よく知らない漫画の悪役キャラに転生してたっていう話

凪ルナ

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第3話 幸せの終わり

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第3話 幸せの終わり



 この世にはどうしようもならないこともある。
 それは、私、エレノアが齢八歳にして知ったこと。


 原作を捻じ曲げることが出来ないのか。そんなことを目の前の光景を見てふと思う。どうなんだろう。私には分からない。分からないけど、地獄がやってきたってことは、ただ理解出来た。

 驚くほどあっけなく、私の日常は崩れ去った。


◇◆◇◆◇◆◇


 ーー約二時間前。


 朝に警報機が壊れていないことと結界が作動していることを確認したのにも関わらず、魔物たちに私たちが住む家は襲撃された。

 それを率いているのは、普通の人間なら白目のはずの部分、いわゆる結膜が赤いという特徴と羊のような角を持っているーー魔族だ。

 嘘!?なんで!?

 ーー混乱、焦燥、そして、絶望、といった二文字達が頭の中をグルグルと回る。

 魔族。それは、ヒト族が魔大陸に順応する為に進化した種族で、単純に魔力の多く身体能力の高い戦闘好きな種族のことを言う。そして、魔族は基本的には何事にも興味はない。ただ、人が苦しんだり絶望したりする様を見て楽しむ傾向にある、超が百個くらいつくような趣味の悪い奴らの多い種族でもある。そして、魔王を復活させることに尽力し、あまりヒト族の前には現れない。

 そして、『セシルの聖剣』では、その日虫の居所が悪かったエレノアを、ちょっといたずらするだけ、などと唆して魔物をけしかけたのが魔族だ。つまり、近くには居たのだろう。ただ、いつ襲ってくるのかは分からなかった。だから、対策ができなかった。それに、圧倒的力を持つ魔族には私の協力など要らなかったのだ。私さえ、気をつければ?そんな考えは自惚れに過ぎなかったのだ。

 あ、これ死んだ。あっさりとそう思ってしまったけど、直ぐに思い直す。

 ーーまあ、私がそう思ったのも仕方ない。だって、魔族と出会って生きていた人間はほとんどいないんだから。

 ジリリリリリリリリリリ

 警報は作動した。しかし、魔物を率いている魔族にとってそんなものは玩具にすぎない。

 (魔族は何が目的なの?)

 煩わしそうに警報を聞いている魔族を見てふとそう思う。

 「ねえ、何をしに来たの? 魔族のお兄さん?」

 首を傾げながら、魔族に向かってそう聞いてみる。嘘だろ!?って表情をしてライオネルがこっちを見てくるけど、このままじっとしてたらきっと殺されてしまう。そんなのは嫌だ。だから、ちょっとでも情報が欲しい。

 「魔核。魔核の欠片がこのあたりにあるはずだ。どこにある」

 チラリとこちらに視線をやって、疑問形のはずだけど疑問符がついてない聞き方で聞いてくる魔族。魔核って、魔王の核のことでしょ?確か魔王復活に必要なんだっけ?と『セシルの聖剣』の知識をチラリと引っ張り出す。え、その欠片がここらへんにあるの?そんなの嘘やん?私知らないんだけど?
 目をぱちくりさせて、混乱している私に知らないことは伝わったのか、眉根を寄せていかにも不機嫌ですって顔で表している魔族にライオネルが焦った表情をする。

 「みんな!俺の後ろに隠れて!」

 ライオネルがそう子どもたちに呼びかけるが、それを聞いて大人しく後ろに隠れたのは、私と、私が慌てて手を引いたデイジーだけ。言うことを聞いた私たちに安心したように頬を緩めるライオネルだったが、他の子どもたちは、魔物と魔族に混乱して散り散りになって逃げようと走っていく。それを見て、ライオネルは顔を顰めた。私はギュッと手を握りしめた。

 「デイジー。レンの後ろから離れちゃだめだからね」

 大丈夫だとは思うけど、念の為、デイジーにそう言って聞かせる。

 「う、うん。でも、おねえちゃんは?」

 デイジーの不安そうな顔と声に、私は安心させるように微笑むと、次はライオネルに向かって告げた。

 「レン!私、みんなを呼び戻してくるねっ!」

 ここに、ライオネルの後ろにいれば安全だ。ここから離れたらだめだ。そう思うけど、それでもやっぱりみんなを放っておけない。

 だって、みんなは私を受け入れてくれた家族だから。

 「ちょ、エリィっ!?」

 後ろから焦ったような声が聞こえた。それでも、引き止める声に振り返ることなく、私はみんなを探しに向かったのだ。

 ーー大丈夫。きっとみんなを連れて帰ってくるから。

 声には出さないそんな私の想いは、ライオネルには伝わったのだろうか。



 それが、ライオネルーーいや、レンとの最後で、それから長い間私はライオネルに会えないのだけど、この時の私は、そんなことは知らないし、そんなこと考えもしてなかったのだ。


 そして、結局、私のみんなを連れて帰ってくるという想いは叶わなかったし、ライオネルはこの魔族襲撃後の光景にトラウマを抱えてしまうし、そのトラウマを解消できるのはずっと先になる。

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