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9. お昼休み
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昼休み、セラは誰よりも早く教室を出て行き、休み時間毎に群がってきていた女子達をようやく撒いた。
私はお弁当を持って教室を出ようとしたら、頭の中に声が流れてきた。
『社会科って書かれた札のある部屋に来て』
セラの声だった。
確か伊勢さんにスマホを渡されてたはずなのに、魔力を消費する魔法を使ってくるとは。
朝もガンガン魔法使ってたけど、大丈夫なのだろうか。
『あ……やばい。意識が朦朧としてきた……』
勝手に倒れてくれ。
【高校で不審死。倒れた高校生は、あの伊勢櫂と同じ名字で、同じ住所と発覚。見た目もどことなく伊勢櫂を彷彿。隠し子か!! ——某週刊誌】
脳裏に不穏なビジョンがチラつく……。
伊勢姓で転入してきて、伊勢さんと同じゲルマン系の容姿で不審死とかやめて。
私は大急ぎで渡り廊下を渡り、特別授業棟へと向かった。
通常教室がこの棟にはないので、昼休みのこの時間はほとんど人はいない。
社会科教室の扉を開けて教室内を見渡すが、セラは見当たらない。
『その奥』
その奥??
教室の奥には教材を保管している準備室に続く内扉がある。教室の扉を閉めて、早歩きで準備室に向かった。
準備室を開ければ、床の上に座り込んだセラがいた。
セラは力なくふにゃりと笑って手招きした。
「死にそう。早くこっち来て」
「むやみやたらと魔法使わないで。キスはしないからね」
「うん、しないから。ほら、ここ」
セラは自分の隣の床をぽんぽんと軽く叩いた。
気怠いため息をこぼしながらドサっと隣に私も座り込むと、すぐに指を絡めてきてしっかりと手を繋いできた。
男の子の手って、大きくてごつい。
「はぁ~、満たされる~」
セラは深い安堵の息を吐きながら、目を瞑り、頭をことんと私の肩に乗せた。
「重」
私のぼやきなんてセラは聞いてない。
ちらっとセラの顔を見れば、まつ毛が長いことに気がついた。
パッと目が開き、新緑色の瞳と目が合った。
「いい匂いがする」
「え」
「美味しそうな匂い」
また食われるのかと、咄嗟に口元を片手で覆い隠した。
「それ、お弁当?」
セラは私の横に置かれたお弁当をのぞき込むように見ていた。
「こっちだったか」
私が何を勘違いしていたのか、セラがようやく気づいたようで、プッと笑った。
セラは私をからかって、これみよがしに顔を覗きこみ、誘うような視線で見つめてきた。
「食べていいの?」
「そういうことする人には、次は魔力が無くなっても助けません」
「それは困るなぁ」
私はセラの手を乱暴に振り払い、お弁当を広げ始めた。
「凄い美味しそう。トーコ、いつも起きるの早いなって思ってたけど、毎朝お弁当作って持って行ってたんだね」
返事もせずに箸を取り出して、掴んだ卵焼きを隣でうるさい口に突っ込んだ。
「うまーっ」
新緑の瞳がキラキラと輝きだし、両手で口元を押さえて感動していた。
そんなに喜んでもらえると、ちょっとむず痒い。
「どーせお昼ご飯ないんでしょ? ほら、あげるから」
「え? だってそしたらトーコがお腹空いちゃうよ?」
「お腹空いてないし。これ食べたら購買と学食案内してあげるから、明日からはそこで自分で買って食べてよ」
「僕も毎日トーコのお弁当食べたいなぁ」
「やめてよ。面倒くさい」
「確かに大変だね。じゃあ、あとでご飯売ってる場所教えて」
「そもそも、どうやってここに転入してきたの?」
「家にいても暇だし、だったらトーコの暮らしを見てみたいなぁって思って」
「で、魔法使ったの?」
「ご名答」
「死ぬからね」
「同じ学校ならトーコいるし」
「もう!」
「死ぬほどの魔法は使わないよ」
「今しがた瀕死状態だったでしょうが!!」
「ねね、次これ食べたい」
セラは超マイペースで、すでに弁当に視線を戻して、ウインナーを指さしていた。
「食べていいよ」
「あーん」
なぜ、口を開けて待ってる……。
私は弁当と箸をセラの膝に置いた。
「自分で食べなさい」
セラはバツが悪そうな、少し切ない表情で私を見た。
「ごめん……このハシっていうのが使えないんだ」
そうだ。セラの世界はヨーロッパに近い文化のようで、箸ではなくナイフとフォークしか使えなかった。
私を見るセラの表情が、しゅんとした子犬に見えた。
弁当箱をもう一度手に取り、ウインナーを箸で掴んでセラの口元まで運んだ。
「はい」
しょげてた子犬は、パッと目を輝かせて嬉しそうにぱくついた。
これは餌を与える側も嬉しいかもしれない。
「おいしー! ありがとうトーコ。でもやっぱりそれじゃトーコが大変だから、ハシの使い方教えてよ」
確かに。教えた方が早いし、面倒くさくない。
私は手をセラの目線まで上げて、箸を開いたり閉じたりして見せた。
「ええ? 貸して。どうやるの?」
セラに箸を渡すと、やっぱり使い方がなってない。
仕方ないのでセラの箸を持つ手に自分の両手を添え、セラの指を箸に添える位置を微修正しながら説明した。
セラの右手に自分の両手を添えるとなると、少し身体を寄せて前のめりぎみになってしまった。
バランスの悪い体勢に少しキツく感じていたら、私の腰に腕が回され、しっかりと身体を密着させて押さえられた。
「辛そうだったから。これで、安定した?」
この体勢、余計、やりづらい。
こいつは子犬じゃない。大型犬だ。
犬種はゴールデンレトリバーかな?
「あ、ほら、上手につかめたよ」
セラは箸でぎこちなく掴んだご飯を、自分ではなく私の口元にもってきた。
「ほら、あーんして」
「は!?」って言ってしまえば最後、開いた口にお米を入れられた。
抗議の声を上げたかったけど、口の中がまだもぐもぐしていた。私は両手で口元を押さえ、必死にコメを嚙み潰した。
その間にセラはもう一度箸でごはんを掴み、今度は自分で食べて満足そうな顔をしていた。
私はお弁当を持って教室を出ようとしたら、頭の中に声が流れてきた。
『社会科って書かれた札のある部屋に来て』
セラの声だった。
確か伊勢さんにスマホを渡されてたはずなのに、魔力を消費する魔法を使ってくるとは。
朝もガンガン魔法使ってたけど、大丈夫なのだろうか。
『あ……やばい。意識が朦朧としてきた……』
勝手に倒れてくれ。
【高校で不審死。倒れた高校生は、あの伊勢櫂と同じ名字で、同じ住所と発覚。見た目もどことなく伊勢櫂を彷彿。隠し子か!! ——某週刊誌】
脳裏に不穏なビジョンがチラつく……。
伊勢姓で転入してきて、伊勢さんと同じゲルマン系の容姿で不審死とかやめて。
私は大急ぎで渡り廊下を渡り、特別授業棟へと向かった。
通常教室がこの棟にはないので、昼休みのこの時間はほとんど人はいない。
社会科教室の扉を開けて教室内を見渡すが、セラは見当たらない。
『その奥』
その奥??
教室の奥には教材を保管している準備室に続く内扉がある。教室の扉を閉めて、早歩きで準備室に向かった。
準備室を開ければ、床の上に座り込んだセラがいた。
セラは力なくふにゃりと笑って手招きした。
「死にそう。早くこっち来て」
「むやみやたらと魔法使わないで。キスはしないからね」
「うん、しないから。ほら、ここ」
セラは自分の隣の床をぽんぽんと軽く叩いた。
気怠いため息をこぼしながらドサっと隣に私も座り込むと、すぐに指を絡めてきてしっかりと手を繋いできた。
男の子の手って、大きくてごつい。
「はぁ~、満たされる~」
セラは深い安堵の息を吐きながら、目を瞑り、頭をことんと私の肩に乗せた。
「重」
私のぼやきなんてセラは聞いてない。
ちらっとセラの顔を見れば、まつ毛が長いことに気がついた。
パッと目が開き、新緑色の瞳と目が合った。
「いい匂いがする」
「え」
「美味しそうな匂い」
また食われるのかと、咄嗟に口元を片手で覆い隠した。
「それ、お弁当?」
セラは私の横に置かれたお弁当をのぞき込むように見ていた。
「こっちだったか」
私が何を勘違いしていたのか、セラがようやく気づいたようで、プッと笑った。
セラは私をからかって、これみよがしに顔を覗きこみ、誘うような視線で見つめてきた。
「食べていいの?」
「そういうことする人には、次は魔力が無くなっても助けません」
「それは困るなぁ」
私はセラの手を乱暴に振り払い、お弁当を広げ始めた。
「凄い美味しそう。トーコ、いつも起きるの早いなって思ってたけど、毎朝お弁当作って持って行ってたんだね」
返事もせずに箸を取り出して、掴んだ卵焼きを隣でうるさい口に突っ込んだ。
「うまーっ」
新緑の瞳がキラキラと輝きだし、両手で口元を押さえて感動していた。
そんなに喜んでもらえると、ちょっとむず痒い。
「どーせお昼ご飯ないんでしょ? ほら、あげるから」
「え? だってそしたらトーコがお腹空いちゃうよ?」
「お腹空いてないし。これ食べたら購買と学食案内してあげるから、明日からはそこで自分で買って食べてよ」
「僕も毎日トーコのお弁当食べたいなぁ」
「やめてよ。面倒くさい」
「確かに大変だね。じゃあ、あとでご飯売ってる場所教えて」
「そもそも、どうやってここに転入してきたの?」
「家にいても暇だし、だったらトーコの暮らしを見てみたいなぁって思って」
「で、魔法使ったの?」
「ご名答」
「死ぬからね」
「同じ学校ならトーコいるし」
「もう!」
「死ぬほどの魔法は使わないよ」
「今しがた瀕死状態だったでしょうが!!」
「ねね、次これ食べたい」
セラは超マイペースで、すでに弁当に視線を戻して、ウインナーを指さしていた。
「食べていいよ」
「あーん」
なぜ、口を開けて待ってる……。
私は弁当と箸をセラの膝に置いた。
「自分で食べなさい」
セラはバツが悪そうな、少し切ない表情で私を見た。
「ごめん……このハシっていうのが使えないんだ」
そうだ。セラの世界はヨーロッパに近い文化のようで、箸ではなくナイフとフォークしか使えなかった。
私を見るセラの表情が、しゅんとした子犬に見えた。
弁当箱をもう一度手に取り、ウインナーを箸で掴んでセラの口元まで運んだ。
「はい」
しょげてた子犬は、パッと目を輝かせて嬉しそうにぱくついた。
これは餌を与える側も嬉しいかもしれない。
「おいしー! ありがとうトーコ。でもやっぱりそれじゃトーコが大変だから、ハシの使い方教えてよ」
確かに。教えた方が早いし、面倒くさくない。
私は手をセラの目線まで上げて、箸を開いたり閉じたりして見せた。
「ええ? 貸して。どうやるの?」
セラに箸を渡すと、やっぱり使い方がなってない。
仕方ないのでセラの箸を持つ手に自分の両手を添え、セラの指を箸に添える位置を微修正しながら説明した。
セラの右手に自分の両手を添えるとなると、少し身体を寄せて前のめりぎみになってしまった。
バランスの悪い体勢に少しキツく感じていたら、私の腰に腕が回され、しっかりと身体を密着させて押さえられた。
「辛そうだったから。これで、安定した?」
この体勢、余計、やりづらい。
こいつは子犬じゃない。大型犬だ。
犬種はゴールデンレトリバーかな?
「あ、ほら、上手につかめたよ」
セラは箸でぎこちなく掴んだご飯を、自分ではなく私の口元にもってきた。
「ほら、あーんして」
「は!?」って言ってしまえば最後、開いた口にお米を入れられた。
抗議の声を上げたかったけど、口の中がまだもぐもぐしていた。私は両手で口元を押さえ、必死にコメを嚙み潰した。
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