【本編完結】【BL】愛を知るまで【Dom/Sub】

しーやん

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 三月に入ると、海斗の卒園式と真梨の卒業式を迎えた。

 二人のフォーマルスーツを買う時には、センスの良い理人さんと海斗と真梨の四人で百貨店に行った。

 二人同時で申し訳ないけど、家族が集まってお祝いした。少し豪華な夕食を囲んで、沢山話をした。

 とくに盛り上がったのが、俺が料理をしはじめた時の話題だった。

 今では有り得ないような失敗を沢山した。ゆで卵の茹で時間も分からなかった。

 でも今はこうして、俺が作った夕食を囲んでみんなが笑ってる。節目の時期には、みんなの色んな思い出話で盛り上がる。

 そんなひと時を、幸せだと感じる。

 そして現在、俺は理人さんの頭に抱き付いて、身にあまる幸福感と容赦のない攻めに耐えていた。

 真梨と海斗の卒業式があったり、みんなが春休みを迎え、新学期の準備に追われつつ、理人さんとは何日も空けずに体を繋げている。

「あっ、んや、あああっ!……はあ、はあ……まさと、さ、んっ!先ばっか、舐めないで、あうっ!!」

 バスタブの端に腰掛けて、壁に背を預ける俺の足をめいいっぱいに広げて押さえ付け、理人さんが俺の中心を舐める。時々口一杯に含み、卑猥な水音を立てて舐め上げ、先端の小さくて敏感な穴へ舌先を差し込む。

「恵介くん、出していいよ」

 そう言われて、では遠慮なく、とはいかない。好きな人の口の中に出すのは、ちょっと躊躇われるのが普通なはず。

「イヤだっ、あぁ……」
「どうして?」

 動きを止めて顔を離し、理人さんが意地悪な顔で聞いてくる。

「だ、だって、美味しいものじゃないだろ」
「そうかな。僕にはとても美味しいよ?まるでシャトー・シュヴァル・ブランのようなシルキーで滑らかな味わいに複雑さを併せ持っている。素晴らしい!!」
「しゃとーしゅぶぁる????」

 何語だ?そしてそれはなんだ?この人は俺のちんこを舐めながら、一体何を考えている?

「そんなに嫌?ふむ、なら熟成させるのも悪くない。恵介くん、我慢できるね?」

 混乱した頭では、何を言われているのか理解できないまま、俺は壊れた首振り人形のように頭を上下させた。

 この人の口に出すくらいなら我慢した方がマシだ。安易にそう考えたのだが。

 後ろを無理矢理割り開かれる感覚に、瞬時に自身の決断を呪った。

「んぎぃぃ、ムリィ…!」

 理人さんの少し沿ったそれが、腹を突き破るかのように侵入してくる。腹側を這い上がる刺激に、ヘソの下まで届いていることがしっかりわかった。

 不安定な場所で逃げることも出来ず、理人さんの首に両腕を回してしがみつくが、それがまた結合を深めてしまい、体が勝手に距離を取ろうとする。だけどやっぱり浴槽に落ちそうで、またしがみついて悶えるという悪循環が起こった。

「恵介くん……いつもと違う体制だからか、簡単に深くまで届くね」
「や、やらぁ!おくっ、グリグリするなぁ!」
「でも吸い付いてくるみたいで気持ちいいよ」

 耳元で囁く声が艶かしく、理人さんの興奮が伝染して、背筋に甘い痺れが走る。

 理人さんも気持ちいいんだな、とフワフワした頭に嬉しさが込み上がる。その瞬間、抵抗する力が抜け落ちた。

「はぁ、きもちいよぉ……お腹あつい、ん、ンンッ」 

 深く合わさる唇の熱に脳みそが溶けてしまったようで、風呂場に反響する卑猥な音も気にならなくなった。

「まさとさ、出ちゃう……」
「ダメ。我慢だよ」
「ムリだよぉ…も、イきたいっ」

 理人さんが当然のようにさらに奥へ腰を進め、俺の一番弱いところへ入ってくる。少し慣れて来たが、そこへ入れられると圧迫感と底なしの快感に意識が朦朧としてしまう。

 無意識状態で我慢なんてできるわけがない。

 ひー、とか、ふー、とか、風船から空気が抜けるような声を漏らし、理人さんの地獄のような責苦に、勝手に射精感が高まっていく。

「も、イくっ、我慢なんかできるかっ、あっ、はぁ、ああっ」

 ダメだ。もうダメ。本当にダメ。

 だけど、直前で理人さんが俺のものをキツく握りしめた。なんで?と理人さんを見やると、ものすごく冷酷な表情で言い放つ。

「我慢しろ」

 それから今までより激しく腰を動かしてきて、反動で俺はもたれていた浴室の壁に後頭部を打ち付けるが、気にしている余裕はない。

「やだぁ!離してっ、死んじゃう!」

 背中に回していた手で理人さんを叩く。何度かバシバシやって、イラついた彼にStopやめろとキツく言われて大人しくするしかなくなった。

 やり場のない快楽の渦を、拳を握り締め、歯を食いしばって耐えた。理人さんがラストスパートをかけ、俺の中へ熱いものを吐き出す。同時に凄まじい快感が全身を駆け抜け、なかなか引いてくれない。

「ああ……ん、イったのに……止まんないよぉ」

 出さずにイくとダメだ。高まった熱が引いてくれない。理人さんはまだ意地悪な顔をしている。止める気はないようだ。

 結局その後も体勢を変えて何度もイかされ、やっと出させてもらえた頃には浴槽の湯は冷めきっていた。

 最後に彼は、俺が出したものを丁寧に舐め取り、満足そうな顔でニッコリ笑った。

 散々我慢させられて力尽きていた俺は、おちんぽミルク最高!などと過去にいた客見たく変態臭いことを言われないだけマシか、と諦めて意識を手放した。

 翌日、俺は理人さんと同じ電車に乗って、彼の会社がある駅まで向かった。

「僕は麗しい神の御使のお供ができるなんて幸せだよ」
「アンタはお供じゃなくて普通に出勤するんだよ!」
「いつもの代わり映えのしない朝の風景に、君がいるだけで世界が輝いて見える」
「そろそろちゃんと目を覚まさないと遅刻するぞ」

 むしろ眩しいのはアンタだよ。朝から爽やかすぎる笑顔を振りまいて、さっきからすれ違う女がアンタのこと見てるんだよ!

 と、そんな俺の心境を、この頭のおかしい大人が気にするわけもない。

「俺はあっち!理人さんはそっち!」

 わかりやすくそれぞれの行き先を指差して、俺は目的地へ向かうべく足を上げ、ちょっと待ってと呼び止められて立ち止まる。

「今度は何だ!?」

 若干のイライラを込めて言う。直後、理人さんは俺のイライラを爆発させた。

 さっと俺の右手を取ると、なんの躊躇いもなく手の甲にキスを落とす。チュッと湿った音が、耳元でドラを打ち鳴らされるのと同じくらい、俺には大きく聞こえた。

 一瞬にして、頬がカッと熱くなる。すれ違った人たちがギョッとした顔をしているのを見た。

「あ、これはね、幸運のおまじないなんだ。高城家の」
「知るかバカァ!!」
「もしかして唇にしたほうが、」
「さっさと行けよぉ!お願いだからぁ!」

 羞恥で涙が零れ落ちそうだ。実際俺は涙目で、懇願するように言った。理人さんはキラキラ微笑んでその場で手を振り、どうやら俺が行くまでそうしているつもりだとわかった。

 逃げるようにして歩き出し、やっとの思いで目的地へと辿り着く。

 駅から十分も離れていない角地の二階建ての建物で、そここそが、朝っぱらからしなくていい気苦労をしてこなければならなかった所だ。

 ガラス張りで明るい室内が外から見てとれる。向かって左手には大きな楕円形のテーブルがあり、幾つかのパソコンや事務用品などが整頓されて置いてある。壁際にはコピー機が数台並び、他にも俺には用途のわからないものが沢山あり、数人がそれらに向かってなにやら作業をしている。

 右側はオープンな作りのカフェだ。不規則に配置されている丸テーブルには、朝も早くから数人の客が座っていた。居心地の良さそうな雰囲気のカフェだなと思った。

 左右の空間に仕切りはなく、本当にここで合っているのかと疑問が浮かんだ。

 今日は朱美さんが経営する広告業の事務所へ見学に来たのだが、想像していた事務所のイメージと全然違って気後していた。

 目の前の両開きのガラス扉を開けるのに少し迷っていると、左手の楕円形の大きなテーブルについていた男性が手招きしているが目に入った。

 俺は一瞬背後に視線を向けて、間違いなく自分を呼んでいることを確認する。また男性の方へ視線を戻すと、その人が苦笑しているのがわかって恥ずかしくなった。

 意を決して室内へ足を踏み入れる。

「君、見学に来た恵介くんだろ?」
「はい、あ、はじめまして……倉持恵介です、よろしくお願いします」

 いきなり名前を呼ばれて驚く。同時にここが目的地であることがはっきりした。

「やっぱりね!朱美さんがこの世のものではないくらいの美人だって言ってたからすぐわかった」

 ハッハッハ、と笑う男性に苦笑を浮かべるしかない。もはや言われ慣れているが、天使だなんだと言われないだけで安心感すら湧いてくる。

「僕は佐藤拓馬さとうたくまです。ここの事務所で一応クリエイティブディレクターをやってる。まあ、六人しかいないから、仕方なくだけどね」

 佐藤さんはシャツとニットのベストとデニムといった無難な格好と、黒縁眼鏡に黒髪という、少し野暮ったい雰囲気だったが、話し方や笑顔は明るくて、見た目の印象が台無しにしている、そんな感じの人だった。別に悪口じゃない。

「朱美さんから話は聞いてるよ。絵を描くのが好きみたいだね」
「あ、いや、好きは好きですが……」

 本当にただ興味があるだけだが、些か話が大事になっている気がしないでもない。

 言葉に詰まっていると、佐藤さんはまた眉尻を下げて苦笑いを浮かべた。その顔がクセのようだ。

「そんなに身構えなくていいよ。うちは大手じゃないから……あ、こういうのも作ってるんだ。完全に朱美さんの趣味で、ボランティアだけど」

 そう言って見せてくれたのは、至って普通のサイズのポスターだったけど、そこには俺にとっても馴染みのある文面が並んでいた。

 ひとりで悩まないで。君は一人じゃないたらなんたら。困ったらどうたらこうたら。

 普段の景色に溶け込んでしまって敢えてじっくり見ることはないが、俺はその綺麗に並べられた言葉が嫌いだった。

 多分、複雑な顔をした俺に焦って、佐藤さんは早口で説明した。

「朱美さんの友人で、第二性に関するボランティアをやってる人がいて、うちは事務所全体で協力してるんだよ。もちろんちゃんと企業の案件も抱えているから、事業的に問題はないよ」

 どうして朱美さんが事務所の見学に誘ってくれたのか、それがどういうことなのか、そもそも何故彼女はSubのグループホームなんかに出入りしていたのか。

 ボランティアをしている人たちを否定するわけじゃない。ただ、それがいざ自分自身に向けられると、それらを全て好意的に受け取れるわけじゃなかった。

 詰まるところ俺は卑屈な人間で、一銭にもならないことをする彼らは、まるで高みから哀れな底辺Subに手を差し伸べて、自己満足に浸っているようにしか思えなくて。

 ボランティア?normalに何ができるんだ?

 そう考えてしまうのは、悪いことなのだろうか。
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