魔王討伐パーティのご飯係は幼馴染の勇者に流される転生者

月下 雪華

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4-1 新たな登場人物

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「遅れました!すみません!」
 私とペトラ様で走って玄関へと向かう。夜遅くまで盛り上がってしまい準備に手間取ってしまった。 慣れないドレスに慣れない化粧。夜遅くまで盛り上がってしまい時間通りに起きても目覚めきれず、寝ぼけてしまいアリナさんに引っ張られギリギリの時間に着いてしまった。

「まぁ、早めに伝えといた時間通りだし、別にいいんじゃないか?それにしてもその格好似合ってるな。合うのを選んでくれと頼んでおいてよかった」
「……そうかな?良かった」
 ラズが私の隣に立って褒めて来たと思うと、彼の横にいたフレドリッヒ様はペトラ様に顔を顰める。ペトラ様はそれに、ビクリと肩を震わせ目を逸らした。昨日は時より見せる怖い表情も嫌いになれなれず直視するのが恥ずかしいと口早く言っていたことを思い出す。怖がっているように見せかけて可愛らしい反応であったらしいのだ。

 私がソワソワとペトラ様に気を向けていると、ラズがウンザリしたようにため息をついた。
「そろそろ出るからお前の話、終わらせといてくれよ。嫉妬に俺らを巻き込まないでくれ」
「……ラズ、俺がなんだって言うんだ。」
「気になんだって。他人の恋路に全く興味ねぇのに隣に居させられる俺の身になれ。はぁ。ほら、ちゃんと話せ」
「わ、分かっております。ですが、それは夜でも?さっき仰っていたようにもう出立の時間ですわ」
「……分かったよ。だからって逃げないで早く終わらせてくれ」
 その言葉を発しながら皆が荷物を馬車へ載せ始めているの見るがが、私はラズにがっしりと掴まれられており何も動けない。

「あの、ラズ。私は何もしなくていいの?」
「ああ。とりあえずはな。後で俺から言わなきゃいけないこともあるからな」
「言わなきゃいけないこと?」


「おやおや」
 ラズの方を向きながら瞬きをした間、顔に大きな傷が残ったマントを纏った男性と顔を幅広い帽子で隠した女性が現れた。男性はつかつかと床を鳴らし私の顔を覗き込む。

「へぇー、やはり貴方、転生者なんですねぇ」
「え?」
「お前……いままで他の所に寄り道しておきながら、いきなり何言ってんだ」
「……ふふっでも珍しいなぁ。転生者なんて」
「もう、ドゥー。話を聞かないで怖がらせるような対応しないで」
 ドゥーってあのドゥラン・マードック?あの有名魔術師の?ということはこの大きな魔女の帽子を被った女性はその妻の治癒士ヴィニーア・マードック?この人たちはなに?

「はいはい。理解はしてます。大丈夫ですよぉ。転生した者はこの世界にも少なくないですからね。私は何もしませんから気にしないでくださいまぁ、貴方がどのような人かは気になりますけどねぇ。……あの力があるということは魔力も強いんでしょうか。ラズが言っていたのが本当ならば……」
「だから、やめなさいって言ってるでしょう」
「おい、やっと全員集まったんだ。早く王城に向かうぞ」
「はぁ。ラズは私達のことをすぐこき使うんですから。確かに必要なのでしますけど次からは馬車で向かいますからね」
 ドゥーと呼ばれた男性は指を鳴らし、ぱっと視界が切り替わる。
 
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