月夜の小鳥は哀切な嘘をつく【本編完結。アナザーストーリー連載中★】

山葵トロ

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 ハッとして、噛まれた場所を押さえた真祝を、男は笑った。

 「しかもそんなになってるくせに、くっせぇ匂いもねぇしな 。相手がいりゃあ、発情期にこんなとこフラついてないだろ? 」

 思わず肯定してしまったが、捨てられた訳ではない。拒んだのはこっちだ。だけど、噛んだ相手は好きな人ではないのだから、結局は同じなのかも知れない。

 でも、こんなに発情が辛いというのに、匂いがしない……?


 考えようとした時に、ぐいと力ずくで引っ張られ、どこかに連れて行かれそうになる。


 「?! やだ……っ、は、離せ 」

 焦って抵抗するが、力が出ない。


 「大人しくしてりゃあ、可愛いがってやるからよ 」

 いつもの自分なら、こんな男から逃げるなんて簡単なのに。悔しさに涙が滲む。


 「やだ、嫌だ……っ! 」

 男はずっと笑っていたが、しかし振り回した手が顔に当たると、「……ってーな、暴れんなよ 」と言って、真祝の頬を叩いた。目の前が衝撃でチカチカとする。


 「仕方ねぇな。ここでいいか 」

 舌打ちをした男は、そう言って、路地裏の更に裏道へ呆然とする真祝を引き込んだ。



 暗がりに真祝を押し込み、壁に押し付けると男は早速、真祝の身体をまさぐり始める。

 ぐらぐらと目眩がする。気持ちが、悪い。


 「騒がなきゃあ、兄ちゃんにも悦い思いさせてやるよ 」

 「や、めろ……」

 抗う手は纏められ、頭の上に押さえ付けられた。戒めを解こうとするけれど、力の入らない腕は取り返せない。
 込み上げる吐き気に、えづきそうになる。


 「男なんかご免だと思ってたけどよ、兄ちゃんは別だな 」

 釦を外す手が片手でもたついたのか、男の「くそっ 」と毒付く声の後、ビッ……と釦が飛んだ。


 「……っ?! 」

 「こりゃあ…… 」

 曝された肌を見て、男がゴクリと生唾を飲む。


 「……なぁ、男Ωってぇのは、皆こんなに綺麗なもんなのか? 」

 間抜けな質問に、知るかと心の中で叫んだ。首を振る真祝に男がまた笑う。

 「ハハ……、こりゃ本気マジでラッキーだったな 」


 言うや否や、男が平らな胸にむしゃぶりつく。 乳首に吸い付き、舐める、ぬるりとした感触に全身に寒気が走った。


 「やめ……、やめ、ろ。やめて……くれ
  」

 「そんなこと言って、兄ちゃんだって本当は欲しいんだろ? 」

 懇願する真祝にそう言うと、男が空いている手でボトムの上から真祝自身をぐっと掴んだ。発情期の反応を勘違いした男が嬉しそうな声を出す。


 「ほらよ、こんなに……? 」

 「う……ぐっ 」
 
 そこが限界だった。真祝は我慢していたものを全てぶちまけると激しく咳き込んだ。
 
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