24 / 38
24.弟でもアンジェロでもなく
しおりを挟む
セラ峠の麓の宿場町ココロロに転移した二人は、宿探しに苦戦していた。スノーベアの脅威がなくなり、峠を越える人が激増した為、宿がどこもいっぱいだった。街の中心地から外れた場所にある宿でようやく一部屋見つけたところだ。
セラフィーナが宿屋の女将と交渉していた。
「一部屋だけなら空いてるけど、シングルベッドが一つのとても狭い部屋だよ?」
「構わないわ。他をあたったところで部屋は無さそうだし」
「確かにそうだね。夏中にセラ峠を行き来しようと、今が一番混雑しているかも。はい、これが部屋の鍵。明日になればベッドが二つの部屋が空くから、そっちに変えてあげるよ」
セラフィーナは宿屋の女将から鍵を受け取った。
「助かるわ、ありがとう。それとこの街に古着屋はある? 弟の服が至急必要で、仕立て屋で作るような時間がないの」
「それなら、店の前の道を真っ直ぐ行った裏路地で行商人の露店があるから、人も多く行き交う場所で危険もないし、行ってみるといいわよ」
「ありがとう。さっそく弟を連れて行ってみる」
女将は、ロビーで新聞を読んで待つフィガロ皇子に目を向けた。峠を越える時に身につける防寒マントで全身を覆い隠しているが、宿屋に入ってきた時に目に飛び込んできた彼の背の高さと立ち姿から、スタイルの良さはわかった。
宿屋の女将として数えきれないほどの客を見て来たが、あれほど美しい顔立ちの男は初めてだった。少しだけ見るつもりだったのが、思わずうっとりと見惚れていた。
「はぁ~、いい男だねぇ~。弟さんというより、お兄さんに見えるわね」
「全然。弟にしか見えないわ」
セラフィーナは女将の発言を流してフィガロ皇子のもとに戻る。
「フィー、部屋を借りれたから露店に行くわよ。古着を探しましょう」
フィガロ皇子が慌てて新聞をたたみ、ロビーのテーブルに戻した。
「何日くらいここに滞在する予定?」
「何か見つけられるまでかしら」
「何を?」
「私が死ぬ方法」
「ええ!?」
セラフィーナは驚くフィガロ皇子に笑ってみせた。
九百年もの間を封印の部屋で孤独に生きてきた人が死にたいと思うのは当然といえば当然である。
フィガロ皇子はセラフィーナに生きて欲しいし、出来るなら自分が幸せにしてあげたいが、彼女の気持ちを考えれば考えるほど、安易には言葉を掛けられず、ただ黙ってついていくしかなかった。
二人は女将の教えてくれた場所に向かえば、狭い裏路地は人でごった返していた。行商人がこの街で宿を取る傍ら、ついでに商売もしていく場所だ。
貴族が着なくなった服を並べた露店を見つけ、フィガロ皇子に合いそうなものを探す。どれも庶民や旅人が着るには少し華美だったが、服がないのでこの中から選ぶしかない。一番地味で、動きやすそうなシャツとズボンを見つけて買おうとした。
「そこまで買うなら、ジャケットやブーツも買いなよ」
「いえ、間に合わせだからこれくらいでいいの」
「そんなこと言わずに。そこの綺麗なお兄ちゃんが着るんだろ? お兄ちゃんがこのジャケットも着たら、貴族に間違われるさ」
「いらないわ。街を歩くのに貴族に見られて浮く方が困るもの」
「じゃあ、売らねえ」
「は?」
「間に合わせですぐにでも服がいるんだろ? 貴族様セットでお買い上げなら売ってやるよ。これくらいのデザインなら、街を歩いてたって浮きはしねぇよ。ちょいとばかし女にモテちまうかもしれねぇがな」
さすが裏路地の露店商人だとセラフィーナは苦笑した。こちらがどうしても必要な状況に足元を見てきた。結局押し切られ、貴族セットとやらを想定以上の出費額で手に入れて宿に戻った。
部屋に入れば、部屋の狭さとシングルベッドが一つという事実を知ったフィガロ皇子が大慌てする。
「セッ、セラ!? 部屋間違えてない?」
「ここで合ってるわ」
「でも、これじゃあ床で寝る場所がない」
「仕方ないから今夜は一緒に寝るしかないわね。明日になればベッドが二つある部屋が空くそうだし、今夜だけの辛抱よ」
「セラは大丈夫なの?」
「なにが?」
「なにがって、男と同じベッドで寝るなんて……」
「弟でしょ? 問題ないわ」
「まだ弟?」
「身体だけ成長したってフィーはフィーで、弟よ。それとも何、変なことでもする気?」
セラフィーナは半ば揶揄いながらそう言うと、ムッとしたフィガロ皇子は黙って買ってきた服に着替え始める。
ハンガーポールはシャドウの為に開けておき、コートを壁の出っ張りにかけた。
破れた服を脱ぎ捨て、大人の男性になった上半身を露わにした時、やっとセラフィーナが慌てだす。
「ちょっ、ちょっと、さすがに弟でも姉の目の前で裸になるつもりじゃないでしょうね?」
「着替えるんだから、脱ぐ必要あるよね?」
フィガロ皇子が手をズボンにあてた時、セラフィーナはサッと背中を向けて目を瞑った。
ガサゴソとセラフィーナの背後で着替える音だけが響く。
急に静かになったので、セラフィーナは目を開けて振り返らずに声だけ掛けた。
「フィー? 着替え終わった? もう振り返ってもいい?」
セラフィーナの左右の視界に長い両腕がスッと伸びて来て壁に手をついた。背中には自分を包み込む熱を感じている。
「いいよ」
フィガロ皇子らしくない低い落ち着いた声が耳にかかった。
「……いいよって言われても、これじゃ振り返れないじゃない」
それを聞いたフィガロ皇子の両手が壁から離れ、セラフィーナの両肩に添えられた。そしてゆっくりと正面に身体を向かせる。
セラフィーナの視界に飛び込んで来たフィガロ皇子の姿は、貴族の服に身を包む気品に満ちた皇子そのものだった。
「……髪は結んだのね」
「結んだ方がアンジェロ皇帝と区別つくから」
「結んでなくてもアンジェロとは違うわよ」
「だよね。弟にしか見えないみたいだし」
フィガロ皇子は顔を近づけ、セラフィーナの唇に触れる寸前で止まる。
「キスしていい?」
「ダメに決まってるでしょ」
「なんで?」
フィガロ皇子の目は真っ直ぐにセラフィーナを見つめている。
「……だって、まだ子供じゃない」
フィガロ皇子が優しくセラフィーナの手を取ると、壁に押しあてた。
「妖精の悪戯で、僕だけ時間が四、五年進んだらしいんだ。だからもう子供じゃない」
「何をバカな……」
フィガロ皇子の手に力が入った。
「ごめん……もう、止められそうもない」
熱い吐息と共にフィガロ皇子とセラフィーナの唇が僅かに触れると、セラフィーナはすかさず顔を背けた。
「やめなさい。あなたの気持ちは一時的なものよ。大人になればわかるし、こういうことは大切にしなさい」
「さあ、どうだろう。セラの言う大人になれば、きっと、もっとセラフィーナという女性を想っているはず」
「その考えが若さゆえなの。アンジェロも責任や立場を理解するとともに変わっていった」
「フィガロだよ、僕は」
「ええ……そうね」
二人は見つめあったまま動かない。
フィガロ皇子はセラフィーナから手を離す。
セラフィーナはフィガロ皇子が諦めたと思い、ホッとした。
「わかってくれて、ありがとう」
「違うよ。証明するためだ。今じゃないってわかった。今夜はセラがここで寝て。僕は違うところで寝るから」
フィガロ皇子は不意を突いてセラフィーナの頬にキスをした。
セラフィーナが驚いている間に、目の前で光に包まれどこかに転移してしまった。
セラフィーナが宿屋の女将と交渉していた。
「一部屋だけなら空いてるけど、シングルベッドが一つのとても狭い部屋だよ?」
「構わないわ。他をあたったところで部屋は無さそうだし」
「確かにそうだね。夏中にセラ峠を行き来しようと、今が一番混雑しているかも。はい、これが部屋の鍵。明日になればベッドが二つの部屋が空くから、そっちに変えてあげるよ」
セラフィーナは宿屋の女将から鍵を受け取った。
「助かるわ、ありがとう。それとこの街に古着屋はある? 弟の服が至急必要で、仕立て屋で作るような時間がないの」
「それなら、店の前の道を真っ直ぐ行った裏路地で行商人の露店があるから、人も多く行き交う場所で危険もないし、行ってみるといいわよ」
「ありがとう。さっそく弟を連れて行ってみる」
女将は、ロビーで新聞を読んで待つフィガロ皇子に目を向けた。峠を越える時に身につける防寒マントで全身を覆い隠しているが、宿屋に入ってきた時に目に飛び込んできた彼の背の高さと立ち姿から、スタイルの良さはわかった。
宿屋の女将として数えきれないほどの客を見て来たが、あれほど美しい顔立ちの男は初めてだった。少しだけ見るつもりだったのが、思わずうっとりと見惚れていた。
「はぁ~、いい男だねぇ~。弟さんというより、お兄さんに見えるわね」
「全然。弟にしか見えないわ」
セラフィーナは女将の発言を流してフィガロ皇子のもとに戻る。
「フィー、部屋を借りれたから露店に行くわよ。古着を探しましょう」
フィガロ皇子が慌てて新聞をたたみ、ロビーのテーブルに戻した。
「何日くらいここに滞在する予定?」
「何か見つけられるまでかしら」
「何を?」
「私が死ぬ方法」
「ええ!?」
セラフィーナは驚くフィガロ皇子に笑ってみせた。
九百年もの間を封印の部屋で孤独に生きてきた人が死にたいと思うのは当然といえば当然である。
フィガロ皇子はセラフィーナに生きて欲しいし、出来るなら自分が幸せにしてあげたいが、彼女の気持ちを考えれば考えるほど、安易には言葉を掛けられず、ただ黙ってついていくしかなかった。
二人は女将の教えてくれた場所に向かえば、狭い裏路地は人でごった返していた。行商人がこの街で宿を取る傍ら、ついでに商売もしていく場所だ。
貴族が着なくなった服を並べた露店を見つけ、フィガロ皇子に合いそうなものを探す。どれも庶民や旅人が着るには少し華美だったが、服がないのでこの中から選ぶしかない。一番地味で、動きやすそうなシャツとズボンを見つけて買おうとした。
「そこまで買うなら、ジャケットやブーツも買いなよ」
「いえ、間に合わせだからこれくらいでいいの」
「そんなこと言わずに。そこの綺麗なお兄ちゃんが着るんだろ? お兄ちゃんがこのジャケットも着たら、貴族に間違われるさ」
「いらないわ。街を歩くのに貴族に見られて浮く方が困るもの」
「じゃあ、売らねえ」
「は?」
「間に合わせですぐにでも服がいるんだろ? 貴族様セットでお買い上げなら売ってやるよ。これくらいのデザインなら、街を歩いてたって浮きはしねぇよ。ちょいとばかし女にモテちまうかもしれねぇがな」
さすが裏路地の露店商人だとセラフィーナは苦笑した。こちらがどうしても必要な状況に足元を見てきた。結局押し切られ、貴族セットとやらを想定以上の出費額で手に入れて宿に戻った。
部屋に入れば、部屋の狭さとシングルベッドが一つという事実を知ったフィガロ皇子が大慌てする。
「セッ、セラ!? 部屋間違えてない?」
「ここで合ってるわ」
「でも、これじゃあ床で寝る場所がない」
「仕方ないから今夜は一緒に寝るしかないわね。明日になればベッドが二つある部屋が空くそうだし、今夜だけの辛抱よ」
「セラは大丈夫なの?」
「なにが?」
「なにがって、男と同じベッドで寝るなんて……」
「弟でしょ? 問題ないわ」
「まだ弟?」
「身体だけ成長したってフィーはフィーで、弟よ。それとも何、変なことでもする気?」
セラフィーナは半ば揶揄いながらそう言うと、ムッとしたフィガロ皇子は黙って買ってきた服に着替え始める。
ハンガーポールはシャドウの為に開けておき、コートを壁の出っ張りにかけた。
破れた服を脱ぎ捨て、大人の男性になった上半身を露わにした時、やっとセラフィーナが慌てだす。
「ちょっ、ちょっと、さすがに弟でも姉の目の前で裸になるつもりじゃないでしょうね?」
「着替えるんだから、脱ぐ必要あるよね?」
フィガロ皇子が手をズボンにあてた時、セラフィーナはサッと背中を向けて目を瞑った。
ガサゴソとセラフィーナの背後で着替える音だけが響く。
急に静かになったので、セラフィーナは目を開けて振り返らずに声だけ掛けた。
「フィー? 着替え終わった? もう振り返ってもいい?」
セラフィーナの左右の視界に長い両腕がスッと伸びて来て壁に手をついた。背中には自分を包み込む熱を感じている。
「いいよ」
フィガロ皇子らしくない低い落ち着いた声が耳にかかった。
「……いいよって言われても、これじゃ振り返れないじゃない」
それを聞いたフィガロ皇子の両手が壁から離れ、セラフィーナの両肩に添えられた。そしてゆっくりと正面に身体を向かせる。
セラフィーナの視界に飛び込んで来たフィガロ皇子の姿は、貴族の服に身を包む気品に満ちた皇子そのものだった。
「……髪は結んだのね」
「結んだ方がアンジェロ皇帝と区別つくから」
「結んでなくてもアンジェロとは違うわよ」
「だよね。弟にしか見えないみたいだし」
フィガロ皇子は顔を近づけ、セラフィーナの唇に触れる寸前で止まる。
「キスしていい?」
「ダメに決まってるでしょ」
「なんで?」
フィガロ皇子の目は真っ直ぐにセラフィーナを見つめている。
「……だって、まだ子供じゃない」
フィガロ皇子が優しくセラフィーナの手を取ると、壁に押しあてた。
「妖精の悪戯で、僕だけ時間が四、五年進んだらしいんだ。だからもう子供じゃない」
「何をバカな……」
フィガロ皇子の手に力が入った。
「ごめん……もう、止められそうもない」
熱い吐息と共にフィガロ皇子とセラフィーナの唇が僅かに触れると、セラフィーナはすかさず顔を背けた。
「やめなさい。あなたの気持ちは一時的なものよ。大人になればわかるし、こういうことは大切にしなさい」
「さあ、どうだろう。セラの言う大人になれば、きっと、もっとセラフィーナという女性を想っているはず」
「その考えが若さゆえなの。アンジェロも責任や立場を理解するとともに変わっていった」
「フィガロだよ、僕は」
「ええ……そうね」
二人は見つめあったまま動かない。
フィガロ皇子はセラフィーナから手を離す。
セラフィーナはフィガロ皇子が諦めたと思い、ホッとした。
「わかってくれて、ありがとう」
「違うよ。証明するためだ。今じゃないってわかった。今夜はセラがここで寝て。僕は違うところで寝るから」
フィガロ皇子は不意を突いてセラフィーナの頬にキスをした。
セラフィーナが驚いている間に、目の前で光に包まれどこかに転移してしまった。
10
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる