記憶の穴

春薇-Harura-

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転機

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「へぇ、よかったね!お隣さんの女の子かぁ…」

「アレクの初めての友達だね」

2人が帰って来て夕食を共にしている時、今日あった出来事を話した。
僕がこの話をすると、スティアは自分の事の様に喜んでくれて、マークはいつもより優しく微笑んでいた。

僕自身も、今思い出しても自然と笑顔が零れるくらいに嬉しい出来事だった。

僕の心の中はリゼナの事でいっぱいになった。

また会えるかな、また話せるかな、また遊べるかな
また…一緒に歌が唄えるかな。

「…あら?まさかアレク…」

スティアは片手を自分の口元に当てそう呟く。
何?と軽く首を傾げ問うと…。

「そのリゼナちゃんに…恋しちゃったの?」

「恋…?」

「簡単に言えばリゼナちゃんを好き、って事だよ」

"恋"という言葉に更に首を傾げた僕に、マークが優しく微笑みながらそう答える。

「僕は…スティアとマークが好きだよ?」

「あらあら…」

ごく普通に僕がそう答えるとスティアはクスクス、と手を口元に当てたまま笑った。

行く宛もなく、記憶も無い僕を優しく抱き寄せる様に引き取ってくれたこの2人。
当然感謝もしているし僕はこの2人が好きだ。
なのに…どうして笑うんだろ?

「違うわよ…家族としての好きじゃなくて、女の子として好きって事。守りたいとかずっと傍にいたい…とかね」

まだ少し笑いながらスティアは説明してくれる。
僕は少し俯き考えてみる。
でもやっぱり…

「僕はスティアとマークとずっと傍にいたい、大きくなったら2人を守りたいな…」

まだ出会って少しのリゼナと、引き取ってくれたこの2人。
僕にとっては2人の存在の方が大きかった。

「それは嬉しい事だよ…でも、アレクの人生のパートナーも見つけないとね」

「人生のパートナー…?」

「あぁ、例を言えば俺とスティア。お互い好きになって、交際をして結婚をする…そして生涯を共にするんだ」

生涯、マークは偶に難しい言葉を使う。
でも今のは少し理解が出来た気がする。

「…死ぬまで、ずっと一緒って事?」

「まぁ、そう言う事ね!」

僕の問にスティアはにっこりと笑み答える。

「死ぬ、まで…」

少し考えた瞬間突然激しい頭痛に襲われた。


「っ…!」




『死ぬんじゃない。』




前に聞いた声と同じ声がする。




『殺すんだ。』




「あ、ぁ…ッ、ああぁあっ!!」


僕は叫び、椅子から転げ落ち地面へ蹲った。

「アレク!!」

マークは僕の近くへ来て、スティアはマークとアイコンタクトをすると走って階段を駆け上って行った。


「嫌だ、いや、だッ…!僕は、何もしてない…ッ!」


目から涙がボロボロと溢れ出し髪を両手で強く掴むと床へ頭を叩き付け続けた。

「アレク!落ち着くんだ!」


『「黙れッ!!」』


僕に触れた手を振り払い、そう叫んだ声は二重に聞こえた。
はっと気が付くとその手はマークの手だった。
驚愕の表情を浮かべるマーク…

「ぁ、あ…っ…ごめ、なさっ…」

何て酷い言葉を吐いたんだろう。
謝ろうとした瞬間、僕の意識は途絶えた。
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みんなの感想(1件)

2016.10.30 ユーザー名の登録がありません

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2016.10.30 春薇-Harura-

感想ありがとうございます!( ´ ` )ぽわ*

わわ、そんな事言っていただけるなんて嬉しいです!ありがとうございました(*´ー`*)

解除

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