唐突なキスは幸せを呼んだ

月下 雪華

文字の大きさ
3 / 5

3 保護石のお守り

しおりを挟む

「なんで、僕にお弁当持ってきたんですか?」
 僕はゴロゴロと店から出たゴミたちを捨てながらマルクさんに問う。


「家庭的な男はモテるらしいから、料理をしてみたらどうかとメンバーから言われたんだ。慣れてはいなかったがそれなりには出来たつもりだったんだがな。味はどうだった?」
「ああ、そうだったんですね。美味しかったですよ。ありがとうございました。次、会う時に弁当箱を持っできますね。すみません」
 彼の不安げな様子からして、僕の職場に対しての色々は何もなかったらしい。ただのアピールのようだ。だが、この前のものはなんとも言えない見た目と違い、美味しく、食べやすく、とてもいいものであったのでアピールなどなしに度々作ってきて欲しい。


 あぁ、彼の健気な仕草が効いてきている自覚がある。そもそも僕は大家族の家から出て、ずっと傷心気味だったのだ。そんなところに、ここまで好きを表現されると揺らぐ気持ちがある。こんなにすぐ駄目だと思うのにふわふわと浮き上がる気持ちが止まらない。


「ああ。それなら良かったが最近、物取りだの盗難だのが多くなってきているらしい。貰うついでに帰りだけでも送っていこうか?」
「え、そうなんですか?僕、ここに住み込んでるので大丈夫ですよ」
 だんと床に箱を置いて息をつく。重く、汚いこの作業は心身ともに疲れる。仕事を手伝うのはどうなのか分からないからと言っていたマルクさんは隣で僕をずっと見つめていた。

「へー、そうなのか。じゃあ、送り迎えは必要ないな。でも、いくら頼ってくれても構わないからな。俺は君を守りたいんだ」
「ありがとうございます……でも、大丈夫ですよ?」
 手を叩いてもう一度箱を持ち上げようとした僕の首になにかがかけられる。

「いや、それでも俺が不安なんだ。出来れば、君はこれを持っていて欲しい。保護石だ。これが君を守ってくれるはずだ」
 保護石という言葉に、びっくりして数歩下がり転びかけた所を彼の腕に抱き止められる。

「え、な、こ、これ!高いやつでは!?」
「ああ。大丈夫。俺が取ったものを仲間に加工してもらった俺のものだからな。元値も何も無いよ。気にしなくていい」
 前に貰った魔石も綺麗で高価そうであったが保護石など。あの石の10倍はするだろうに軽々とくれると言うのか。
 頭を抑えられているあいだマルクさんはニコニコと目線を合わせてくる。

「すみません。ありがとうございます」
「ううん。俺ができることしたいだけだからな」
 ……僕はそろそろマルクさんに落ちてしまうかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

処理中です...