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しおりを挟む数時間前、突然きた激しい発情期に、二海人に助けて欲しくて電話をした。電話口の二海人はいつもの優しい声で、『待ってろ、直ぐに行くから 』と言っていた。
でも来たのは、央翔だった。
「どうして、アイツは来ないんだ?…… 」
「他に用事があると言ってました。」
「用事って、何? 」
央翔に聞いたって分かる筈がないと思った。でも、聞かずにはいられなかった。
今まで二海人は、真祝が辛い時には何よりも真祝を優先してくれていたからだ。愛されてはいなくても、友人として大切にされている。その自負はあった。
けれど央翔は、知らないと思い込んでいた真祝の質問に直ぐ様答える。
「嵐柴さんには、とても大事に思う人がいるんですよ 」
「え…… 」
「その人と話している時、とても優しい顔をしていました 」
頭をガツンと殴られた気がした。
「う、そだ 」
「嘘じゃありません。僕は見ました。あんな表情をするなんて、きっと恋人なんじゃないかな 」
首を振る真祝に、追い討ちを掛けるように言う。
「恋人がいるなんて、聞いたことない 」
すると、央翔が可笑しそうにクスリと笑った。
「真祝さんには言わないと思いますよ 」
「どうして…… 」
問いながら、それは一理ある気がした。
こんなに、好きだ好きだと言っている真祝に恋人が出来たなんて、二海人が言える訳がない。
もしそうなら、一体、どんな子なんだろうか。綺麗な子なのだろうか、それとも可愛らしい感じなのだろうか。
好きな女の子のタイプなんて知らない。聞きたくもなくて、話したことなんか無かった。
だから、想像なんて出来ないし、央翔の言葉を信じたくもない。
「本人に聞く 」
「顔色が悪いですよ 」
「二海人に聞く 」
「……聞いたって仕方ないじゃないですか 」
カッと頭に血が上《の》ぼり、大きく央翔を避けて、横を行き過ぎようとすると、後ろから腕を掴まれた。
「離せよ! 」
振りほどこうとすると、掴む力が更に増す。
「何をする気ですか 」
「二海人んとこに行く。服、着んだから離せって 」
それを聞いた央翔が、また、わざとらしいため息を吐く。
「そんなに体調が悪そうなのに、外に出す訳にはいきません 」
そう言うと、央翔が真祝の手を思い切り引いた。強い力に、よろめいた真祝は央翔の胸に倒れ込む。
「どうせ会いに行っても、今は会えませんよ」
「何でそんなこと、お前に言われなくちゃならない! 」
「何んで、嵐柴さんが僕をここに寄越したと思ってるんですか? 」
「知るもんか! だから、その理由も聞くんだ、ろ…… 」
胸の中で見上げれば、同情するような瞳と視線がぶつかり、先の言葉が詰まった。
「よく考えてください。あの人は《真祝さんより》も、《大切な用事》があって、ここには来られないんですよ? 」
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