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第2話 ライオネル
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第2話 ライオネル
「おねえちゃん!」
「んー?デイジー、どうしたの?」
「あのね、…夜、一緒に寝てくれる?」
「ふふ、いいよ」
「やったあ!」
どうしよう、デイジーが可愛いすぎる。
ライオネルが拾ってきた孤児のみんなで住んでいる家ーーライオネルが用意した家ーーの周りを、森で拾った枝で手作りした簡易箒で掃き掃除をしていた最中に、背後から声をかけられた。振り向くと小さな女の子ーーデイジーが頬を赤らめて立っていた。齢四歳の女の子が恥ずかしそうに頑張っておねだりする姿は大変可愛らしい。
ここにいる子どもたちの中でも年長者である「私」は、嬉しいことに随分子どもたちに懐かれている。私が前世の記憶を思い出した時に、熱のせいで寝込むことになったのだが、いかんせん、心配をかけすぎたのか、こうして一緒に寝ることをねだられるのは初めてではない。というか、あの日以来、私は一人で寝かせてくれない。懐いて慕ってくれるのはうれしいのだが、ちょっと気恥しさもあるから、そろそろ一人で寝かせてほしいなあ、と喜ぶ子どもたちを眺めながら苦笑するのだが。だって、おねだりされたら、いいよと言ってしまうでしょう。
「デイジー、エリィ。ここにいたんだね」
「おにいちゃん!」
デイジーに視線を合わせるためにしゃがんで、にこにこと笑顔のデイジーの幼女特有のぷくぷくなほっぺたを、柔らかいなあとぷにぷに突っついて遊んでいると、ライオネルの声が聞こえた。デイジーは視線を私の背後に向けライオネルを見つけたのか、パッと表情を綻ばせ、パタパタとライオネルの元に駆け寄っていった。どうやら、ライオネルは私の後ろからやって来たらしい。
「レン」
振り向くと、ライオネルはデイジーの頭を撫でていた。私のライオネルを呼ぶ声に、私に視線をずらすとライオネルは柔らかく微笑んだ。立ち上がりライオネルの方に歩み寄ると、ぽんぽんと今度は私の頭を撫でだした。思うんだけど、ライオネルって結構子ども好きなんだよね。
「エリィは外の掃き掃除をしていたんだね。えらいえらい」
「むぅ。私はもうここの子どもたちの中でも年長者なんだから、いつまでも幼子のように扱わないで欲しいんだけどなあ…」
拗ねたように唇を尖らせ、腕組みをしながら長身のライオネルを見上げながら、ライオネルの手を避けると、少し残念そうな顔をされる。
「ごめんごめん。エリィを見てると頭を撫でたくなるというか、なんていうか、つい、ね…」
苦笑いをしながら謝られたけど、これ絶対直す気ないやつだ。そう思ったから、ジト目でライオネルを見てみたら、「かわいいなあ」と眉を下げながら言われ、再び頭を撫でられた。
「おねえちゃん!わたしも~」
ちょんちょんと服の裾を引っ張られて、下を見ると目をキラキラさせたデイジーがいた。どういうことだろう?、とキョトンとしていると、次はデイジーの方に手を引っ張られて手を誘導させられている。頭を撫でて欲しいのかな?、とデイジーの頭を優しく撫でると、「えへへ」と嬉しそうに笑っている。かわいい。
「エリィは前からよく働くいい子だったけど、最近は、下の子の面倒も率先して見るようになったよね」
にこにこと穏やかに微笑みながら、私たちのやり取りを見ながらそう言うライオネル。何だか嬉しそうだ。
「俺もここにいるみんな全員に、目が届くわけじゃないし、俺もいない時もあるだろうから、下の子どもを面倒見てくれるとありがたいよ」
ライオネルは基本、私たちと同じ家で一緒に生活している。でも、たまに「今日は帰れない」と言って、どこかへ出かけていく。そして、次に帰ってきた時には、必ず玩具だったり絵本だったり、“お土産”を持って帰ってくる。その、帰って来れない時に行っている場所が、本来ならライオネルが帰るべき場所なのではないか、なんてことを思ってしまう。私たちには“仕事”と説明しているが。
「私は“おねえちゃん”だから」
「そっか」
ライオネルは私の返答にさらに笑みを深めている。最近の私は、ライオネルの言葉通り小さな子どもの面倒も率先して見るようになった。ライオネルは、精神的に成長して年長者としての自覚が芽生えてきたと思ってそうだけど、実際のところは違う。だって、私が変化した理由は、前世の記憶を思い出したからで、今までと中身がちょっと違うからね。そりゃそうだ。そんなことだとは普通は思わない。
私が前世の記憶を思い出してから、穏やかな日々が続いていた。この世界で過ごす中で、みっちゃんのおかげもあるが、この世界についてだんだん理解してきた。この世界は科学の代わりに魔法の発達した世界であること。魔法使いと呼ばれるほど魔力の多い人間はそんなに多くないこと。ふわっとはしているが、ざっくりとはこんな感じなんだと理解した。
孤児のみんなとの、貧しい生活ではあるけど、大切な血の繋がらない家族との生活。『セシルの聖剣』の原作では、『エレノア』が壊した日常。私さえ、私が気をつけていれば、私が壊さなければ守られる日常だと、そう思っていた。
こんな幸せな日々が続くことを願っていた。
「おねえちゃん!」
「んー?デイジー、どうしたの?」
「あのね、…夜、一緒に寝てくれる?」
「ふふ、いいよ」
「やったあ!」
どうしよう、デイジーが可愛いすぎる。
ライオネルが拾ってきた孤児のみんなで住んでいる家ーーライオネルが用意した家ーーの周りを、森で拾った枝で手作りした簡易箒で掃き掃除をしていた最中に、背後から声をかけられた。振り向くと小さな女の子ーーデイジーが頬を赤らめて立っていた。齢四歳の女の子が恥ずかしそうに頑張っておねだりする姿は大変可愛らしい。
ここにいる子どもたちの中でも年長者である「私」は、嬉しいことに随分子どもたちに懐かれている。私が前世の記憶を思い出した時に、熱のせいで寝込むことになったのだが、いかんせん、心配をかけすぎたのか、こうして一緒に寝ることをねだられるのは初めてではない。というか、あの日以来、私は一人で寝かせてくれない。懐いて慕ってくれるのはうれしいのだが、ちょっと気恥しさもあるから、そろそろ一人で寝かせてほしいなあ、と喜ぶ子どもたちを眺めながら苦笑するのだが。だって、おねだりされたら、いいよと言ってしまうでしょう。
「デイジー、エリィ。ここにいたんだね」
「おにいちゃん!」
デイジーに視線を合わせるためにしゃがんで、にこにこと笑顔のデイジーの幼女特有のぷくぷくなほっぺたを、柔らかいなあとぷにぷに突っついて遊んでいると、ライオネルの声が聞こえた。デイジーは視線を私の背後に向けライオネルを見つけたのか、パッと表情を綻ばせ、パタパタとライオネルの元に駆け寄っていった。どうやら、ライオネルは私の後ろからやって来たらしい。
「レン」
振り向くと、ライオネルはデイジーの頭を撫でていた。私のライオネルを呼ぶ声に、私に視線をずらすとライオネルは柔らかく微笑んだ。立ち上がりライオネルの方に歩み寄ると、ぽんぽんと今度は私の頭を撫でだした。思うんだけど、ライオネルって結構子ども好きなんだよね。
「エリィは外の掃き掃除をしていたんだね。えらいえらい」
「むぅ。私はもうここの子どもたちの中でも年長者なんだから、いつまでも幼子のように扱わないで欲しいんだけどなあ…」
拗ねたように唇を尖らせ、腕組みをしながら長身のライオネルを見上げながら、ライオネルの手を避けると、少し残念そうな顔をされる。
「ごめんごめん。エリィを見てると頭を撫でたくなるというか、なんていうか、つい、ね…」
苦笑いをしながら謝られたけど、これ絶対直す気ないやつだ。そう思ったから、ジト目でライオネルを見てみたら、「かわいいなあ」と眉を下げながら言われ、再び頭を撫でられた。
「おねえちゃん!わたしも~」
ちょんちょんと服の裾を引っ張られて、下を見ると目をキラキラさせたデイジーがいた。どういうことだろう?、とキョトンとしていると、次はデイジーの方に手を引っ張られて手を誘導させられている。頭を撫でて欲しいのかな?、とデイジーの頭を優しく撫でると、「えへへ」と嬉しそうに笑っている。かわいい。
「エリィは前からよく働くいい子だったけど、最近は、下の子の面倒も率先して見るようになったよね」
にこにこと穏やかに微笑みながら、私たちのやり取りを見ながらそう言うライオネル。何だか嬉しそうだ。
「俺もここにいるみんな全員に、目が届くわけじゃないし、俺もいない時もあるだろうから、下の子どもを面倒見てくれるとありがたいよ」
ライオネルは基本、私たちと同じ家で一緒に生活している。でも、たまに「今日は帰れない」と言って、どこかへ出かけていく。そして、次に帰ってきた時には、必ず玩具だったり絵本だったり、“お土産”を持って帰ってくる。その、帰って来れない時に行っている場所が、本来ならライオネルが帰るべき場所なのではないか、なんてことを思ってしまう。私たちには“仕事”と説明しているが。
「私は“おねえちゃん”だから」
「そっか」
ライオネルは私の返答にさらに笑みを深めている。最近の私は、ライオネルの言葉通り小さな子どもの面倒も率先して見るようになった。ライオネルは、精神的に成長して年長者としての自覚が芽生えてきたと思ってそうだけど、実際のところは違う。だって、私が変化した理由は、前世の記憶を思い出したからで、今までと中身がちょっと違うからね。そりゃそうだ。そんなことだとは普通は思わない。
私が前世の記憶を思い出してから、穏やかな日々が続いていた。この世界で過ごす中で、みっちゃんのおかげもあるが、この世界についてだんだん理解してきた。この世界は科学の代わりに魔法の発達した世界であること。魔法使いと呼ばれるほど魔力の多い人間はそんなに多くないこと。ふわっとはしているが、ざっくりとはこんな感じなんだと理解した。
孤児のみんなとの、貧しい生活ではあるけど、大切な血の繋がらない家族との生活。『セシルの聖剣』の原作では、『エレノア』が壊した日常。私さえ、私が気をつけていれば、私が壊さなければ守られる日常だと、そう思っていた。
こんな幸せな日々が続くことを願っていた。
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