あんなこと、こんなこと

近江こうへい

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あれからの、あんなこと、こんなこと

14.みんなで、あんなこと、こんなこと ②

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 とはいえ。そうと分かれば、かつて双方からお悩み相談を受けた身としては一肌脱がねばなるまい。雨でバイトが中止になったのはたまたまでも、有川だってそろそろ二人にやらせるつもりで井田を呼んだんだろうし。

「とりあえずさー、井田が来る前に準備しとけば?」
「は?」
「だからー。宇山くんが初めて井田くんに挿れられるとこ見たいですー」
「はあっ? ちょ、今の流れでなんでそうなんの!」

 真相を宇山に教えられないのはもどかしいけど、井田の努力を無駄にしないために、もう少しだけ、あと三十分くらいだけ待ってほしい。
 俺はペットボトルに口をつけながら茶化すように言って、あの最初の時と同じく、宇山の顔色を見て「いける」と踏む。そうだよな。やりたくても素直にやりたいとか言えねえ時ってあるよな。分かる分かる。
 そもそも、二人がぎくしゃくしてたら楽しいアナニーの危機だし、困るのは俺だ! まあ、あとは単純な興味として、他の奴が尻に挿れられるとこを実際に見てみたい。しかもそれが初めてだと思うと、自分の時の緊張とか期待とかを思い出して胸が高鳴る。

「だって、一回やっとけばよかったかも、とか思ってんだろ? じゃあ見といてやるから今日やっちゃえよ。絶対ないけど、もしがっかりされたら慰めてやるし」
「……七瀬ってさー、そういうとこ意外と井田と似てるよね」

 何だそりゃ。けなされてる気しかしない。

「まあ、準備までされてあいつが挿れないとか絶対ないから」
「ええー、有川まで? んー、うー……、マジかー」

 援護射撃されて宇山が有川をちらりと見る。いろいろ想像したのか、服の上からでも分かるくらいちんこが勃ち上がってきた。分かりやすい。ほんとこいつ井田が大好きだな。

「……じゃあ、シャワー借りる」
「おー」

 それ自体はいつものやり取りなのに、聞いたらなんだか急に力が抜けた。のろのろとペットボトルに蓋をしてローテーブルに寄りかかって息をつく。と、サイドワゴンから浣腸とローションを取り出して風呂場に行こうとしてた宇山が、思いついたように俺を振り返った。

「そうだ七瀬、何かおもちゃ貸してー。ちょっと慣らしときたい」
「ん?」

 んん?

「え、ちょっと何その顔。隠せてると思ってる方がびっくりなんだけど。あのプラグってお前のお下がりなんじゃねーの?」

 あきれ顔の宇山に、有川は笑いをこらえながらタオルを渡している。
 くそ、つまり二人ともあれの出どころを知ってたってことか。いら立ちまぎれに、俺はちょっと大きめのリアル成型ディルドを宇山に渡してやった。アナルプラグより一気にでかくなるけど、そもそもそれが入んなきゃ井田のちんこなんて入るわけねえんだかんな!



 ──さて、俺はといえば。宇山の準備と井田の到着を待つ間、なぜか有川の股の間にいる。ベッドにもたれて座った有川は俺を後ろから抱っこして、何が楽しいのか、頭や耳の後ろ、首筋に唇を押し当ててくる。

「あれ、宇山にやってもよかったわけ?」
「あー、まあ、どうせもう使わねえし」
「……そっか」

 もし有川が俺に飽きても多分おもちゃには戻れない気がする。その時が来たら、俺はどうしたらいいんだろ。
 だぼだぼのスウェットの下から手を入れた有川に、乳首を軽くつままれて指の腹でこすられる。最近の有川は俺の乳首もよく触ってくるけど、どこでつながってんのかその刺激がちんこまで届いて気持ちいい。ていうか、今こんなことされるのはまずい。

「あー……、と。そういえばお前ってさあ、兄貴って感じだよな」
「んん? 急にどした。つかこの状況で兄貴っぽいとかどんなAVだよ」
「知るかよ。じゃなくて、前から思ってたけど結構世話焼きだなってこと」
「あー……、そういう。どうかな。まあ、弟はいるけど」
「マジか。何コ下?」
「三コ。くっそ生意気でかわいくねえ」
「ふーん」

 いやいやいや、つかなんで俺もおとなしく乳首とかいじられてんだ。有川は耳や首筋にキスしながら、やってることにそぐわない普通の口調で雑談を続けてるし。気をそらしたくて振った話題も役に立ってくれない。

「お前って末っ子なんだっけ。上ってどっち?」
「姉が一人。俺が小学生の時に結婚して出てったけど」
「へえ、年離れてんだ。そんな感じする」

 下のスウェットの中は何もはいてない。体育座りしてると、サルエルっぽいデザインのせいでできた空洞の中で、勃ち上がったちんこの先端だけが布にこすれてやばい。
 え、つかこれ、もしかして彼シャツってやつじゃね? いや、スウェットだけど。うわマジか、あれ都市伝説か何かだと思ってた。部屋着貸してくれるとか、気が利いてるんじゃなくて冷静に考えたらただのプレイじゃん。
 つか、耳元でくすくす笑われるのがくすぐったい。

「何だよ」
「いや、すげーな。ドキドキしてる」
「うっせ」
「……俺の服着てる七瀬もかわいい」

 有川の空気が変わったのが分かった。耳たぶに触れた唇で優しく甘くささやかれる。
 くそ。意識したらやばい。俺ほんと有川の低音ボイスに弱いよな。かわいいとか、俺みたいな普通の男相手におかしいって思いながらも、いつも胸の辺りがじわじわとうずく。井田が来たら玄関開けなきゃいけないし、今はまだ始めたら駄目なのに。
 後ろからパーカーの裾をめくって脱がせようとする有川の手を、つかんで阻止する。節くれ立った長い指だ。
 ……いつも俺の中を撫でてるのってどの指なんだろ。最初は人さし指とか? いや、もっと長いから中指か。そのうちだんだん指増やされてこのくらいになるから、多分この三本で……。

「七瀬、よだれ出てる」
「っ!?」

 気が付いたら有川の人さし指から薬指を握り込んで、感触を確かめるように何度も握り直していた。慌てて手を離して口元をぬぐう。

「っくく。嘘」
「はあっ? もーっ、何だよ」
「なあ七瀬、それって無意識? 今でも棒状のもんとか気になんの?」

 有川は指を絡めて俺とつなぎ直した手で腰を抱き寄せながら、後ろからちんこを押し付けてきた。服の上からでも分かる硬さに、じらされた身体が熱くなる。

「……知らね」



 そんな微妙な空気のまま、どうでもいい話をしながら時間をつぶしていると、準備ができた宇山がやっと風呂から出てきた。なぜかちょっと内股で、さっきまで着てたロングカーデを裸に羽織っただけの謎の格好だ。
 え。つかなんでそんなことになってんだ。
 前合わせの隙間から顔を出してがっつり上を向いてるちんこを、思わず二度見した。俺の身体をまさぐってた有川の手も完全に止まってる。

「ちょ、それ! お前それ通報されるやつ!」
「うっさいな! だってこれで服とか着らんないじゃん」
「いいけど、せめてちんこ隠せよ」

 宇山は真っ赤になりながらボタンのないカーデの前をかき合わせた。ローションボトルを持った手で後ろの方も押さえながら小股の横歩きで移動すると、変な姿勢でサイドワゴンからゴムを取り出す。
 あ、そっか。尻にさっき渡したディルドが入ってんのか。つか、マジであれ挿れたのか。だとしたら、まあ。座るのは厳しいよな。
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