った。
部屋に入れば、そのままベッドにダイブした。
込み上げてくる不安な感情をどうして良いかわからない。
起き上がって机から通帳を取り出した。開いてみれば、まだまだ道のりは遠い。
扉がノックされたけど、無視した。
次第にノックの間隔が短くなっていき、開けるまでけたたましくノックが続きそう。
煩わしすぎて、とうとう開けに行ってしまった。
伊勢さんかと思いきや、そこに立っていたのは、あの金髪の青年だった。
澄んだ緑色の瞳で真っ直ぐに私を見つめていた。
「少し、いい?」
彼の見た目から流暢な日本語が飛び出して驚いてしまった。その拍子で軽く後ろに下がると、彼はその隙間にスッと入り込み、部屋への侵入を成功させた。
上に向かおうとする口角を必死に抑えて、何ともない顔をしながら扉が開くのを待った。
「透子ちゃん、いる? 帰ったよ」
伊勢さんがそう言いながら扉を開ければ、リビングのソファに座る私と目が合った。
伊勢さんは父性溢れる優しい笑顔をふわりと私に向けてくれた。その途端、包まれるような安心感に満たされた。
「おかえりなさい、伊勢さん」
「ただいま、透子ちゃん」
ほころぶ表情が抑えられないと思ったけど、意外にもあっさりと引いた。予想外のものが視界に入ってきたから。
伊勢さんの後ろから、見知らぬ異国の青年も一緒にリビングに入ってきたのだ。
ゆるいくせ毛の金の髪は地毛だろう。少し長めの前髪からのぞく瞳は、太陽の光を浴びた新緑のよう。
優しげな目元に、柔らかな微笑みを携えた表情はまさに王子様。
肌は陶器のように白く、背は伊勢さんよりも高い。
新人のアイドルか、モデルとかだろうか?
伊勢さんの彼に向ける視線が温かく、思わず金髪青年を怪訝な顔で見つめた。
「透子ちゃん、彼はセラドナイト・モンテルーと言って、年は透子ちゃんと同じ。突然で驚くと思うけど、今日からここで暮らしてもらおうと思う」
「え!? ま、まってください。一体何があってそんなことに?」
「突拍子もない話に聞こえると思うけど、彼はね、異世界から転移してきて頼るあてがないんだ」
「は?」
目が点になった。
もしかして、伊勢さん出演のドッキリ番組に使われているのだろうか?
そう思いキョロキョロと部屋の中を見まわした。
「透子ちゃん、カメラとかないから安心して。真面目に話してるから」
「そんなこと、真面目に話してる方が困ります」
「いつか話さないととは思ってたんだ。ほら、私が児童養護施設出身なのは知ってるだろ?」
そう。伊勢さんと暮らし始めてから知った。家族のいない伊勢さんが頼れる人は、私の父だけだったとも。
「私も、彼が暮らしていた世界から転移してきたんだよ」
「………………はい?」
相変わらず伊勢さんの目は真剣だ。それがまた現実離れしたセリフと噛み合わず滑稽である。
「私の本当の名前はカイリ・ブラッドモア。トランスレーン王国という国の王太子だった」
「ど……」
目の前には宇宙が広がった。
驚きは呆れに変わり、もう、言葉も上手く出ない……。
だけど伊勢さんは首を傾げながらも、私が声を出せるように誠実に待ってくれている。
だから、しかたなく言葉を続けた。
「ど……どこの中二病ですか?」
「はは、まあ、そうなるよね」
荒唐無稽な話をしているのはそっちなのに、無知な子供を扱うような笑顔に少しイラついた。
「次は魔法が使えるとか言い出さないでくださいよ」
「いや、私は魔法は使えない。使えるのは彼だ」
私の顎が勢いよく落ちた。
私が言葉を完全に失っている間にも、「でもセラドナイトはこの世界で魔法は絶対使っちゃだめだよ」とか「はい、わかりました」とか、二人は平然とその設定を貫き通していた。
もう、これは絶対にどこかにカメラがあるはず。
私はもう一度眉を顰めて部屋中を見回した。
「カメラはないよ、透子ちゃん。
それで、セラドナイトはわからないことだらけだから、透子ちゃんにも色々と面倒をみてもらいたいんだ」
伊勢さんは、私に面倒を見ろと頼む金髪の青年を、まるで懐かしむような、我が子でも見るかのような温かな眼差しで見つめていた。
伊勢さんの心の中にあった私のスペースが、今は彼のものとなりつつあるのがわかった。
「いい加減にしてくださいっ!!」
一瞬で部屋の中は静まり返った。
私は、初めて伊勢さんに大声を上げてしまった。
「大きな声を出してごめんなさい……ちょっと、部屋で休ませてください……」
伊勢さんが手を伸ばして何か言いかけていたけど、私はそれを振り切り、リビングにある螺旋階段を昇って自室へと戻って行った。
部屋に入れば、そのままベッドにダイブした。
込み上げてくる不安な感情をどうして良いかわからない。
起き上がって机から通帳を取り出した。開いてみれば、まだまだ道のりは遠い。
扉がノックされたけど、無視した。
次第にノックの間隔が短くなっていき、開けるまでけたたましくノックが続きそう。
煩わしすぎて、とうとう開けに行ってしまった。
伊勢さんかと思いきや、そこに立っていたのは、あの金髪の青年だった。
澄んだ緑色の瞳で真っ直ぐに私を見つめていた。
「少し、いい?」
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