【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

灰色 猫

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「着物で移動するって、大変だね」

帯の結び目を潰さないように、前の座席を掴んで背中をつかないようにして車に乗っていた。
5分で到着したので、大事にならなくて助かった。

彼のエスコートで、ホテルの会場に着いた。
受付で招待メールを確認されて、無事に入場することが出来る。

彼に連れられて、主賓に挨拶をする。
英語で流ちょうに、祝いの言葉を述べているのだろう。
ご夫妻の笑顔が、眩しかった。

私が紹介されて、お辞儀をした。
外国人の奥様が、着物を褒めてくれる。
着付けのお免状を持っているので、着物を着る時はお手伝い出来ますと話したら喜んでくれた。

定刻になって、主賓がスピーチをした。
その後に、乾杯があってから歓談が始まる。

「久しぶりだな。
祐樹、素敵な奥様を紹介しろよ」
彼の友人らしき、男性がやって来た。

「残念ながら口説いてるんだが、まだ奥様じゃないんだ。
八神紗栄子さん、パン職人を目指している。
彼は、田島圭吾。経営コンサルタントをしてるんだ」

「空色のお着物が、似合ってらっしゃる。
振袖じゃなかったので、てっきり奥様かと。
失礼しました」

「離婚したので、いくら独身でも振袖は着れません。
こちらの事情ですから、気になさらないで下さい」

彼の友人と別れて、料理を取りに行く。
帯がきついので、沢山は食べられない。
悪酔いしない程度に、お腹に入れておく。

彼が外人と話している隣にいたら、女性がやってきた。
早口の英語で話しかけられるが、聞き取れない。
直ぐに、彼が間に入って通訳してくれる。

「彼女は振袖じゃなくて、落ち着いた着物が着てみたい。
君の着物を見て、これだと思ったようだ。
何か、アドバイスして欲しい」

「訪問着を、貸衣装店で頼めばいいです。
プライベートなパーティーから、結婚式まで着れますから」

着物を着てきて、良かった。
これで、彼の顔も立つだろう。

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