盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹

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ローナ 10歳編

君は俺のたからもの 後編 ーセシル視点ー

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「それでも罪を償いたいと言うのなら……どうか、私のそばにいて。見えない私の、"目"になって」


 悪夢から飛び起きて真っ先にローナの部屋へ向かい、医者からの宣告を受けた彼女に差し出したのは、正真正銘俺の命だった。

 失明した彼女への償いとなるなら死すら厭わないと本気で思っていたのに、ローナは俺が側にいることを望んだ。


 まさか、そんな。
 都合のいい、反吐が出る夢でも見ているのだろうか。

 永遠に治せない傷をつけたくせに、まるで彼女が俺を求めているかのような言葉を向けてくれる夢を見ているだなんて。

 自分は決して性格のいい人間ではないと思ってはいたが、こんなにもクソ野郎だったのだろうか。


 最低だ。最悪な野郎だ。


 ……でもそれじゃあ、この手に感じる本物の温かさはなんだろう。

 雪のように白い小さな手が、無骨でマメだらけの手を握りしめているのは何だというのだ。


 前を見ると、この世で一番美しいと思う女の子が決死の覚悟を滲ませて、見えなくなってしまったはずの蜂蜜色の瞳で俺をじっと見据えていた。

 彼女の強い想いが、俺の奥の奥に染み渡っていく。


 ーー夢でもなんでもない、本当のローナが、そばにいることを望んでいる?


 そんな筈はないと、どこか奥深くにいる俺が叫んだ。

 だって彼女は王太子殿下の確固たる婚約者で、彼女もまたそれを遺憾無く受け入れていた。

 俺たちは友人同士としてしか会うことは許されず、その関係もリミットのあるものだ。


 でも……そんな奥深くにいる俺よりも、目の前にいるローナの方が顕著に真実を伝えている。


 彼女が求めているのはーー俺なんだ。


「わかった。俺は、ずっとローナのそばにいる。君の目になる……なってみせる」


 俺がそう言って握り返すと、ローナは嬉しそうに微笑んで頷いた。


 ああ、どうしたことだろう。

 ローナの手を取ってしまった。

 ずっとずっと我慢していた彼女への想いが、無理矢理蓋をしていたところから洪水のように溢れてくる。


 俺の"たからもの"だった君は、思い出と作られた関係の中から飛び出して、現実の俺の手を取ってしまった。

 "たからもの"は枠組みにはめられた物ではなくなり、人となった。



 君が望む通り、俺は君のそばにいよう。

 たとえ君が俺を嫌いになろうとも、前言を撤回しようとしたとしても、絶対に聞いてやれない。


 先に俺の手を取ったのは君なのだ。
 もう二度と、絶対に、君から離れるものか。


 好き、好きだ。
 愛してる。


 どうしようもなくーー狂おしいほど、君が好き。


 どうしようもない俺を、受け入れて。


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