3 / 4
第3話 幸せの終わり
しおりを挟む
第3話 幸せの終わり
この世にはどうしようもならないこともある。
それは、私、エレノアが齢八歳にして知ったこと。
原作を捻じ曲げることが出来ないのか。そんなことを目の前の光景を見てふと思う。どうなんだろう。私には分からない。分からないけど、地獄がやってきたってことは、ただ理解出来た。
驚くほどあっけなく、私の日常は崩れ去った。
◇◆◇◆◇◆◇
ーー約二時間前。
朝に警報機が壊れていないことと結界が作動していることを確認したのにも関わらず、魔物たちに私たちが住む家は襲撃された。
それを率いているのは、普通の人間なら白目のはずの部分、いわゆる結膜が赤いという特徴と羊のような角を持っているーー魔族だ。
嘘!?なんで!?
ーー混乱、焦燥、そして、絶望、といった二文字達が頭の中をグルグルと回る。
魔族。それは、ヒト族が魔大陸に順応する為に進化した種族で、単純に魔力の多く身体能力の高い戦闘好きな種族のことを言う。そして、魔族は基本的には何事にも興味はない。ただ、人が苦しんだり絶望したりする様を見て楽しむ傾向にある、超が百個くらいつくような趣味の悪い奴らの多い種族でもある。そして、魔王を復活させることに尽力し、あまりヒト族の前には現れない。
そして、『セシルの聖剣』では、その日虫の居所が悪かったエレノアを、ちょっといたずらするだけ、などと唆して魔物をけしかけたのが魔族だ。つまり、近くには居たのだろう。ただ、いつ襲ってくるのかは分からなかった。だから、対策ができなかった。それに、圧倒的力を持つ魔族には私の協力など要らなかったのだ。私さえ、気をつければ?そんな考えは自惚れに過ぎなかったのだ。
あ、これ死んだ。あっさりとそう思ってしまったけど、直ぐに思い直す。
ーーまあ、私がそう思ったのも仕方ない。だって、魔族と出会って生きていた人間はほとんどいないんだから。
ジリリリリリリリリリリ
警報は作動した。しかし、魔物を率いている魔族にとってそんなものは玩具にすぎない。
(魔族は何が目的なの?)
煩わしそうに警報を聞いている魔族を見てふとそう思う。
「ねえ、何をしに来たの? 魔族のお兄さん?」
首を傾げながら、魔族に向かってそう聞いてみる。嘘だろ!?って表情をしてライオネルがこっちを見てくるけど、このままじっとしてたらきっと殺されてしまう。そんなのは嫌だ。だから、ちょっとでも情報が欲しい。
「魔核。魔核の欠片がこのあたりにあるはずだ。どこにある」
チラリとこちらに視線をやって、疑問形のはずだけど疑問符がついてない聞き方で聞いてくる魔族。魔核って、魔王の核のことでしょ?確か魔王復活に必要なんだっけ?と『セシルの聖剣』の知識をチラリと引っ張り出す。え、その欠片がここらへんにあるの?そんなの嘘やん?私知らないんだけど?
目をぱちくりさせて、混乱している私に知らないことは伝わったのか、眉根を寄せていかにも不機嫌ですって顔で表している魔族にライオネルが焦った表情をする。
「みんな!俺の後ろに隠れて!」
ライオネルがそう子どもたちに呼びかけるが、それを聞いて大人しく後ろに隠れたのは、私と、私が慌てて手を引いたデイジーだけ。言うことを聞いた私たちに安心したように頬を緩めるライオネルだったが、他の子どもたちは、魔物と魔族に混乱して散り散りになって逃げようと走っていく。それを見て、ライオネルは顔を顰めた。私はギュッと手を握りしめた。
「デイジー。レンの後ろから離れちゃだめだからね」
大丈夫だとは思うけど、念の為、デイジーにそう言って聞かせる。
「う、うん。でも、おねえちゃんは?」
デイジーの不安そうな顔と声に、私は安心させるように微笑むと、次はライオネルに向かって告げた。
「レン!私、みんなを呼び戻してくるねっ!」
ここに、ライオネルの後ろにいれば安全だ。ここから離れたらだめだ。そう思うけど、それでもやっぱりみんなを放っておけない。
だって、みんなは私を受け入れてくれた家族だから。
「ちょ、エリィっ!?」
後ろから焦ったような声が聞こえた。それでも、引き止める声に振り返ることなく、私はみんなを探しに向かったのだ。
ーー大丈夫。きっとみんなを連れて帰ってくるから。
声には出さないそんな私の想いは、ライオネルには伝わったのだろうか。
それが、ライオネルーーいや、レンとの最後で、それから長い間私はライオネルに会えないのだけど、この時の私は、そんなことは知らないし、そんなこと考えもしてなかったのだ。
そして、結局、私のみんなを連れて帰ってくるという想いは叶わなかったし、ライオネルはこの魔族襲撃後の光景にトラウマを抱えてしまうし、そのトラウマを解消できるのはずっと先になる。
この世にはどうしようもならないこともある。
それは、私、エレノアが齢八歳にして知ったこと。
原作を捻じ曲げることが出来ないのか。そんなことを目の前の光景を見てふと思う。どうなんだろう。私には分からない。分からないけど、地獄がやってきたってことは、ただ理解出来た。
驚くほどあっけなく、私の日常は崩れ去った。
◇◆◇◆◇◆◇
ーー約二時間前。
朝に警報機が壊れていないことと結界が作動していることを確認したのにも関わらず、魔物たちに私たちが住む家は襲撃された。
それを率いているのは、普通の人間なら白目のはずの部分、いわゆる結膜が赤いという特徴と羊のような角を持っているーー魔族だ。
嘘!?なんで!?
ーー混乱、焦燥、そして、絶望、といった二文字達が頭の中をグルグルと回る。
魔族。それは、ヒト族が魔大陸に順応する為に進化した種族で、単純に魔力の多く身体能力の高い戦闘好きな種族のことを言う。そして、魔族は基本的には何事にも興味はない。ただ、人が苦しんだり絶望したりする様を見て楽しむ傾向にある、超が百個くらいつくような趣味の悪い奴らの多い種族でもある。そして、魔王を復活させることに尽力し、あまりヒト族の前には現れない。
そして、『セシルの聖剣』では、その日虫の居所が悪かったエレノアを、ちょっといたずらするだけ、などと唆して魔物をけしかけたのが魔族だ。つまり、近くには居たのだろう。ただ、いつ襲ってくるのかは分からなかった。だから、対策ができなかった。それに、圧倒的力を持つ魔族には私の協力など要らなかったのだ。私さえ、気をつければ?そんな考えは自惚れに過ぎなかったのだ。
あ、これ死んだ。あっさりとそう思ってしまったけど、直ぐに思い直す。
ーーまあ、私がそう思ったのも仕方ない。だって、魔族と出会って生きていた人間はほとんどいないんだから。
ジリリリリリリリリリリ
警報は作動した。しかし、魔物を率いている魔族にとってそんなものは玩具にすぎない。
(魔族は何が目的なの?)
煩わしそうに警報を聞いている魔族を見てふとそう思う。
「ねえ、何をしに来たの? 魔族のお兄さん?」
首を傾げながら、魔族に向かってそう聞いてみる。嘘だろ!?って表情をしてライオネルがこっちを見てくるけど、このままじっとしてたらきっと殺されてしまう。そんなのは嫌だ。だから、ちょっとでも情報が欲しい。
「魔核。魔核の欠片がこのあたりにあるはずだ。どこにある」
チラリとこちらに視線をやって、疑問形のはずだけど疑問符がついてない聞き方で聞いてくる魔族。魔核って、魔王の核のことでしょ?確か魔王復活に必要なんだっけ?と『セシルの聖剣』の知識をチラリと引っ張り出す。え、その欠片がここらへんにあるの?そんなの嘘やん?私知らないんだけど?
目をぱちくりさせて、混乱している私に知らないことは伝わったのか、眉根を寄せていかにも不機嫌ですって顔で表している魔族にライオネルが焦った表情をする。
「みんな!俺の後ろに隠れて!」
ライオネルがそう子どもたちに呼びかけるが、それを聞いて大人しく後ろに隠れたのは、私と、私が慌てて手を引いたデイジーだけ。言うことを聞いた私たちに安心したように頬を緩めるライオネルだったが、他の子どもたちは、魔物と魔族に混乱して散り散りになって逃げようと走っていく。それを見て、ライオネルは顔を顰めた。私はギュッと手を握りしめた。
「デイジー。レンの後ろから離れちゃだめだからね」
大丈夫だとは思うけど、念の為、デイジーにそう言って聞かせる。
「う、うん。でも、おねえちゃんは?」
デイジーの不安そうな顔と声に、私は安心させるように微笑むと、次はライオネルに向かって告げた。
「レン!私、みんなを呼び戻してくるねっ!」
ここに、ライオネルの後ろにいれば安全だ。ここから離れたらだめだ。そう思うけど、それでもやっぱりみんなを放っておけない。
だって、みんなは私を受け入れてくれた家族だから。
「ちょ、エリィっ!?」
後ろから焦ったような声が聞こえた。それでも、引き止める声に振り返ることなく、私はみんなを探しに向かったのだ。
ーー大丈夫。きっとみんなを連れて帰ってくるから。
声には出さないそんな私の想いは、ライオネルには伝わったのだろうか。
それが、ライオネルーーいや、レンとの最後で、それから長い間私はライオネルに会えないのだけど、この時の私は、そんなことは知らないし、そんなこと考えもしてなかったのだ。
そして、結局、私のみんなを連れて帰ってくるという想いは叶わなかったし、ライオネルはこの魔族襲撃後の光景にトラウマを抱えてしまうし、そのトラウマを解消できるのはずっと先になる。
0
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
前世のノリで全力面接対策したらスパイを疑われた
碧井 汐桜香
ファンタジー
前世の記憶のあるジョセフィーヌ・アイジャルは、ついに学園を卒業する。
王宮に士官するために、筆記試験は無事に好成績で突破し、最後の面接試験だ。
前世の通りにガクチカ、自己PRと企業分析。完璧に済ませて臨んだ面接は、何かおかしな様子で……?
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。
ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・
強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる