あんなこと、こんなこと

近江こうへい

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あれからの、あんなこと、こんなこと

15.みんなで、あんなこと、こんなこと ③

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「あー……、とりあえず、こっちで寝とけば?」

 俺に言われるままに宇山がよろよろとベッドに横になったところで、ちょうどインターホンが鳴った。俺を残して有川が鍵を開けに行くと、宇山は軽く丸めた身体をロングカーデの中に少しでも隠そうとし始める。そんな往生際の悪さにちょっと気を取られてると、玄関から二人の話し声が聞こえた次の瞬間には、珍しく慌てた様子の井田が有川を押しのけて駆け込んできた。

「え、ちょ、何これ」

 宇山に目がくぎ付けになった井田が、独り言のようにつぶやいた後、脱力しながら半目で俺をちらりと見た。
 いやこれ、一応お前らの作戦の成果だかんな。どうせ有川に「七瀬がそそのかした」とでも言われたんだろうけど。
 どこにいればいいのか分からない俺は、なんとなく立ち上がって、宇山に近づいてきた井田に場所を譲るようにそろそろとベッドの横から離れた。
 井田がゆっくりと宇山のロングカーデをめくるのを見たら、今さらながら胸がドキドキし始める。こんな状況でもいつもどおり余裕の有川は、ローションを片手に戻ってくると俺の手を引いた。そのままベッドの足側に移動させられて、立ったままで後ろから腰を抱き寄せられる。

「七瀬はあっち見てればいいから」

 有川は俺の股の間に片膝をねじ込むと、サルエルの上から尻の割れ目を何度もじらすように触ってきた。中をはいてないせいで尻の穴が服の生地でこすられて、それが有川の部屋着だと思ったら痛いくらいにちんこが張り詰める。
 ……マジか、俺。これ以上変な性癖とか気付きたくないんだけど。
 宇山の初めてを見たいって言ったのは俺なのに、こんなことされてたら見てる余裕もない。だって井田が来るまで乳首いじられながらずっと「待て」させられてたんだぞ。正直、ベッドの端に置かれてる有川のローションが気になって仕方ない。

「あ、待って。七瀬が見たいって」

 ふいに宇山に名前を呼ばれて顔を上げると、いつの間にかあおむけで足を開いていた宇山の尻に、ゴムを着けた井田のちんこがあてがわれるとこだった。

「あー……。じゃ、挿れるとこしっかり見とけよ」

 と言われても、さすがにのぞき込んだりするほど近くに寄るのは気が引ける。そのままの位置でうなずくと、俺のアドバイスを覚えてたのか、井田はたっぷりのローションを足して腰をゆっくりと進め始めた。

「ぁあ、ぁっ、あ、あ」
「あー……、すげ。マジで入った」

 いつもとは全然違う慎重な井田のちんこは、宇山の初めてを疑うくらいにあっさりと奥まで入った。俺はまだ尻を撫でている有川に意識を半分持ってかれながらも、いつものふざけた様子とは違う二人になんだか胸が締めつけられた。
 宇山が尻に手を伸ばして、穴を拡げてる井田のちんこの根元を確認するようになぞる。

「は……っ入った。井田の、ここっ、ここほんとに井田の全部入ってる」
「あ、やばやば。宇山のタオル……」

 このままだと大声で実況とか始めそうだ。我に返った俺は有川の腕をほどいて、宇山にくわえさせるハンドタオルを取りにサイドワゴンに駆け寄った。が、なぜか慌てることなくついてきた有川に、後ろから腰を抱き寄せられる。

「大丈夫、多分隣の人いないから。今朝でっかいキャリーケース持って出てくの見たし」
「マジで? 何だよ、そういうの早く言っとけって。焦ったじゃん」
「ん、ごめん。七瀬も今日は我慢しないで声出していいよ」
「はあ!? 別にそんなん我慢したことねーし」
 
 少し緩んだ腕の中で有川に向き直ると、腰にあった手がそのまま下を脱がしにかかった。完全に上を向いてる俺のちんこに引っかかって手間取った有川は、耳元で声を殺して笑う。

「そうだっけ」

 落ちたサルエルパンツが膝で止まったのも気にせずに、有川は長めのパーカーの中で俺の尻たぶを開く。唾液を絡めた指先で穴の周りをくるくるとなぞられると足が震えて、俺は思わず有川の腰につかまった。

「あっ、そこ、そこやばい。駄目気持ちいい、井田っ、これやばいって」

 ……宇山の実況が始まった。
 駄目だ。俺も早く挿れてほしいけど、中途半端に視界に入る二人が気になって集中できない。それが分かったのか、有川の手も尻から離れる。俺がベッドの方に向くついでに膝に引っかかってたサルエルを踏んで足を引き抜くと、有川は後ろから俺の腰を抱き直して首筋にキスしながらささやいた。

「ちゃんと入ったな」
「ん」

 正常位のまま、井田はゆっくりと宇山にちんこを出し入れしてる。ぱっと見は優しげに見えるけど……えげつねえな。どう見てもあれ、前立腺だけ狙ってんだろ。

「なあ、ああいうの見て七瀬は嫉妬とかしないわけ?」
「は、なんで?」
「いつもあいつらに挿れられる側なのに、取られたみたいに思わない?」
「別に。付き合ってるとかじゃねーのに」
「へえ……」

 まあ、元々井田と宇山のちんこは全自動のディルドみたいなもんだし、やってること自体も最近は有川との前戯みたいに思ってる。その区別を、誰にも言うつもりはないけど。

「じゃあさ、もし俺が宇山とやっても平気?」

 一瞬、わしづかみされたみたいに胸の奥がきしんだ。考えるより先に「嫌だ」って口からこぼれそうになって、声になる前にぐっとのみ込む。
 でも、そっか。今までやってないからって、これからもそうとは限んないのか……。
 って思ったら息が苦しい。何だこれ。

「……お前も、宇山とやりたかったりすんの?」
「どう思う?」
「知らね。別にどーでもいいし」

 視界がぼやけて鼻の奥がツンとする。自分で聞いたくせに答えを聞きたくなくて、つかんでた宇山のハンドタオルに目頭を押し付けた。

「七瀬」
「……」
「七瀬、安心して? 俺は七瀬だけだから」

 抱きしめる力を強めた有川が、俺が欲しい言葉を、誤解しそうなことをさらりと言う。うつむいた俺の頭に、優しく何度も何度もキスしながら。
 何だそれ。駄目だ喜ぶな。こんなのせいぜいセフレとしての話なのに、喜ぶなんて馬鹿みたいだ。それに、俺には井田のちんこも宇山のちんこも必要で、「有川だけ」なんて同じ言葉も返せないのに。ていうか、俺が二人とやってても興味なさそうな時があったり、それなのに自分がいないとこではやるなとか言ったり、有川にとって俺って何なんだろ。

「はーっ、あーあーあー、気持ちい、やばい。ぅあ井田っ、すごっ、んん、井田の入ってる! 中やばいっ」

 いやいやいや。何のAVだコレ。

「井田っ井田っ、そこ駄目っ! は、早くもっと奥挿れてっ、あ、気持ちいっ、そこ、あっあっ」

 いつものことだけど宇山がうるさい。隣が留守でもちょっと口をふさぎたい。つか無理だって言ってたのはどの口だ。快楽に忠実すぎる。
 まあ、おかげでなんだか力が抜けて、沈みかけた思考が浮上したけど。軽くタップしたらすぐに緩んだ有川の腕から抜け出すと、俺はちょっと湿ったハンドタオルを井田の前に差し出した。

「……使えば?」
「お、さんきゅ。なあ、すごくね? 初めてでこれとか俺ら相性良すぎ。あー、マジで気持ちいい。すげー締まる。ほら、ここ見てやってよ」

 なんだ、分かってたけど全然がっかりとかされてねーじゃん。
 いつもより興奮した様子の井田が、俺に見えやすいように宇山のタマをめくる。そのままカリの辺りまでゆっくりちんこを抜くと、毛に絡んだローションが二人の間で糸を引いた。

「あー……ん、んん」

 う、わ。自分以外の尻穴とか初めて見た。動画サイトで見るゲイビなんかとは比べ物にならない、生で至近距離の破壊力。つか、俺もいつもこんなふうに見られてんのか。
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