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第1章:夏休み
第13話 兄貴との二人暮らし。
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そろそろ時間だと思い、日没の一時間前には、片づけを始めていた。八月下旬だったら、午後六時過ぎには日が沈むだろう。芽衣が持ってきたリュックの中に、宿題・筆記用具等、芽衣の私物を詰め込んでいく。幸い、空いたスペースに、自分のノートパソコンと充電器を入れることができた。
入れ替わった先でも、これさえあれば小説は書けそうだ。バイトがない分、いままで以上に、小説を集中して書けるかもしれない。これは、いろんな意味で好機だ。このまま戻らなかったら、芽衣として小学校へ行ける。そしたら、JSの色香が、そこら中に満ち溢れている。ロリコンにとっては、この上ない空間だ。
午後七時。
日が完全に暮れたあと、ノックする音が聞こえる。芽衣が扉を開けると、そこに立っていた兄貴が「遅れてすまん」と一言謝った。俺にとっても、芽衣にとっても、約三日ぶりの再会だった。
「数日間ありがとう。少ないけど、これ……」
そう言って兄貴は、何枚かの紙幣を強引に、芽衣の手へ握らせる。芽衣って言っても、俺の身体だから、当然そっちに手渡すわな。
「バイトだったら、そんなに給料も多くないだろ。預かってもらったお礼」
「いいって。そんなの」
金を返そうと思って、芽衣の背後から顔を出した俺は、兄貴に向かって言ってやった。同情されるほど、そんなには困窮してねえ。だが兄貴は、当然の反応を見せた。「なんでお前が言うんだよ」
そりゃそうだ。姿は自分の娘だからな。すると、芽衣が口を開く。
「わた……俺もそう思う。このお金は返します。これから大変だろうし、わた……芽衣のために使ってあげて」
よくできた娘さんじゃないか。本当の本当に兄貴の娘か? まあ、ちょっと「わたわた」言っているのが気になるが、中身が自分の娘だとは思うまい。
「そ、そうか……悪いな」
兄貴は、返された紙幣を見つめながら、疲れたように微笑みつつ、俺のほうへ視線を向けた。そういえば、さっきから手に持っているのはなんだろう。そう疑問に思うのと同時に、兄貴はその物体を差し出してきた。
リボンが結ばれた、不織布の袋。それなりの大きさで、触った感じ、モコモコしたものが入っている。こんな可愛くラッピングしてあるなんて、なんかの記念日か?
「いろいろ……バタバタしてたから。もうとっくに過ぎてるけど。これ、誕生日プレゼント」
なるほど、もので釣る作戦か。荒んだ心を持った俺は、すぐにそういう考えが出てきてしまう。兄貴だって、単純に「誕生日だから」という理由だけで、プレゼントを買って来たわけではないはずだ。
お詫びも兼ねているのか。俺が言うことではないが、異性の子供に慣れていない、小賢しい男親の考えそうなことだった。プレゼントの中身も果たして……。リボンを解こうとして、芽衣の慌てる声が耳に届いた。
「いいよ。気にしなくて」
「なんでお前が言うんだよ」
「ご、ごめんなさい」
兄貴が二度目のツッコミを入れる。さて、どう思っているんだろうな、この「お前が言うんかい」の怒涛の天丼。
俺が芽衣だったら、確かに、気遣って「気にしなくてもいい」と言うかも……いや、言うかな? とりあえず俺は、素直にお礼を言うことにした。「ありがとう、パパっ♪」
俺が繰り出した渾身の笑顔に、兄貴は嬉しそうに口元を綻ばせる。……きしょ。
そういえば、俺も先月、誕生日だったな、ちょうど三十歳の。ありがたく、受け取っておくことにしよう。俺でも使えるものだったらいいが……いまどきの小学五年生は、いったい、なにに興味があるのかね?
「じゃあ、またな。仕事が忙しくなったら預けに来るわ」
「さ、さよなら」
芽衣(身体は俺)と兄貴が、挨拶を交わした。俺(身体は芽衣)は兄貴に手を引かれ、アパートを離れていく。振り返れば、まだ俺の姿がアパートの前で、手を振って見送っていた。それを見て、兄貴がぽつりと呟く。
「……なんだ、アイツ?」
まあ、気にすんな。仮に入れ替わっていなかったとしても、芽衣と離れるのが悲しくて、多少なりとも挙動不審くらいにはなるさ。
午後七時半。
俺たち二人は、家へと到着した。懐かしい、ここが一家の愛の巣か。兄貴と義姉さん、そして芽衣の三人暮らしには、少しばかり広そうな一軒家だ。家に帰って早々、俺は切り出す。
「あ、明日もお、叔父さん家に行ってもいい?」
「どうした? すっかりアイツに懐いちゃって……」
いや。そういうわけではないが。芽衣のことが気になるだけだと言うわけにもいかない。なにか変に気を遣わせてしまったのか、兄貴は神妙な面持ちで口籠った。
「ごめんな。なにもしてあげられなくて。お前が辛いときに、手を差し伸べてあげられなくて」兄貴は、俺の前で膝立ちになる。目の前の娘と、真剣に向き合おうとしているのが、よく伝わった。「俺じゃあ、満足に面倒を見てあげられないかもしれないけど、これからは、なんでも話してほしい」
「あ、うん……」それは本当の娘に直接、伝えてほしい。まあ、俺を本当の娘に思っているんだろうけど。「それでね……」
俺が口を開きかけると、兄貴はそれを遮って言った。
「お腹空いただろ? 今日はパパが作るから。その間にお風呂、入っちゃいなさい。……話はそれからだ。パパも、大事な話があるから、あとでゆっくり話そう。な?」
入れ替わった先でも、これさえあれば小説は書けそうだ。バイトがない分、いままで以上に、小説を集中して書けるかもしれない。これは、いろんな意味で好機だ。このまま戻らなかったら、芽衣として小学校へ行ける。そしたら、JSの色香が、そこら中に満ち溢れている。ロリコンにとっては、この上ない空間だ。
午後七時。
日が完全に暮れたあと、ノックする音が聞こえる。芽衣が扉を開けると、そこに立っていた兄貴が「遅れてすまん」と一言謝った。俺にとっても、芽衣にとっても、約三日ぶりの再会だった。
「数日間ありがとう。少ないけど、これ……」
そう言って兄貴は、何枚かの紙幣を強引に、芽衣の手へ握らせる。芽衣って言っても、俺の身体だから、当然そっちに手渡すわな。
「バイトだったら、そんなに給料も多くないだろ。預かってもらったお礼」
「いいって。そんなの」
金を返そうと思って、芽衣の背後から顔を出した俺は、兄貴に向かって言ってやった。同情されるほど、そんなには困窮してねえ。だが兄貴は、当然の反応を見せた。「なんでお前が言うんだよ」
そりゃそうだ。姿は自分の娘だからな。すると、芽衣が口を開く。
「わた……俺もそう思う。このお金は返します。これから大変だろうし、わた……芽衣のために使ってあげて」
よくできた娘さんじゃないか。本当の本当に兄貴の娘か? まあ、ちょっと「わたわた」言っているのが気になるが、中身が自分の娘だとは思うまい。
「そ、そうか……悪いな」
兄貴は、返された紙幣を見つめながら、疲れたように微笑みつつ、俺のほうへ視線を向けた。そういえば、さっきから手に持っているのはなんだろう。そう疑問に思うのと同時に、兄貴はその物体を差し出してきた。
リボンが結ばれた、不織布の袋。それなりの大きさで、触った感じ、モコモコしたものが入っている。こんな可愛くラッピングしてあるなんて、なんかの記念日か?
「いろいろ……バタバタしてたから。もうとっくに過ぎてるけど。これ、誕生日プレゼント」
なるほど、もので釣る作戦か。荒んだ心を持った俺は、すぐにそういう考えが出てきてしまう。兄貴だって、単純に「誕生日だから」という理由だけで、プレゼントを買って来たわけではないはずだ。
お詫びも兼ねているのか。俺が言うことではないが、異性の子供に慣れていない、小賢しい男親の考えそうなことだった。プレゼントの中身も果たして……。リボンを解こうとして、芽衣の慌てる声が耳に届いた。
「いいよ。気にしなくて」
「なんでお前が言うんだよ」
「ご、ごめんなさい」
兄貴が二度目のツッコミを入れる。さて、どう思っているんだろうな、この「お前が言うんかい」の怒涛の天丼。
俺が芽衣だったら、確かに、気遣って「気にしなくてもいい」と言うかも……いや、言うかな? とりあえず俺は、素直にお礼を言うことにした。「ありがとう、パパっ♪」
俺が繰り出した渾身の笑顔に、兄貴は嬉しそうに口元を綻ばせる。……きしょ。
そういえば、俺も先月、誕生日だったな、ちょうど三十歳の。ありがたく、受け取っておくことにしよう。俺でも使えるものだったらいいが……いまどきの小学五年生は、いったい、なにに興味があるのかね?
「じゃあ、またな。仕事が忙しくなったら預けに来るわ」
「さ、さよなら」
芽衣(身体は俺)と兄貴が、挨拶を交わした。俺(身体は芽衣)は兄貴に手を引かれ、アパートを離れていく。振り返れば、まだ俺の姿がアパートの前で、手を振って見送っていた。それを見て、兄貴がぽつりと呟く。
「……なんだ、アイツ?」
まあ、気にすんな。仮に入れ替わっていなかったとしても、芽衣と離れるのが悲しくて、多少なりとも挙動不審くらいにはなるさ。
午後七時半。
俺たち二人は、家へと到着した。懐かしい、ここが一家の愛の巣か。兄貴と義姉さん、そして芽衣の三人暮らしには、少しばかり広そうな一軒家だ。家に帰って早々、俺は切り出す。
「あ、明日もお、叔父さん家に行ってもいい?」
「どうした? すっかりアイツに懐いちゃって……」
いや。そういうわけではないが。芽衣のことが気になるだけだと言うわけにもいかない。なにか変に気を遣わせてしまったのか、兄貴は神妙な面持ちで口籠った。
「ごめんな。なにもしてあげられなくて。お前が辛いときに、手を差し伸べてあげられなくて」兄貴は、俺の前で膝立ちになる。目の前の娘と、真剣に向き合おうとしているのが、よく伝わった。「俺じゃあ、満足に面倒を見てあげられないかもしれないけど、これからは、なんでも話してほしい」
「あ、うん……」それは本当の娘に直接、伝えてほしい。まあ、俺を本当の娘に思っているんだろうけど。「それでね……」
俺が口を開きかけると、兄貴はそれを遮って言った。
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