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3-3 酔いに巻き込まれ
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「で、ではエリナ様はいつからラズ様とご一緒なのですか?」
細い声を出す彼女は気の高まりを抱えている。
「いつから、ですか?私は確か5歳とかですかね。ラズが森に置いていかれたのを私の父が身を働いているスキンファクシ騎士団が拾ってから仲良くしているんです。彼は孤児なので親や兄弟はいないんですけど親が騎士団の人々、私が幼なじみみたいな気持ちでいたんです」
「あぁ、そうなのですね。幼なじみ。へぇ、そうでしたのね」
ペトラ様はうんうんと頭を振って、顎に手を当てた。ぷっくりとした唇に目が向きソワソワとした気持ちになる。私にないものがとても艶やかに見えた。
「うーん、やはり仲をよくするためには共にいる時間が必要なのかしら……」
「……私は時間が作るものもありますが他のものもあると思いますよ。好きなところは一緒に居ないからこそ見えてくるものもあるのです。今回の旅で知りました」
彼の優しさや選択における思慮深さ、真面目なところや粗野に見せかけてはいるが優しいところ。ふんわりとしか覚えていない前世なんかよりいっぱい好きな所をラズに抱えている。
「そうなのね……」
「あの、すみません。お嬢様、エリナ様が食べられないので用意してるお菓子を食べていただけませんか?せっかく美味しいのだからエリナ様にも食べてもらいたいと言ってたじゃないですか」
「あ、そうでしたわね!ごめんなさい。頂くわ」
アリナさんに声をかけられたペトラ様は机に置かれたクッキーを手に取り口に運ぶ。小さい口でもぐもぐと食べていく姿はとても可愛らしい。1つ、2つと口内へ消えていくとこくりとお茶が飲まれていく。
「私こそすみません、そのようなお気遣いをさせてしまって。用意して下さりありがとうございます」
「いいえ!こちらこそもっとちゃんと謝るべきですわ。私の都合で振り回してしまって。思いあっているおふたりが何故そうなのか知りたくなってしまって、会話ばかりでお菓子にまで気を使えなくて」
「いえ、気にして貰えただけで嬉しいです。ふふっ、食べさせて貰いますね」
サクッと1口齧るとバターの濃厚な香りと軽いけれどしっとりとした食感に程よい甘さ。紅茶も凄かったけれどこちらも凄い。食べすぎるのは良くないと分かりつつ、何回も手が出そうになる。
「美味しいです……これは素晴らしいお菓子ですね」
「良かったですわ。私もこのお菓子が好きなんです……これはフレドリッヒ様が昔送ってくださって……私はエリナ様とは違って恋を叶える為ではなく家のために彼に嫁ぐのですわ。私は好きな人に愛されるのは不可能に近くて……あの方は幼少期から決められている婚約者ですけど、でも、でも……お父様が男の人は私なんかより素直な女の子の方が良いって。もっと人に頼ることが出来て、優しくて、清純な女の子が、」
彼女の丁寧な言葉がどんどんと濁流に流れるように早く、うなだれるように小さくなっていく。
瞳から一筋の光が落ちていく。
「え、わ、な、泣かないでください!大丈夫ですか……?」
「あー、お嬢様は紅茶を飲んでフレドリッヒ様のお話をされるとおかしくなるんです。酔ったみたいでしょう?でも、気にしないでください。慣れていないだけなので、そして、この話はいつも私にしか話せないので出来れば話を聞いてあげてください」
アリナさんはペトラ様へハンカチを渡し、紅茶を継ぎ足していく。
「わ、私のお父様は、私を勇者様と婚約し直させて、ラズ様を第一王子派に取り込むおつもりでしたの。そして、年若く純粋で自分に素直な私の妹をフレドリッヒ様に……ぐすっ、私もその方がフレドリッヒ様にはいいと思っていたのです。実際はラズ様は私ではなくエリナ様を娶りたく思っていらっしゃいましたし、ラズ様の目的にあのお方が手伝っていらっしゃるなら婚約をなど言えません。エリナ様も良い方でいらっしゃるのに……私は人のことも考えず良くないこととを……」
両手でコップを抱え、下を向けて悲しそうに眉を顰めた。
「……ペトラ様は第1王子様の何処がお好きなんですか?」
「っ、私はあの方のお姿や仕草だけではなくて、私にだけ本音で話してくれる所が特に好きなのです。あの方には王弟や第2王子がいらっしゃるから何もかもを気楽に言うことはできないのですけど、私には……私だけにはあれがしたいとか今日は疲れたんだとか何があっても俺を信じて欲しいとか他の人には聞かせられないことでも私へ伝えてくれるんですの。とりあえずでも婚約相手として当てられていたからなのかしら。それでも、特別な存在というのは嬉しいのですわ」
「そうなのですね」
「……ええ」
「特別を感じているのは素敵ですね」
ペトラ様は小さく鼻をすすり涙を隠せない様子ですんすんと紅茶に酔っていた。最初に感じていた高貴でよく分からない人という印象が薄れ、可愛らしい女の人であるのだと分かってきた。段々と話すにつれ無防備で恋にふわふわとしていく乙女なペトラ様のことが好きになってくる。
ここまで可愛くなくともラズに浮かれる私もこんな感じなのだろうか。それは少し恥ずかしい。
ふと顔を上げると嬉しげな表情を隠せなくなったペトラ様が私に質問を投げ掛ける。彼女は私の後ろにある大きなベッドに視線を向けた。
「……あの、ご飯を食べたあとは私達で一緒に寝ませんか?」
「え、それはよろしいんですか?」
「ええ。今は私達3人、アリナが部屋に戻れば私とエリナ様の2人しかいません。そんな場所、身分は関係ないですのよ。今晩は皆で恋の話をいたしませんこと」
「ふふっ、楽しみですね」
細い声を出す彼女は気の高まりを抱えている。
「いつから、ですか?私は確か5歳とかですかね。ラズが森に置いていかれたのを私の父が身を働いているスキンファクシ騎士団が拾ってから仲良くしているんです。彼は孤児なので親や兄弟はいないんですけど親が騎士団の人々、私が幼なじみみたいな気持ちでいたんです」
「あぁ、そうなのですね。幼なじみ。へぇ、そうでしたのね」
ペトラ様はうんうんと頭を振って、顎に手を当てた。ぷっくりとした唇に目が向きソワソワとした気持ちになる。私にないものがとても艶やかに見えた。
「うーん、やはり仲をよくするためには共にいる時間が必要なのかしら……」
「……私は時間が作るものもありますが他のものもあると思いますよ。好きなところは一緒に居ないからこそ見えてくるものもあるのです。今回の旅で知りました」
彼の優しさや選択における思慮深さ、真面目なところや粗野に見せかけてはいるが優しいところ。ふんわりとしか覚えていない前世なんかよりいっぱい好きな所をラズに抱えている。
「そうなのね……」
「あの、すみません。お嬢様、エリナ様が食べられないので用意してるお菓子を食べていただけませんか?せっかく美味しいのだからエリナ様にも食べてもらいたいと言ってたじゃないですか」
「あ、そうでしたわね!ごめんなさい。頂くわ」
アリナさんに声をかけられたペトラ様は机に置かれたクッキーを手に取り口に運ぶ。小さい口でもぐもぐと食べていく姿はとても可愛らしい。1つ、2つと口内へ消えていくとこくりとお茶が飲まれていく。
「私こそすみません、そのようなお気遣いをさせてしまって。用意して下さりありがとうございます」
「いいえ!こちらこそもっとちゃんと謝るべきですわ。私の都合で振り回してしまって。思いあっているおふたりが何故そうなのか知りたくなってしまって、会話ばかりでお菓子にまで気を使えなくて」
「いえ、気にして貰えただけで嬉しいです。ふふっ、食べさせて貰いますね」
サクッと1口齧るとバターの濃厚な香りと軽いけれどしっとりとした食感に程よい甘さ。紅茶も凄かったけれどこちらも凄い。食べすぎるのは良くないと分かりつつ、何回も手が出そうになる。
「美味しいです……これは素晴らしいお菓子ですね」
「良かったですわ。私もこのお菓子が好きなんです……これはフレドリッヒ様が昔送ってくださって……私はエリナ様とは違って恋を叶える為ではなく家のために彼に嫁ぐのですわ。私は好きな人に愛されるのは不可能に近くて……あの方は幼少期から決められている婚約者ですけど、でも、でも……お父様が男の人は私なんかより素直な女の子の方が良いって。もっと人に頼ることが出来て、優しくて、清純な女の子が、」
彼女の丁寧な言葉がどんどんと濁流に流れるように早く、うなだれるように小さくなっていく。
瞳から一筋の光が落ちていく。
「え、わ、な、泣かないでください!大丈夫ですか……?」
「あー、お嬢様は紅茶を飲んでフレドリッヒ様のお話をされるとおかしくなるんです。酔ったみたいでしょう?でも、気にしないでください。慣れていないだけなので、そして、この話はいつも私にしか話せないので出来れば話を聞いてあげてください」
アリナさんはペトラ様へハンカチを渡し、紅茶を継ぎ足していく。
「わ、私のお父様は、私を勇者様と婚約し直させて、ラズ様を第一王子派に取り込むおつもりでしたの。そして、年若く純粋で自分に素直な私の妹をフレドリッヒ様に……ぐすっ、私もその方がフレドリッヒ様にはいいと思っていたのです。実際はラズ様は私ではなくエリナ様を娶りたく思っていらっしゃいましたし、ラズ様の目的にあのお方が手伝っていらっしゃるなら婚約をなど言えません。エリナ様も良い方でいらっしゃるのに……私は人のことも考えず良くないこととを……」
両手でコップを抱え、下を向けて悲しそうに眉を顰めた。
「……ペトラ様は第1王子様の何処がお好きなんですか?」
「っ、私はあの方のお姿や仕草だけではなくて、私にだけ本音で話してくれる所が特に好きなのです。あの方には王弟や第2王子がいらっしゃるから何もかもを気楽に言うことはできないのですけど、私には……私だけにはあれがしたいとか今日は疲れたんだとか何があっても俺を信じて欲しいとか他の人には聞かせられないことでも私へ伝えてくれるんですの。とりあえずでも婚約相手として当てられていたからなのかしら。それでも、特別な存在というのは嬉しいのですわ」
「そうなのですね」
「……ええ」
「特別を感じているのは素敵ですね」
ペトラ様は小さく鼻をすすり涙を隠せない様子ですんすんと紅茶に酔っていた。最初に感じていた高貴でよく分からない人という印象が薄れ、可愛らしい女の人であるのだと分かってきた。段々と話すにつれ無防備で恋にふわふわとしていく乙女なペトラ様のことが好きになってくる。
ここまで可愛くなくともラズに浮かれる私もこんな感じなのだろうか。それは少し恥ずかしい。
ふと顔を上げると嬉しげな表情を隠せなくなったペトラ様が私に質問を投げ掛ける。彼女は私の後ろにある大きなベッドに視線を向けた。
「……あの、ご飯を食べたあとは私達で一緒に寝ませんか?」
「え、それはよろしいんですか?」
「ええ。今は私達3人、アリナが部屋に戻れば私とエリナ様の2人しかいません。そんな場所、身分は関係ないですのよ。今晩は皆で恋の話をいたしませんこと」
「ふふっ、楽しみですね」
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