盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹

文字の大きさ
4 / 84
ローナ 10歳編

ローナとセシル

しおりを挟む


 セシル・フント。


 この国で最も一般的な深い茶色のスポーツマンらしいさっぱりとした髪型に、煮詰めた赤ワインをアーモンド型に固めたような瞳を持つ、眉目秀麗なフント侯爵子息である。

 王国陸軍の近衛部隊を統括する王室師団団長を務める侯爵位の父親と、ローナの母と同郷の貴族の生まれである母親との間に生まれた第一子であり、一人息子。


 そして、『シンデレラの恋 ~真実の愛を求めて~』に登場する攻略対象の一人である。


 細マッチョなクールイケメンで、攻略がとても難しいキャラクターの一人。


「ローナ、その……」


 ーー今は、違うけれど。


 さらにセシルはかのゲームで、彼以外のキャラクターのルートにおいても、二周目からプレイできるハッピーエンドにてかなり重要な役割を果たすキャラクターでもある。
 なぜか。


「俺、本当に取り返しのつかない事をーー俺は、その、ローナに……俺の剣術を見てもらいたかったから、だから……まさか、こんな……」
「そうね、誰もが予想外のことだったわ」


 ローナは何も、生まれた時から性悪だったわけじゃない。ゲームにて王太子曰く、幼い頃は見た目の通り、天使のような少女だったとか。


 そんなローナがゲーム登場時に性格がねじ曲がってしまっていたのは、元々の素質もあるかもしれないが、数々の出来事が起因している。

 そして今、ローナの性格が歪む一因となったその一つが、まさに目の前まで迫っている。



「ーー俺、何でもする!ローナの為なら、どんな事だってする!一生かけて、この罪を償うから……」



 ーーはい、きました。コレです!!


 幼いローナ少女はーー私の中に薄らと残る事実記憶を交えた考察でしかないがーー恐らく、セシルの事を異性として見ていて、それなりに好意を寄せていた。


 そんな相手からの、絶望の淵に立たされた時に向けられたこのセリフ。

 ゲームのローナはこの言葉に対して、こう返す。


 『なら、私の下僕になって』ーーと。


 ゲームにてメインではないローナとの過去がこんなにも語られたのは、未来ゲームのストーリーに大きな影響を与えたからだ。


 この約束が原因で言いなりになったセシルを使って、ローナはヒロインを徹底的に貶める。

 セシルは騎士道精神を重んじる家に生まれた根っからの騎士。そんな彼にとって、同い年の少女を貶めるような行為は苦痛でしかなかった。


 ヒロインはそんな彼に気が付き、心に寄り添おうと働きかける。

 セシルはそんな優しいヒロインに惹かれるのだが、彼と結ばれるには邪魔な存在がいる。


 その邪魔な存在は、物語の最後に訪れる卒業パーティーのイベントにて裁かれる。


 邪魔者は当然ーー私、ローナ・リーヴェである。


「……ローナ?」



 絶っっっっっっっっ対、嫌!!!



 ローナの断罪劇には成功パターンと失敗パターンがあるけど、成功してしまったら、ローナは僻地の病院に飛ばされる。


 若い身空で僻地の病院に閉じ込められるのだって嫌だけど、それよりも、何よりも!



 ーー私の最推しが、ぽっと出のヒロインにとられるのが嫌!



「ろ、ローナ?」


 反応が無い私を不思議に思ったのか、セシルが私の右手をつんと指でつついた。
 私はすかさずその指を追って、セシルの手を両手で包み込む。


「え、えっと……」
「何でもするなんて、どんな事だってするなんて、そんな悲しいこと言わないで。セシル、それはなんだか、あなた自身を大切にしていないもの」


 ジワジワとセシルの手が熱を持ちはじめた。
 私の手だって温かい筈だけど、それを上回るほどに、セシルの手が熱い。


「それでも罪を償いたいと言うのなら……どうか、私のそばにいて。見えない私の、"目"になって」
「! ローナの、そばに……」


 ぎゅっと力強く手を握り返される。
 少し痛いくらいだけど、嫌じゃない。むしろ、心の底から喜びが湧き上がってくる。


 セシル・フントという登場人物は私にとって『シンデレラの恋 ~真実の愛を求めて~』の中でーーいや、人生の中で最も好きになったキャラクターだったのだ。


 今の私は、精神年齢がセシルよりも歳上だからと恋をするのに躊躇があり、まだ画面越しに向ける"ファン的好意"の域を出ていないのにーーこんな中途半端な、恋心と呼ぶには烏滸がましいものを貴方に向けて、私に縛り付けようとしている。


 貴方をこの上なく好きだと恋をするから。

 あなたに好きになってもらえるように、努力するから。


「わかった。俺は、ずっとローナのそばにいる。君の目になる……なってみせる」



 ーーああ。あなたはなんて、素敵な人なんだろう。

 ずるい私を、どうか許して。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

悪役王女に転生したのでお兄様達に媚を売る…のはちょっと無理そうなので聖女候補になれるよう頑張ります!

下菊みこと
恋愛
悪役王女が頑張ってみるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...