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第十五話
風穴
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辺りは真っ暗で、明かりは月明かりだけが頼りな涼しげな夜。
中庭に出たクウコウはコーコを誘い2人きりになり、月明かりに照らされたヨーコは一段と美しく、それを見たクウコウはコーコと目が合うと緊張している様子で慌てて目を逸らした。
「今夜は綺麗な満月ですねぇ。」
コーコはおもむろに夜空を見上げながら言った。
「そうだね。本当、今日は綺麗な満月だ。」
ぎこちない会話の後、少し無言になると
「「あの!」」
2人は同時に話しかけた。
「あ、かぶっちゃったね。クウコウさんからどうぞ?」
「いやいや、コーコさんからどうぞ!」
「あ、ありがとうございます。」
コーコは可愛らしく少しお辞儀をした。
「いえいえ。」
クウコウはそれを見てニコっと微笑んだ。
「あの、こんな事を聞いて失礼でしたら申し訳ないんですけど、もしかしてクウコウさんって、お付き合いされてる方とかいらっしゃるんですか?」
「え?い、いや、いませんけど。っというか今まで女性と付き合った事がありません。」
「そうなんですかぁ?意外ですね!ハンサムなのに~。」
「いやいや~、ははは、そんなそんな、でも誰にも容姿のことで褒められた事なんてないからお世話でもとても嬉しいです。」
クウコウは照れながらも満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、僕からも同じ質問しても良いですか?」
「私も今、お付き合いしている方はいませんよ。
っていうか、お父さんがそういうの厳しいから、悪い虫は付かない様にいつも目を光らせてるんです。
だから男の子はビビっちゃって、なかなか私には寄り付かないの。」
「へぇ~!そうなんですかぁ?じゃぁ僕なんかと今こうして2人きりでいたらマズイんじゃ!」
「何言ってるんですかぁ。命の恩人にそんな失礼な事しませんよ。もし何かあったら私が許しませんから。」
「良かったぁ。それなら安心しました。」
するとそこへ、こちらへ向かってくる砂利を踏む誰かの足音が聞こえて来た。
「あれ!兄さん。コーコさんも。」
「ん?なんだ、ソウコウか。どうした?寝てたんじゃないのか?」
「いやぁ、なんだか眠れなくて。外に涼みに来たんですが、どうやらお邪魔だったみたいですね。」
「そんな事ないわ、ソウコウさんも一緒にお話ししましょうよ。」
「ありがとうございます、コーコさん。お優しいですね。」
「お二人の事をもっと知りたいし。クウコウさんも良いでしょ?」
「あ、ああ。もちろんだよ。」
クウコウは苦笑いで答えた。
こうしてコーコの提案により、ソウコウも交えて3人で涼みながら話をする事になった。
内容は、子供の頃にクウコウが風呂の中で寝てしまい何回も溺れて死にかけた事や、ソウコウが基本的に研究所にこもっている理由が太陽に当たりたくないからというエピソードをソウコウとクウコウが掛け合いながら話をして、それをコーコは笑いながら聞いていた。
そしてクウコウが風呂で溺れかけた理由が失恋が原因だったという話をした時だった。
「そうだ。実は、僕が来るまでの2人の会話、千里眼の力で聞いてしまって。本当ごめんなさい。それで2人の会話を聞いててもどかしくなってしまって、気付いたらここに来ていました。」
「ソウコウお前!やっぱり能力使って盗み聞きしてたのか!」クウコウは少しだけ声を上げて怒った。同時にコーコは少し驚いた顔をした。
「そう怒らないでくれよ。そのつもりは無かったんだけど、結果的に盗み聞きしてしまった事は本当に申し訳ない。でも、僕は弟として兄さんの為にコーコさんにお願いをしに来ました。」
「お願い?」
コーコは首を傾げた。
「兄さんは見た目は硬派で、無愛想で、気難しそうな感じに見えるんですけど。」
「ちょっとお前何を!」
ソウコウは右手をクウコウの前に出して制止した。
「でも本当はとても人思いで、優しくて、良い兄さんなんです。とくに女性に対して不器用なだけなんです。だからそんな兄をこの通りどうか宜しくお願いします!」
ソウコウはコーコに向かって頭を下げた。
「ちょっとお前、いきなり何言ってるんだよ。コーコさんが困ってるじゃないかよ!」
クウコウは突然のソウコウの行動に戸惑っている。2人はコーコの返事を数秒間待った。
すると一呼吸ついた後コーコは口を開いた。
「はい!分かりました!」
「えっ?今、何と?」
クウコウは驚いた顔をしている。
「クウコウさんが良い人だって事はもう十分に分かっています。だってそうでなきゃ、命がけで人の為に悪狐退治なんて出来ない。」
「コーコさん。」
クウコウは真剣な眼差しでコーコの話を聞いている。
「私はそんな真っ直ぐで純粋なクウコウさんみたいな人、好きですよ。」
「兄さん早く!」
ソウコウはクウコウを腕を掴むと、コーコの前へと背中を押し出した。
「お、おう。」
少しよろめきながらもクウコウはコーコの前に向かい合った。
コーコと向かい合うクウコウは下を向き、気持ちを落ち着かせると、視線を改めてコーコへと向けた。
「コーコさん!」
「はい。」
「お互いにまだまだ知らない事だらけではありますが!少しずつ知っていきたいです!宜しければお友達からでかまいませんのでどうかお願いします!」
「はい、もちろんですよ。宜しくお願いします。」
クウコウは満面の笑みを浮かべてソウコウへ向かって親指を立てた。
「お兄さん想いの素敵な弟さんですね。」
「はい、自慢の弟です。」
こうしてクウコウは、弟ソウコウの後押しのお陰でコーコと友達になり、その後交際が始まり、結婚する事になるのだった。
《時は戻り凰蓮寺》
「ってことで、ソウコウおじさんが父上の後押しをしたお陰で母上と結婚して僕が生まれたんだ。っておい!みんな聞いてる?」
ポン、りり、ヨーコは朝が早かったのもあり眠たくて、話半分しか聞いていなかった。
眠たそうなポンは頭がコクンコクンとなると、りりの頭にぶつかった。
「はっ!もうみかん食べれません!」
それと同時にりりも目が覚めた。
「あっ!もう魚食べれないにゃ!」
2人とも食べ物の夢を見ていたようだ。
りりが目覚めた事でヨーコも目が覚めた。
「あっ、やだ。私ったらつられて寝ちゃってたみたい。」
「なんだよ、みんなして人が話をしてるってのに寝ちゃうなんて。」
「すみません。」
一同で謝った。
「まぁ良いよ。そんな事より、ポンとりりの悪夢の話さ。祖父ドウゴと父クウコウが退治したその悪狐の子孫だと思うんだ。」
「悪狐に子供がいたのね。」
「ああ、そしてその悪狐の子孫はまだ生きているかもしれない。その後、僕たち陰陽導師は悪狐狩りをしていないからね。」
「悪狐狩りをしていないってどういうことですかにゃ?」
りりはジョーに聞いた。
「実はその悪狐の子孫は一度僕らの前に現れたんだ。」ジョーは腕を組んで言った。
「えっ?現れたんですか?」
ポンはジョーに聞いた。
「あれは僕が子供の頃の話。あの時、父が母を守っていればあんな事にはならなかったはずなんだ。」
「だから何があったんですかにゃ!?」
「めちゃくちゃ気になります!」
「気になるかい?でもまぁ、また話し始めた途端に寝られるのもなんだから、場所を変えよう。それと君たちに紹介したい人がいるんだ。」
「えっ?誰ですか?」
「ソウコウおじさんだよ。」
「ジョーさんのお父さんの弟で。」
「ジョーさんの叔父さんだにゃ!」
ポンとりりは一緒に言った。
「そうそう、そこはちゃんと聞いてたんだな。」
「そこだけ一応。」
ポンとりりとヨーコはペロっと舌を出してわらった。
「とにかく、ソウコウおじさんが詳しい話を知っているから直接話を聞きに行こう。僕の時空間移動術で。」
「やったにゃ~!なんだかワクワクするにゃ!」
「ぽくもジョーさんのおじさんに会えるの楽しみ!」
「時空間移動術。そのソウコウさんが
開発したのよね。」
「あぁ、そうだ。僕もソウコウおじさんからこの術を習っていたんだ。」
ジョーはそう言うと、そっと両手を合わせると複雑な印を結んだ。そして両手の平を広げて空中に大きな円を描いた。
すると、空中に手で大きく描いた見えない円が次第に可視化されていった。
その円は真っ黒で、中はトンネルの様に空洞になっている。
「ビックリしただろう?これは通称『胃空間隧道』と呼ばれている悪狐の持つもう2つ目のの『胃』をソウコウおじさんが発見したんだけど、それを移動術として応用したものが『時空間移動術』というわけだ。」
「なんだか難しいけど、これでどうやってソウコウさんのところに行けるの?」
ポンはジョーに聞いた。
「ああ、そうだよ。行き方は簡単さ。自分が行きたい場所を想像し、強く想うだけだ。想像力が大事なんだ。それじゃ、僕がソウコウさんのいる場所を想像した後に中に入るから、後から付いてきてくれ。」
「はい!」
「分かりましたにゃ!」
ポンとりりは同時に返事をした。
「それと大事なことを言い忘れていた。出来れば、ポンも僕と一緒に目を閉じてくれるかい?僕は仮にもポンの守護神だから、生身の身体のポンの協力が必要なんだ。目を閉じるだけでいい。そしたら僕と同じ映像が見えるはずだ。良いかい?」
「分かりました!目を閉じれば良いんですね?」ポンはジョーの言う通りに目を閉じた。
するとジョーの想像した映像がポンの脳内と繋がり映し出された。
「あの時と同じ感じだ。」
ポンは狛狐の右近と左近がヨーコの過去を見せた時の事を思い出した。
「ポン!なるべく他の事は想像しちゃダメだ。僕の映像に集中してくれるかい。」
「あっ、ごめんなさい!」
ポンは改めてジョーの映像に集中した。
ポンが見た映像はどこかの山奥。
山肌には巨大ないくつも無造作に重なっていて、表面にはコケが覆っている。
「ジョーさん、こんな所にソウコウさんがいるんですか?」
「分からない。でも行く価値はある。なにせそこは白虎様の寝床だからね。」
「そうなんですか?」
ポンは驚いた顔をしている。
「えっ?白虎様がどうかしたのかにゃ?」ジョーとポンの会話を聞いていたりりが2人の話に割り込んできた。
「あぁ、これから行く場所はね、りりが大好きな猫ノ神・白虎様にも会えるかもしれないぞ。」
ジョーは笑顔でりりに話した。
「え~!本当ですかにゃ~!やったにゃー!」りりは嬉しさのあまりガッツポーズをした。
「それじゃ早速行こうか!『風穴』へ!!」
「「おーーー!!」」
ポンとりりは拳を天高らかに突き上げた。
それを見てヨーコは微笑んでいる。
こうしてポンたち一行はジョーの時空間移動術により出現したトンネルの中に入って行った。
目指すはジョーの叔父のソウコウがいるであろう「風穴」という場所である。
果たして無事辿り着く事は出来るのだろうか?!
中庭に出たクウコウはコーコを誘い2人きりになり、月明かりに照らされたヨーコは一段と美しく、それを見たクウコウはコーコと目が合うと緊張している様子で慌てて目を逸らした。
「今夜は綺麗な満月ですねぇ。」
コーコはおもむろに夜空を見上げながら言った。
「そうだね。本当、今日は綺麗な満月だ。」
ぎこちない会話の後、少し無言になると
「「あの!」」
2人は同時に話しかけた。
「あ、かぶっちゃったね。クウコウさんからどうぞ?」
「いやいや、コーコさんからどうぞ!」
「あ、ありがとうございます。」
コーコは可愛らしく少しお辞儀をした。
「いえいえ。」
クウコウはそれを見てニコっと微笑んだ。
「あの、こんな事を聞いて失礼でしたら申し訳ないんですけど、もしかしてクウコウさんって、お付き合いされてる方とかいらっしゃるんですか?」
「え?い、いや、いませんけど。っというか今まで女性と付き合った事がありません。」
「そうなんですかぁ?意外ですね!ハンサムなのに~。」
「いやいや~、ははは、そんなそんな、でも誰にも容姿のことで褒められた事なんてないからお世話でもとても嬉しいです。」
クウコウは照れながらも満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、僕からも同じ質問しても良いですか?」
「私も今、お付き合いしている方はいませんよ。
っていうか、お父さんがそういうの厳しいから、悪い虫は付かない様にいつも目を光らせてるんです。
だから男の子はビビっちゃって、なかなか私には寄り付かないの。」
「へぇ~!そうなんですかぁ?じゃぁ僕なんかと今こうして2人きりでいたらマズイんじゃ!」
「何言ってるんですかぁ。命の恩人にそんな失礼な事しませんよ。もし何かあったら私が許しませんから。」
「良かったぁ。それなら安心しました。」
するとそこへ、こちらへ向かってくる砂利を踏む誰かの足音が聞こえて来た。
「あれ!兄さん。コーコさんも。」
「ん?なんだ、ソウコウか。どうした?寝てたんじゃないのか?」
「いやぁ、なんだか眠れなくて。外に涼みに来たんですが、どうやらお邪魔だったみたいですね。」
「そんな事ないわ、ソウコウさんも一緒にお話ししましょうよ。」
「ありがとうございます、コーコさん。お優しいですね。」
「お二人の事をもっと知りたいし。クウコウさんも良いでしょ?」
「あ、ああ。もちろんだよ。」
クウコウは苦笑いで答えた。
こうしてコーコの提案により、ソウコウも交えて3人で涼みながら話をする事になった。
内容は、子供の頃にクウコウが風呂の中で寝てしまい何回も溺れて死にかけた事や、ソウコウが基本的に研究所にこもっている理由が太陽に当たりたくないからというエピソードをソウコウとクウコウが掛け合いながら話をして、それをコーコは笑いながら聞いていた。
そしてクウコウが風呂で溺れかけた理由が失恋が原因だったという話をした時だった。
「そうだ。実は、僕が来るまでの2人の会話、千里眼の力で聞いてしまって。本当ごめんなさい。それで2人の会話を聞いててもどかしくなってしまって、気付いたらここに来ていました。」
「ソウコウお前!やっぱり能力使って盗み聞きしてたのか!」クウコウは少しだけ声を上げて怒った。同時にコーコは少し驚いた顔をした。
「そう怒らないでくれよ。そのつもりは無かったんだけど、結果的に盗み聞きしてしまった事は本当に申し訳ない。でも、僕は弟として兄さんの為にコーコさんにお願いをしに来ました。」
「お願い?」
コーコは首を傾げた。
「兄さんは見た目は硬派で、無愛想で、気難しそうな感じに見えるんですけど。」
「ちょっとお前何を!」
ソウコウは右手をクウコウの前に出して制止した。
「でも本当はとても人思いで、優しくて、良い兄さんなんです。とくに女性に対して不器用なだけなんです。だからそんな兄をこの通りどうか宜しくお願いします!」
ソウコウはコーコに向かって頭を下げた。
「ちょっとお前、いきなり何言ってるんだよ。コーコさんが困ってるじゃないかよ!」
クウコウは突然のソウコウの行動に戸惑っている。2人はコーコの返事を数秒間待った。
すると一呼吸ついた後コーコは口を開いた。
「はい!分かりました!」
「えっ?今、何と?」
クウコウは驚いた顔をしている。
「クウコウさんが良い人だって事はもう十分に分かっています。だってそうでなきゃ、命がけで人の為に悪狐退治なんて出来ない。」
「コーコさん。」
クウコウは真剣な眼差しでコーコの話を聞いている。
「私はそんな真っ直ぐで純粋なクウコウさんみたいな人、好きですよ。」
「兄さん早く!」
ソウコウはクウコウを腕を掴むと、コーコの前へと背中を押し出した。
「お、おう。」
少しよろめきながらもクウコウはコーコの前に向かい合った。
コーコと向かい合うクウコウは下を向き、気持ちを落ち着かせると、視線を改めてコーコへと向けた。
「コーコさん!」
「はい。」
「お互いにまだまだ知らない事だらけではありますが!少しずつ知っていきたいです!宜しければお友達からでかまいませんのでどうかお願いします!」
「はい、もちろんですよ。宜しくお願いします。」
クウコウは満面の笑みを浮かべてソウコウへ向かって親指を立てた。
「お兄さん想いの素敵な弟さんですね。」
「はい、自慢の弟です。」
こうしてクウコウは、弟ソウコウの後押しのお陰でコーコと友達になり、その後交際が始まり、結婚する事になるのだった。
《時は戻り凰蓮寺》
「ってことで、ソウコウおじさんが父上の後押しをしたお陰で母上と結婚して僕が生まれたんだ。っておい!みんな聞いてる?」
ポン、りり、ヨーコは朝が早かったのもあり眠たくて、話半分しか聞いていなかった。
眠たそうなポンは頭がコクンコクンとなると、りりの頭にぶつかった。
「はっ!もうみかん食べれません!」
それと同時にりりも目が覚めた。
「あっ!もう魚食べれないにゃ!」
2人とも食べ物の夢を見ていたようだ。
りりが目覚めた事でヨーコも目が覚めた。
「あっ、やだ。私ったらつられて寝ちゃってたみたい。」
「なんだよ、みんなして人が話をしてるってのに寝ちゃうなんて。」
「すみません。」
一同で謝った。
「まぁ良いよ。そんな事より、ポンとりりの悪夢の話さ。祖父ドウゴと父クウコウが退治したその悪狐の子孫だと思うんだ。」
「悪狐に子供がいたのね。」
「ああ、そしてその悪狐の子孫はまだ生きているかもしれない。その後、僕たち陰陽導師は悪狐狩りをしていないからね。」
「悪狐狩りをしていないってどういうことですかにゃ?」
りりはジョーに聞いた。
「実はその悪狐の子孫は一度僕らの前に現れたんだ。」ジョーは腕を組んで言った。
「えっ?現れたんですか?」
ポンはジョーに聞いた。
「あれは僕が子供の頃の話。あの時、父が母を守っていればあんな事にはならなかったはずなんだ。」
「だから何があったんですかにゃ!?」
「めちゃくちゃ気になります!」
「気になるかい?でもまぁ、また話し始めた途端に寝られるのもなんだから、場所を変えよう。それと君たちに紹介したい人がいるんだ。」
「えっ?誰ですか?」
「ソウコウおじさんだよ。」
「ジョーさんのお父さんの弟で。」
「ジョーさんの叔父さんだにゃ!」
ポンとりりは一緒に言った。
「そうそう、そこはちゃんと聞いてたんだな。」
「そこだけ一応。」
ポンとりりとヨーコはペロっと舌を出してわらった。
「とにかく、ソウコウおじさんが詳しい話を知っているから直接話を聞きに行こう。僕の時空間移動術で。」
「やったにゃ~!なんだかワクワクするにゃ!」
「ぽくもジョーさんのおじさんに会えるの楽しみ!」
「時空間移動術。そのソウコウさんが
開発したのよね。」
「あぁ、そうだ。僕もソウコウおじさんからこの術を習っていたんだ。」
ジョーはそう言うと、そっと両手を合わせると複雑な印を結んだ。そして両手の平を広げて空中に大きな円を描いた。
すると、空中に手で大きく描いた見えない円が次第に可視化されていった。
その円は真っ黒で、中はトンネルの様に空洞になっている。
「ビックリしただろう?これは通称『胃空間隧道』と呼ばれている悪狐の持つもう2つ目のの『胃』をソウコウおじさんが発見したんだけど、それを移動術として応用したものが『時空間移動術』というわけだ。」
「なんだか難しいけど、これでどうやってソウコウさんのところに行けるの?」
ポンはジョーに聞いた。
「ああ、そうだよ。行き方は簡単さ。自分が行きたい場所を想像し、強く想うだけだ。想像力が大事なんだ。それじゃ、僕がソウコウさんのいる場所を想像した後に中に入るから、後から付いてきてくれ。」
「はい!」
「分かりましたにゃ!」
ポンとりりは同時に返事をした。
「それと大事なことを言い忘れていた。出来れば、ポンも僕と一緒に目を閉じてくれるかい?僕は仮にもポンの守護神だから、生身の身体のポンの協力が必要なんだ。目を閉じるだけでいい。そしたら僕と同じ映像が見えるはずだ。良いかい?」
「分かりました!目を閉じれば良いんですね?」ポンはジョーの言う通りに目を閉じた。
するとジョーの想像した映像がポンの脳内と繋がり映し出された。
「あの時と同じ感じだ。」
ポンは狛狐の右近と左近がヨーコの過去を見せた時の事を思い出した。
「ポン!なるべく他の事は想像しちゃダメだ。僕の映像に集中してくれるかい。」
「あっ、ごめんなさい!」
ポンは改めてジョーの映像に集中した。
ポンが見た映像はどこかの山奥。
山肌には巨大ないくつも無造作に重なっていて、表面にはコケが覆っている。
「ジョーさん、こんな所にソウコウさんがいるんですか?」
「分からない。でも行く価値はある。なにせそこは白虎様の寝床だからね。」
「そうなんですか?」
ポンは驚いた顔をしている。
「えっ?白虎様がどうかしたのかにゃ?」ジョーとポンの会話を聞いていたりりが2人の話に割り込んできた。
「あぁ、これから行く場所はね、りりが大好きな猫ノ神・白虎様にも会えるかもしれないぞ。」
ジョーは笑顔でりりに話した。
「え~!本当ですかにゃ~!やったにゃー!」りりは嬉しさのあまりガッツポーズをした。
「それじゃ早速行こうか!『風穴』へ!!」
「「おーーー!!」」
ポンとりりは拳を天高らかに突き上げた。
それを見てヨーコは微笑んでいる。
こうしてポンたち一行はジョーの時空間移動術により出現したトンネルの中に入って行った。
目指すはジョーの叔父のソウコウがいるであろう「風穴」という場所である。
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