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11. ジンジャーエール(後編)
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「白高下さんって、転入生と付き合ってるの?」
「え?」
マナト君の訝しむ視線の先に私も目をやれば、私とセラの繋がれた手に辿り着いた。
慌ててセラから手を離し、両手を思い切り横に振り否定した。
「ちっ、違う。これは、たまたま」
「たまたま、で?」
「本当、付き合ってないから。それで、こんなところで何してるの?」
「塾の帰り。たまに白高下さんのお店でおにぎり買ってたんだけど、やっぱり気づいてなかったよね?」
「ごめん、多分仕事に集中してて気づいてなかった。でも、声かけてくれたらちゃんと気づく」
「うん、じゃあ……これからは、遠慮なく声を掛けさせてもらうよ」
私と話しているはずのマナト君の視線は、私にではなくセラに向かっていた。鋭く目を細めるマナト君は、なかなか威圧的だ。
これは……本当に私に気があるとかだと面倒くさい。
「あ、白高下さん、よかったらLIKE交換して」
「あ、うん」
私はポケットからスマホを出し、LIKE交換の画面を出した。
「でも……いいの?」
「え、何が?」
「だって、私と仲良くしたら、クラスで嫌な噂されるんじゃない?」
マナト君は黙ったまま、LIKE交換を完了させた。
「今LIKE送ったから」
そう言われてLIKEを開けば、
“クラスで噂になるくらい、白高下さんと仲良くしたいと思ってる”
と、書かれていた。
マナト君の名前は、“真斗”と書くらしい。
「じゃ、また明日」
「あ、え、また明日」
慌ててスマホの画面から真斗君に顔を向けたけど、真斗君はすでに背を向けて歩き出していた。
「真斗君はトーコが好きなんだね」
セラに顔を向ければ、まったく気にしていない様子だ。いつも通り、茶目っ気たっぷりの笑顔を向けていた。
少し肩透かしを食らった気がした。
セラが嫉妬してくれるのを期待していた自分がいて、がっかりしていることに戸惑ってしまった。
「別に告白されたわけじゃないし、からかわれてるだけかもよ」
私が歩き出すとセラも慌ててついてきて、ワンコのように私の顔をのぞき込みながら周りをちょろちょろした。
「トーコと仲良くしたら嫌な噂されるって言ってたけど、あれ、どういう意味?」
「そのままだよ。嫌われ者と一緒にいたら変な噂されて巻き込まれるってこと」
「トーコが嫌われ者?」
「そう。気づかなかった? 私、付き合い悪いから」
「ん-、気のせいじゃない? トーコの方が友達とかいらないんだと思ってた」
「それもある」
「トーコは確かに付き合い悪いけど、しっかりしてて好かれやすそうだなあと思うけど。カワイイし」
「慰めをありがとう」
「本音だよ」
セラは私の頭をくしゃりと撫でた。
慰めなんかいらない。
クラスのみんなに嫌われていようが、私はそれを恥ずかしいと思ってない。
「……私はね、伊勢さんに恩返しがしたいの。そのために、今は頑張ってる。
だから、クラスメイトに誘われても、そこに時間を割けないし、人間関係で悩む時間ももったいなくて。
恥ずかしい事はしてない。だから、嫌われ者でも、煩わしい関係から解放されるならそれでいい」
私の話を聞いていたセラが、めずらしく大人びた表情を見せていた。
そして、なぜか遠くを見つめた。
「そう……。なんか、わかるかも」
「どこらへんが?」
「伊勢さんに恩返しがしたいから、他はどうでもいいってあたりかな」
「他はどうでもいいまで言ってないけど……まあ、かみ砕けばそうとも言えるのかな」
「トーコと僕は似た者同士かも」
「それは、ないわ」
セラは、私の手を取って立ち止まった。
表情や口調が、いつもの軽い調子に戻った。
「似た者同士だし、このまま僕の世界に一緒に行って、本当の夫婦にならない?」
「え、ムリ」
「だよね。まだムリだよね」
どこまで本気で、どこまで冗談なのか。
そもそも、異世界に帰れるなら、なぜ伊勢さんちで居候してる。
「話聞いてた? 私は伊勢さんに恩返ししたくて頑張ってるのに、異世界になんて行くわけないでしょ」
「それって、異世界に行かない理由は伊勢さんへの恩返しだけで、僕と本当の夫婦になるのは構わないってこと?」
「それもムリ」
「トーコはきついなあ、でも」
セラはパチンッと指を鳴らした。
一瞬で私達は自宅の玄関に立っていた。
ふっと手の温もりを思い出せば、それはセラの大きな手。
指を絡めて繋がれた手は、気づかせるように一度ギュッと固く握られた。
見上げた視線の先には、いつものおちゃらけたセラじゃなく、初めて出会った時の、伊勢さんの後ろに立っていたあの時の姿。
ゆるいくせ毛の金の髪。
太陽の光を浴びた新緑のような瞳。
肌は陶器のように白く、背は伊勢さんよりも高い。
新人のアイドルか、モデルのような、一般人とは一線を画す華のある佇まい。
優しげな目元に、柔らかな微笑みを携えた、儀礼的な微笑みをする王子様。
私はまだ、セラをまったくわかっていない……。
「僕は必ずトーコを夢中にさせるから」
「え?」
マナト君の訝しむ視線の先に私も目をやれば、私とセラの繋がれた手に辿り着いた。
慌ててセラから手を離し、両手を思い切り横に振り否定した。
「ちっ、違う。これは、たまたま」
「たまたま、で?」
「本当、付き合ってないから。それで、こんなところで何してるの?」
「塾の帰り。たまに白高下さんのお店でおにぎり買ってたんだけど、やっぱり気づいてなかったよね?」
「ごめん、多分仕事に集中してて気づいてなかった。でも、声かけてくれたらちゃんと気づく」
「うん、じゃあ……これからは、遠慮なく声を掛けさせてもらうよ」
私と話しているはずのマナト君の視線は、私にではなくセラに向かっていた。鋭く目を細めるマナト君は、なかなか威圧的だ。
これは……本当に私に気があるとかだと面倒くさい。
「あ、白高下さん、よかったらLIKE交換して」
「あ、うん」
私はポケットからスマホを出し、LIKE交換の画面を出した。
「でも……いいの?」
「え、何が?」
「だって、私と仲良くしたら、クラスで嫌な噂されるんじゃない?」
マナト君は黙ったまま、LIKE交換を完了させた。
「今LIKE送ったから」
そう言われてLIKEを開けば、
“クラスで噂になるくらい、白高下さんと仲良くしたいと思ってる”
と、書かれていた。
マナト君の名前は、“真斗”と書くらしい。
「じゃ、また明日」
「あ、え、また明日」
慌ててスマホの画面から真斗君に顔を向けたけど、真斗君はすでに背を向けて歩き出していた。
「真斗君はトーコが好きなんだね」
セラに顔を向ければ、まったく気にしていない様子だ。いつも通り、茶目っ気たっぷりの笑顔を向けていた。
少し肩透かしを食らった気がした。
セラが嫉妬してくれるのを期待していた自分がいて、がっかりしていることに戸惑ってしまった。
「別に告白されたわけじゃないし、からかわれてるだけかもよ」
私が歩き出すとセラも慌ててついてきて、ワンコのように私の顔をのぞき込みながら周りをちょろちょろした。
「トーコと仲良くしたら嫌な噂されるって言ってたけど、あれ、どういう意味?」
「そのままだよ。嫌われ者と一緒にいたら変な噂されて巻き込まれるってこと」
「トーコが嫌われ者?」
「そう。気づかなかった? 私、付き合い悪いから」
「ん-、気のせいじゃない? トーコの方が友達とかいらないんだと思ってた」
「それもある」
「トーコは確かに付き合い悪いけど、しっかりしてて好かれやすそうだなあと思うけど。カワイイし」
「慰めをありがとう」
「本音だよ」
セラは私の頭をくしゃりと撫でた。
慰めなんかいらない。
クラスのみんなに嫌われていようが、私はそれを恥ずかしいと思ってない。
「……私はね、伊勢さんに恩返しがしたいの。そのために、今は頑張ってる。
だから、クラスメイトに誘われても、そこに時間を割けないし、人間関係で悩む時間ももったいなくて。
恥ずかしい事はしてない。だから、嫌われ者でも、煩わしい関係から解放されるならそれでいい」
私の話を聞いていたセラが、めずらしく大人びた表情を見せていた。
そして、なぜか遠くを見つめた。
「そう……。なんか、わかるかも」
「どこらへんが?」
「伊勢さんに恩返しがしたいから、他はどうでもいいってあたりかな」
「他はどうでもいいまで言ってないけど……まあ、かみ砕けばそうとも言えるのかな」
「トーコと僕は似た者同士かも」
「それは、ないわ」
セラは、私の手を取って立ち止まった。
表情や口調が、いつもの軽い調子に戻った。
「似た者同士だし、このまま僕の世界に一緒に行って、本当の夫婦にならない?」
「え、ムリ」
「だよね。まだムリだよね」
どこまで本気で、どこまで冗談なのか。
そもそも、異世界に帰れるなら、なぜ伊勢さんちで居候してる。
「話聞いてた? 私は伊勢さんに恩返ししたくて頑張ってるのに、異世界になんて行くわけないでしょ」
「それって、異世界に行かない理由は伊勢さんへの恩返しだけで、僕と本当の夫婦になるのは構わないってこと?」
「それもムリ」
「トーコはきついなあ、でも」
セラはパチンッと指を鳴らした。
一瞬で私達は自宅の玄関に立っていた。
ふっと手の温もりを思い出せば、それはセラの大きな手。
指を絡めて繋がれた手は、気づかせるように一度ギュッと固く握られた。
見上げた視線の先には、いつものおちゃらけたセラじゃなく、初めて出会った時の、伊勢さんの後ろに立っていたあの時の姿。
ゆるいくせ毛の金の髪。
太陽の光を浴びた新緑のような瞳。
肌は陶器のように白く、背は伊勢さんよりも高い。
新人のアイドルか、モデルのような、一般人とは一線を画す華のある佇まい。
優しげな目元に、柔らかな微笑みを携えた、儀礼的な微笑みをする王子様。
私はまだ、セラをまったくわかっていない……。
「僕は必ずトーコを夢中にさせるから」
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