溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

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 「お父様が? 」

 そんなこと、考えたことも無かった……。自分の入院費用だって、掛かるのに。

 ねっ、美花ちゃんはちゃんと愛されてるでしょう?ーーー浩峨が、小さい子にするように優しく美花の頭を撫でる。

 美花は、目の奥がキンと痛むのを感じた。


 「……橘さんは、会った方がいいと思う? 」

 「そうだね。出来るなら、お父さんにも会った方がいいと思うよ 。 話せばきっと、分かり合えることもある 」


 浩峨さんは、きっと私の悪いようにはしない。ちゃんと私のことを考えて、話してくれている筈。

 美花は、浩峨の瞳を見つめると頷いた。


 「それなら、いいわ 」

 「……美花ちゃん? 」

 「橘さんがそう言うなら、私、壱葉兄さんに会うわ 」


 そう答えを返すと、まさか美花が壱葉と会うと返事をするとは考えていなかったのか、浩峨が見るからに驚いた顔をして、美花は思わず笑いたくなった。

 けれど、その笑みは直ぐに消える。


 自分には、時間が無いことを思い出したから。

 「……その、会うのって、明日でもいいのかしら? 」

 「明日?  確かに壱葉くんはいつでもいいって言ってたけど……、それはまた、いきなりだね 」

 「明日じゃなきゃ、駄目なの 」


 明日じゃなきゃ、会えない。


 「そんなに急がなくてもいいのに。 思い立ったが吉日ってこと? 」

 けれど浩峨は苦笑しつつも、「いいよ、分かった。後で連絡しとく 」と了承してくれた。


 「ありがと…… 」

 「それでね、ここからは僕の意見 」

 お礼を言うと、微笑みながら、ちょんと指で美花の鼻先に触れる。


 「だから、参考程度に聞いて? 僕はね、学校はそこに拘る必要は無いと思うんだ。気持ちが落ち着いたら、ゆっくりと自分のやりたいことを決めればいい。戻るにしろ、他の大学に行くにしろ、他のことをするにしろ、美花ちゃんが決めたことなら、僕は協力を惜しまないよ 」


 その提案は、浩峨にとって何ら利益になることはなく、こちらにとっては都合のいいことばかりで、美花は絶句してしまう。

 この人は、本当に何を考えているのだろう。

 「ごめんね。 いきなり沢山話しちゃったから、いっぱいいっぱいになっちゃったよね? 」

 黙っている美花をどう思ったのか、浩峨は更に優しく話し掛けてきた。
 美花はそれを否定するように首を振る。


 「どうして……、どうして、そこまでしてくれるの? 」

 「ん? 言ったでしょ、可愛い可愛い美花ちゃんに夢中だって 」


 美花に重荷を感じさせないようとする、冗談めかした言い方。
 我慢仕切れなくなって、美花は浩峨の背中に手を回して抱き付く。


 「美花ちゃん? 」

 「私、橘さんの愛人にだったら、直ぐにでもなったのに…… 」

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