無能は超能力世界で生き延びられますか?

遠山ハルヒ

文字の大きさ
10 / 15

10話 いざ地上へ

しおりを挟む
「メア様、お逃げくださいッ!」

 護衛団の制服をボロボロにした黒髪の少年が叫んだ。
 少年の目の前には黒スーツに身を包む1人の男が右手に細剣を持って迫っている。

「メア様ッ!お早くッ!もうすぐ陥落しますッ!」

 再び叫んだ少年が腰の鞘から西洋剣を抜き、震えながら構えた。
 困惑するメアの手を他の護衛団の兵士が力ずくで引く。
 1万の兵が一瞬で散った。
 広大な領地が一瞬で焼けた。
 1国の王女として、何も出来なかった。
 逃げる事しか出来なかった。
 メアは手を引く兵士に抵抗しながら、少年に向かって手を伸ばした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シュウ……ッ!!」

 勢いよく身体を起こした。
 どうやらベッドに横になっていたらしい。
 全身が熱い。
 装置は正常に機能したのだろうか。
 特別な感覚は特に無い。
 というかどれだけの時間、装置の中にいたのだろうか。
 空太にでも聞かなければ分からないな。
 誰かが来るまで待っているしかなさそうだ。
 それにしても、どうして今更シュウの事なんて……
 メアは再びベッドに倒れ、頭を抱えた。
 シュウとは長い付き合いである。
 メアの生まれ育った国では、王族であろうが貴族であろうが一般人と同じ学校に通う事が義務付けられていた。
 それはメアも例外ではなく、嫌々在学していた。
 彼との出会いは突然だった。
 自分を王女と知る者達は距離を取って近付きすらしなかったが、彼は違った。
 シュウはメアの目の前に立ち塞がり、更には「友達になろう」と言ってきたのだ。
 傍から見れば一般人が王族と友達など無礼であると思われるかもしれないが、友達など当然いなかったメアは心の底から喜んで承諾したものだ。
 それから彼と行動を共にする機会が増えた。
 シュウの夢はこの国で最も名誉ある職、王族護衛団の騎士になることだった。
 それには血が滲む様な努力が必要であったが、彼はなんとかその夢を叶え護衛団に加入した。
 シュウの護衛対象はメア。
 これはメアが推薦したからだ。
 彼の任務が始まって1ヶ月。
 事件が起きたのはすぐだった。
 シュウはきっと死んだだろう。
 敵は化け物だ。
 実力は折り紙付きだが相手との格が違う。
 他の護衛団の兵士に連れられアルタイルに辿り着いてからは空太に説明した通りだ。

「そうか……似ておるのか……」

 今やっと分かった。
 自分が奥の手を使ってまで空太を助けた理由が。
 長めの黒髪がメアの頭のどこかで2人を繋げていたのだ。
 だから、助けられなかったシュウの変わりに空太を助けた。
 我ながら馬鹿らしい。
 ただの自己満足ではないか。
 そのために1人の人間を巻き込んだのか。
 自分に嫌気がさす。
 メアが大きくため息を吐いたのとほとんど同じタイミングで部屋の扉が開かれた。
 タブレット端末片手に部屋に入ってきた五十嵐は目を覚ましたメアを見て顔をほころばせた。

「起きたか。経過は別の部屋からじゃが見ておったよ。成功じゃ。貴方はヤツの枷から解き放たれた」
「失敗など許すものか。で、何の実感も無いが本当に成功しておるのか?」
「無論じゃとも。ただ実戦にならなければ効果は感じられんじゃろうな」
「ほう?それで、次の質問じゃが、空太はどこじゃ」
「彼なら医務室で寝ておる。少しやり過ぎた……」

 そう言いながら五十嵐はタブレット端末をメアに手渡した。
 タブレット端末には空太と見覚えのあるコピーゴーレムが木刀をぶつけ合う動画が流れていた。
 なるほどな。
 メアは大方の予想が着いたのか、再びため息を吐いた。
 この男、空太で実験していたらしい。
 確かに空太の潜在能力は未知数で研究意欲が湧くというのも分からないわけではないが……
 メアはベッドから起き上がると、親切にも壁に掛けられていた着物を着た。

「空太の所に連れて行け。余達も次へ進まねばならぬ」
「いいじゃろう。もう行くのか、早いのう」
「ここに留まっておっても先へは進めんからな。じゃが感謝する。お主は大いに役に立ったぞ」
「それはそれは。メア王女にそう言って貰えるとは勿体ないお言葉じゃ」
「余の正体を知っておる癖にくだらぬ事を抜かしおる」
「滅相もない。ワシは不当な差別は断固として許せない主義じゃからな」

 五十嵐の発言にメアが微笑む。
 未だ実感出来ていない力にせよ情報にせよ、彼には感謝しても足りないだろう。
 一番の救いは自分の正体を空太に告げなかった事だが……
 五十嵐が部屋の扉に再び手を掛けた瞬間、扉が勢いよく開かれた。
 ドアノブに手を掛けていた五十嵐はもちろん吹き飛んだ。

「五十嵐ぃッ!」
「ほがっ!」

 実験台にされていた事に腹を立てていたのか、ドアを開いた主である空太は顔を真っ赤にしていた。
 全身木刀で打たれたのか痣だらけである。
 吹き飛ばされた五十嵐は倒れたまま震えた手で懐から小さなペットボトルに入れられた液体を取り出した。
 空太はそれを無言で奪い取ると、一気に飲み干した。
 すると、みるみる痣が消えていく。
 五十嵐が作成した特製ポーションである。
 効き目は過去に雷鬼が空太に与えた物の比ではない。
 空太は飲み終えたペットボトルを投げ捨て、目を覚ましたメアを見た。
 どこかホッとしたような表情を浮かべた空太はメアのベッドに座り込んだ。

「良かった、何事も無くて」
「ふんっ、誰の心配をしておるのじゃ。人の心配をするよりも自分の心配をしたらどうじゃ、間抜け」
「心配してやったのになんだよ。で、装置の成果の程は?」
「全くじゃ。実戦でなければ実感出来ぬと言う」

 何故か空太に対してツンとした態度を取ってしまった。
 これもシュウに対しての対応と全く同じだ。
 自然と態度まで揃えてしまう程2人を重ねている。
 メアは空太から視線を外した。
 不自然な行動に、空太の頭上に?マークが浮かび上がる。
 空太が何か言おうとしたと同時に、いつの間にか起き上がっていた五十嵐が口を挟んだ。

「とりあえず、じゃ。洞窟に残るにせよ地上に出るにせよ、装備が必要じゃろう。ワシの製作した物で良ければ好きに見繕うといい。どれも自分では扱えない品じゃからな」
「ほう?随分と良い待遇じゃのう?」
「いや、これでは足りぬ程莫大なデータが取れた。これは些細な返礼とでも思ってくれ」
「だろうな……」

 余程キツかったのか、空太の表情は曇っている。
 そんな空太を他所に五十嵐はフラフラと部屋の外へ出て行く。
 メアは空太の背中を勢いよく叩き、着いていくように催促した。
 とても嫌そうな顔をした空太はメアを睨みつけたが、メアの回し蹴りが太ももに突き刺さり、半泣きで五十嵐の後を追った。
 メアはうっすらと笑いながら後ろを歩く。
 目的は復讐だというのに、今この時間を楽しんでいる自分がいる。
 そう感じてしまった自分はきっとどこかで限界が来るだろう。
 メアは笑顔の裏で唇を強く噛んだ。



 五十嵐に案内されたのは薄暗い倉庫のような部屋だった。
 この地下空間はどれだけ広いのだろうか。
 客室、実験室、医務室、シュミレーションルームに武器庫。
 とても階段の先にあるとは思えない広さだ。
 五十嵐が壁を叩くと倉庫内に明かりが灯った。
 と言っても薄暗い事に変わりないが。
 倉庫内は視界いっぱいに様々な武器や防具が並んでいた。
 それこそ剣や盾、銃なんかもある。
 五十嵐曰くどれも自作らしく、1つ1つに特殊な能力が備わっているそうだ。
 時間だけは有り余っていた五十嵐の暇潰しの1つだとか。
 空太は興味深そうに武器を見て回っているが、メアは下らなさそうに腕を組んでいた。
 それを見た五十嵐は武器庫の奥の方へ歩いていった。
 まるで子供のようにいくつもの武器を手に取って顔を明るくする空太に、メアも少し微笑む。

「空太、お主にも可愛いところがあるんじゃな」
「ち、違うぞ!これは男のロマンってやつだよ」
「余には理解出来んな」
「そりゃそうだろうな。とりあえず俺は雷切を回収しないと」

 忘れかけていたが空太の愛刀雷切は落下地点の瓦礫の下だ。
 手に馴染んだ愛刀が1番使いやすいだろう。
 それに、下手に装備を増やして動けなくなっては元も子もない。
 急所を守れる程度の金属防具は欲しい所だが……
 メアもいつまでも空太サイズのブカブカ着物を着せるわけにはいかない。
 最もメアが動きやすい装備かつもっと女の子らしい服装にした方が彼女にとっても良いだろう。
 と言っても、五十嵐の趣味全開の倉庫に都合良く女性服があるとは思えないが……

「あるに決まってるじゃろ。ワシを誰だと思っておる」
「おわっ!ビックリした!どこから出てきた!」
「少し奥の作業場にいたんじゃよ。お前とメア王女に必要な物を探しにな」

 突然現れてそう言った五十嵐は銀色に輝くガントレットと黒基調のゴスロリドレスを掲げた。
 丸みを帯びた銀色のガントレットに空太の目が輝く。
 対照的に全てを察したメアが心底嫌そうな顔をする。
 五十嵐はガントレットを空太に、ドレスをメアに差し出した。
 空太が喜んでそれを受け取る。
 が、受け取ったはずのガントレットが空太の手から滑り落ちた。
 地面に落下したガントレットはほとんど音を立てずに、そのままどこかへ滑っていく。
 それを追いかけ、再び手から滑り落とす空太を見て五十嵐がニヤリと笑う。

「そのガントレットはかなり特殊でな。ワシの技術で摩擦を限りなくゼロに近づけておる。お前の受け流しを得意とする戦い方と相性が良いと思ってな。ワシの渾身の一作じゃ、持って行け」
「だからこんなに滑るのか……ありがとう五十嵐。癖はありそうだけど使いこなしてみせるよ」

 なんとか掴めたガントレットを苦戦しながらも腕に装備する。
 ドヤ顔でメアに披露する空太。
 だが、すぐに硬直した。
 なぜなら、メアの姿がとんでもない物になっていたからだ。

「あ、あまりまじまじと見るな……」

 空太はいつの間にか着替えていたメアのドレス姿に目を奪われていた。
 ドレスの黒とメアの銀髪との相性が抜群に良く、まるで絵本から出てきたかのような可愛らしさを演出している。
 恐らくそういう性癖を持っているであろう五十嵐も鼻息を荒くして親指を立てていた。

「似合っておるのう!そのドレスは……いずれその力が分かるはずじゃ。今はただのドレスじゃな。少し身体が動きやすくなるような加工はしておるがな」
「五十嵐貴様、余は着せ替え人形ではないぞ!」
「これしか女性物の服が無いんじゃ、勘弁してくれ」
「余の復讐が果たされたら次は貴様じゃからな……」

 五十嵐の発言に少し含みがあったが、似合っているのは確かだ。
 これには空太も大満足。
 空太も無言で親指を立てた。
 それからしばらくは各々自分の必要な装備を集めて回った。
 空太は急所を守る最低限の防具を。
 メアはもしもの為に武器を。
 あらかた装備を揃えた2人を五十嵐は次の部屋へ案内した。

「ここは?」
「随分と近未来的な空間じゃのう」
「ここは転移室、とでも言っておこう。お前達の目的は地上にあるんじゃろう?」

 そ、そんな物が!?
 まさかこの世界に魔法のような技術があるとは。
 空太の目が再び輝く。
 所詮は年頃の男の子である。
 一際青く光る円の中に入るように催促された2人は促されるまま円の中に入った。
 すると、足元の光が更に強くなる。
 恐らく準備シークエンスに入ったのだろう。
 五十嵐がメアに3本の注射器を差し出した。

「メア王女、これを貴方に。貴方に装置で施した物と同じ効果を得られる薬が中に入っておる。この先集う仲間に与えてやってくれ」
「貴様……やはり余は被検体であったか」
「まあそうじゃな。じゃが貴方のおかげでこの薬は完成した。感謝しておる」

 メアは少しむすっとした顔で注射器を受け取った。
 そして次に五十嵐は空太を見た。
 どこか顔を見ていない五十嵐の視線に空太が困惑する。
 が、その意味がやっと分かった。

「あ、雷切ッ!」
「はぁ……じゃが、取りに行く暇は無いぞ」
「そんな!俺の武器どうするんだよ!」
「お前の刀なら……ここに」

 空太は五十嵐が別の刀を用意してくれているのかと期待した。
 だが、五十嵐は親指で自分の胸をトントンと叩いた。
 空太の頭の中に?マークが浮かぶ。
 この男、この期に及んで「お前の武器は心の刃だ!」だなんて言うつもりか?
 殴ってやろうか。

「それもすぐに分かる。お前の武器はしっかりそこにある」
「は……?」
「では時間だ。2人共、自分を見失わない様に。己が道を踏み外すな。ではいってらっしゃい」

 五十嵐はそう言って手元のタブレットに触れた。
 同時に視界いっぱいに光が溢れた。
 どうやら転移が開始したらしい。
 メアは冷静に、だが空太は叫んでいた。

「理解出来なぁぁぁいッ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...