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2-1 早い帰還

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 ラズは気づかないうちに街から出ていった。
 あの私との会話の後、すぐに王から伝えられた者たちパーティを組んで魔国へ向かったと聞いている。あれだけ私に色々としたり、言ったりしておきながらこっちから向き合う機会を与えてくれなかったのかと思うとまたぐちゃついた気持ちになったがラズはラズの言い分があるのだろう。
 パーティが王子や国の上から数番目だという魔法使いなどがいるらしく急ぐのも仕方なかったのかもしれない。

 そう悩んでいた日々から数日。魔法使いのアリナ・ラルリカさんが、スキンファクシ騎士団のところへというか私の所に仕事だと言いながら来た。優しく明るいいい人で、それなりの家の者以外に使えない家系魔法によって彼女の身分を証明された上、凄い由緒正しい家から勇者関連で来た人であるらしく、遣った人も彼女もかなり偉いお家の出らしい。正直私なんかに着いてもらうのは申し訳ないのだが、私こそが勇者の弱点なのだからと言われれば守られるしかなかった。
 周囲は私と彼女の暮らしを騎士団の騎士達が見やっていた。

 その日々の中、ラズは定期的に箱に入れられたメモにはご飯に関連した連絡以外、特に彼自身についての連絡は一言も書かれなかった。その紙にはその端に血が滲んでいたり、明らかに燃えた紙の端だったりと不安を感じさせたものであった。だが、私に出来るのは彼らのための料理だけ。
 毎日、毎日、ご飯とおやつと飲みやすい飲み物それを零れないよう詰めて、置いて。箱の中に変化が起きた時に鳴る鈴のような音が、取る時と置く時で2回聞こえたらそれを片付ける。またそこに食べやすい物を置く。それを続けた。

 そんな生活が始まって、それを始めた彼が出ていってから2ヶ月。何時も慣れたように箱を開けると手紙があった。彼の字で書かれているのを久しぶりに見たメモ用紙には食べたいものではなく、もうすぐ街に着くという連絡があった。


 私としては居ないその間、寂しかったけれども同時に早いと感じさせるには十分な時期であった。
 彼がそろそろ帰ってくるウキウキと心をはずませていたと思うと紙を確認して数時間後、彼が戻って来ていた。
 彼女にとってあまりにも予想外であった。

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