溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

文字の大きさ
31 / 74
3.

4-1

しおりを挟む





 ◆◆◆◆◆◆


 どうして、こんなことになってしまっているのだろう……。

 あの日を境に、美花の世界は一変した。

 いや、基本的なことは変わっていない。あの人も以前よりスキンシップ過多にはなった気がするが、飄々とした態度は何も変わっていない。


 変わったのは、あれから週に何回かあの人に抱かれるようになったことと、それを待ってしまっている自分。

 彼に教えて貰ったあまい蜜に浸されるようなそれは、今まで嫌悪していた行為とはまるで違う。

 可愛い、可愛いと何度も囁かれ、ひたひたに甘やかされ、開かされ、彼無しでは居られないように自分が作り変えられていっている気がする。


 「熱ッ……! 」

 考え事をしていたら、鍋の縁に手を当ててしまった。
 思わず口元にやり、また思い出して頬が熱くなる。


 『冷やさなきゃ駄目だよ 』

 言ったのは自分のくせに、あの人は美花の手を取ると、仄かに薄紅色の斑の付いた指をちゅっ……と咥えた。

 形の良い薄い口唇から赤い舌が覗いて、心臓が跳ねる。俯き加減に伏せられた睫毛が、思いの外、長いのに気付いた。

 熱い口内で、ずきずきとした痛みが増してゆく。


 『痛い…… 』

 だけど、痛いのは火傷をした指だけじゃない。本当に痛いのは、胸の奥。

 じんじんとした疼きは、泣きたくなるような切なさを呼ぶ。


 『すごく、痛いの 』

 『……うん、痛いね 』

 彼は、同意するようにそう言うと、少し困ったように苦笑した。





 美花は一旦、鍋の火を消すと蛇口に手を掛ける。

 あの時、あの人はきっと、私と同じ痛みを感じてくれていた……。


 勢いよく出した水に指をさらすと、不思議なくらいに痛みがひいていく。

 だけど、美花は知っている。


 水を止めてしまえば、また痛みはぶり返す。

 「……少しは、想ってくれてるって、思っていい? 」

 ーーー浩峨さん。


 今ここには居ない相手に呟くと、蒸気する頬を押さえた。

 今夜はあの人の教えてくれたクリームシチュー。

 レパートリーは増えたけれど、特別なメニューだから週に一回は作りたくなってしまう。

 「あっ、いけない。牛乳…… 」


 買い忘れていたものを思い出して、美花は慌てる。
 昼間に初めて手作りのプリンを作ってみたから、切らしていたんだった。

 あぁ見えて、甘いものが好きだから喜んでくれるかな?


 冷蔵庫で冷えている筈の、思ったよりも上手に出来たそれを思い出して、美花はふふっと笑った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...