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第十話
秘策
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クウコウは父ドウゴの異変を察知した。
すると部屋の中までうっすら聞こえる程の誰かが廊下をドタドタと走る音がクウコウとコーコの耳に入ってきた。
そして部屋の前でその足音は止みドアが開いた。
「はぁはぁはぁ。」と息切れをしながら現れたのはキスケだった。
「キスケさん。そんなに慌ててどうしたんですか?」
コーコは急にドアが開いた事に驚きつつもキスケの顔中汗だくの姿を見て心配そうに声をかけた。
「はぁ、はぁ。ノックもせずにすんませんお嬢様。一大事なんでさぁ!はぁはぁ。」
「どうしたんですか!?一体何が?落ち着いて話して下さい。」
クウコウはキスケの肩に優しく手を添えて落ち着かせる様に言った。
「ホントついさっきの事!オラの目の前にでっけぇ悪狐が現れて!ほんでそこへドウゴの旦那が助けに来てくれたんだけども!悪狐に掴まれてそのまま喰われちまったんだぁ!
あー!オラのせいでオラを助けようとしたためにー!
息子さん!どうしましょう!」
キスケは半泣きでクウコウに話した。
しかしクウコウは全く動じる事も無く、むしろにこやかな表情をしている。
「大丈夫ですよ。キスケさんはそんなに自分を責めないで下さい。」
「えっ?でも。ドウゴの旦那は悪狐に喰われちまったんですよ?」
「それは作戦の内なんです。だから安心して下さい。」
「そうなんですか?良かった~!それじゃぁドウゴの旦那は無事なんですね?」
「ええ。もちろん!あとは僕が仕上げをする番です。キスケさんにお願いがあります。僕がこの部屋を少し離れる間だけ代わりにこの数珠を持っていて頂けますか?」
「へっ!へい!任せて下さい!」
「お願いします!」
クウコウはそう言って庭の戸を半分開けて素早く外へと出たあと振り向かずに戸を閉めた。
「キスケさん。クウコウさんの代わりに私を守ってね!」
コーコは笑顔でキスケにウィンクをしながら言った。
「ま、ま、まっかせてください!オラが命に代えてもお嬢様をお守り致します!」
キスケは赤面になり照れつつもコーコに背を向けて仁王立ちになった。
そして一方、庭先に出たクウコウは上を見上げていた。
「ほ~う。今回もデカイね~!
おいお前!父上を喰ったそうだなぁ!」
「お前は陰陽導師の息子だな?
あぁ!邪魔をするって言うんで喰ってやったわ!お前も邪魔をするなら喰ってやるぞ!」
「そうかそうか、父上を喰ったんだな。
それでどうだ?何か変わった事は無いか?」
「あぁ?変わった事だと?そんな事あるわけが・・・。んん?何だ?」
悪狐は胸のあたりを手で押さえて苦悶の表情へと変わっていった。
「どうした?胸焼けでも始まったか?」
クウコウは余裕の表情で言った。
「ぐっ、ぐっ!熱い!胸が熱いぞ!」
悪狐は胸を掻きむしるように悶え苦しんでいる。
「そうか。胸焼けし過ぎて熱くなってきたか。」
「一体何をしたんだ!
お前の父親は!
オレの中で何をしたんだーー!!」
悪狐は胸の苦しさが怒りへと変わり、またらず大声を上げて叫んだ。そしてその声は高縄山から山びことして返って来る程だった。
すると悪狐の口からゴボッと何がが出てきた。見るとそれは悪狐に喰われたはずのドウゴだった。
ドウゴは粘液にまみれた姿で横たわっている。
「ゴホッ!ゴホッ!はぁ!はぁ!
くそったれめ!ゴホッ!はぁ!はぁ!
上手い事出て来やがったな!
こんな事は初めてだぜ!」
悪狐は息を切らしながら苦しそうに言った。
「父上!大丈夫ですか?」
クウコウは横たわったドウゴに駆け寄り抱き起こしながら声をかけた。
するとドウゴは目を開いた。
「クウコウ!今だ!早く呪符を!」
「はい!」
クウコウは袖口から何やら紙を取り出し悶え苦しむ悪狐へと駆け足で向かって行った。
「うぉぉおお!」
クウコウは叫びながら勢いよくジャンプした。
「陰陽導術!第二陰陽呪符!」
そして悪狐の胸の中心辺りに呪符を叩き付けた。
「これで良しと。」
軽やかに着地したクウコウは父ドウゴに目線をやり親指を立てた。
「ぐあぁぁぁ!!クソーーー!!さらに体の中が燃えるように熱い!!一体オレに何をしたーーー!?」
悪狐は横たわりジタバタと苦しんでいる。
「よくやったぞ!クウコウ!」
それに対してドウゴは拳を握り低めのガッツポーズをした。
そして2人は悪狐へと目線を変えた。
するとクウコウはもう一度苦しみ暴れる悪狐の元へと距離を取る様に近づいた。
「お前の命はもう時間の問題だ。
最後に何か言い残した事は無いか?」
「オレには息子がいる・・・この・・・苦しみは・・・必ず息子が返しに来る・・・待っていろ!憎っくき陰陽導師!・・・ぐはっ!」
そう言い残して、悪狐は息耐えた。
悪狐の最期の言葉を聞いていたドウゴとクウコウは目を閉じて合掌をし悪狐の死を弔った。
「私たちの仕事はまだまだ終わりそうにない。クウコウ、私も歳を取った。無理も出来なくなるだろう。その時はお前が人々を守りなさい。」
「はい!承知しています!」
「宜しく頼んだよ。そんなことより早く仏さんをアレに入れてあげなさい。」
「あっ!そうですね!」
クウコウは着物の腹帯の間に挟んでいた
「封栓の書」と書かれた書物を取り出した。
そしてパラパラっとページをめくると白紙のページで止めた後、書物が開いた谷間の辺りに右手を添えた。
「陰陽導術!悪狐封栓!」
そう言った後、横たわっていた悪狐は黄色い光に包まれ次第に小さくなって行き吸い込まれる様に書物の中へシュルルル~っと入って行った。
「クウコウ、ご苦労様でした。
これにて一件落着!私も友達への恩義も果たせました。」
「えっ?父上、カイガンさんと何かあったのですか?」
「いやいや、話すほど大した事ではないよ。思い出は胸の中に閉まっておきます。」
「父上!そんな事言われたら気になるじゃないですか~!教えて下さいよ~!」
「はははは!それはまた今度にしましょう。」
「約束ですよ?」
「ええ、分かりましたよ。
そんな事より私はカイガンに任務完了の報告に行きます。
クウコウ、お前はコーコちゃんをお願いします。」
「はい!」
クウコウは急いでコーコの元へ向かった。それを見送るドウゴはどこか想いにふけっているようだ。
「この戦いはまだ終わっていない。悪狐の子孫がいる限り、奴らは必ずまたやって来る。復習の連鎖が終わる日はやって来るのか。なぁアスカよ。」
こうしてカイガン依頼の悪狐退治は無事に終わったのだった。
すると部屋の中までうっすら聞こえる程の誰かが廊下をドタドタと走る音がクウコウとコーコの耳に入ってきた。
そして部屋の前でその足音は止みドアが開いた。
「はぁはぁはぁ。」と息切れをしながら現れたのはキスケだった。
「キスケさん。そんなに慌ててどうしたんですか?」
コーコは急にドアが開いた事に驚きつつもキスケの顔中汗だくの姿を見て心配そうに声をかけた。
「はぁ、はぁ。ノックもせずにすんませんお嬢様。一大事なんでさぁ!はぁはぁ。」
「どうしたんですか!?一体何が?落ち着いて話して下さい。」
クウコウはキスケの肩に優しく手を添えて落ち着かせる様に言った。
「ホントついさっきの事!オラの目の前にでっけぇ悪狐が現れて!ほんでそこへドウゴの旦那が助けに来てくれたんだけども!悪狐に掴まれてそのまま喰われちまったんだぁ!
あー!オラのせいでオラを助けようとしたためにー!
息子さん!どうしましょう!」
キスケは半泣きでクウコウに話した。
しかしクウコウは全く動じる事も無く、むしろにこやかな表情をしている。
「大丈夫ですよ。キスケさんはそんなに自分を責めないで下さい。」
「えっ?でも。ドウゴの旦那は悪狐に喰われちまったんですよ?」
「それは作戦の内なんです。だから安心して下さい。」
「そうなんですか?良かった~!それじゃぁドウゴの旦那は無事なんですね?」
「ええ。もちろん!あとは僕が仕上げをする番です。キスケさんにお願いがあります。僕がこの部屋を少し離れる間だけ代わりにこの数珠を持っていて頂けますか?」
「へっ!へい!任せて下さい!」
「お願いします!」
クウコウはそう言って庭の戸を半分開けて素早く外へと出たあと振り向かずに戸を閉めた。
「キスケさん。クウコウさんの代わりに私を守ってね!」
コーコは笑顔でキスケにウィンクをしながら言った。
「ま、ま、まっかせてください!オラが命に代えてもお嬢様をお守り致します!」
キスケは赤面になり照れつつもコーコに背を向けて仁王立ちになった。
そして一方、庭先に出たクウコウは上を見上げていた。
「ほ~う。今回もデカイね~!
おいお前!父上を喰ったそうだなぁ!」
「お前は陰陽導師の息子だな?
あぁ!邪魔をするって言うんで喰ってやったわ!お前も邪魔をするなら喰ってやるぞ!」
「そうかそうか、父上を喰ったんだな。
それでどうだ?何か変わった事は無いか?」
「あぁ?変わった事だと?そんな事あるわけが・・・。んん?何だ?」
悪狐は胸のあたりを手で押さえて苦悶の表情へと変わっていった。
「どうした?胸焼けでも始まったか?」
クウコウは余裕の表情で言った。
「ぐっ、ぐっ!熱い!胸が熱いぞ!」
悪狐は胸を掻きむしるように悶え苦しんでいる。
「そうか。胸焼けし過ぎて熱くなってきたか。」
「一体何をしたんだ!
お前の父親は!
オレの中で何をしたんだーー!!」
悪狐は胸の苦しさが怒りへと変わり、またらず大声を上げて叫んだ。そしてその声は高縄山から山びことして返って来る程だった。
すると悪狐の口からゴボッと何がが出てきた。見るとそれは悪狐に喰われたはずのドウゴだった。
ドウゴは粘液にまみれた姿で横たわっている。
「ゴホッ!ゴホッ!はぁ!はぁ!
くそったれめ!ゴホッ!はぁ!はぁ!
上手い事出て来やがったな!
こんな事は初めてだぜ!」
悪狐は息を切らしながら苦しそうに言った。
「父上!大丈夫ですか?」
クウコウは横たわったドウゴに駆け寄り抱き起こしながら声をかけた。
するとドウゴは目を開いた。
「クウコウ!今だ!早く呪符を!」
「はい!」
クウコウは袖口から何やら紙を取り出し悶え苦しむ悪狐へと駆け足で向かって行った。
「うぉぉおお!」
クウコウは叫びながら勢いよくジャンプした。
「陰陽導術!第二陰陽呪符!」
そして悪狐の胸の中心辺りに呪符を叩き付けた。
「これで良しと。」
軽やかに着地したクウコウは父ドウゴに目線をやり親指を立てた。
「ぐあぁぁぁ!!クソーーー!!さらに体の中が燃えるように熱い!!一体オレに何をしたーーー!?」
悪狐は横たわりジタバタと苦しんでいる。
「よくやったぞ!クウコウ!」
それに対してドウゴは拳を握り低めのガッツポーズをした。
そして2人は悪狐へと目線を変えた。
するとクウコウはもう一度苦しみ暴れる悪狐の元へと距離を取る様に近づいた。
「お前の命はもう時間の問題だ。
最後に何か言い残した事は無いか?」
「オレには息子がいる・・・この・・・苦しみは・・・必ず息子が返しに来る・・・待っていろ!憎っくき陰陽導師!・・・ぐはっ!」
そう言い残して、悪狐は息耐えた。
悪狐の最期の言葉を聞いていたドウゴとクウコウは目を閉じて合掌をし悪狐の死を弔った。
「私たちの仕事はまだまだ終わりそうにない。クウコウ、私も歳を取った。無理も出来なくなるだろう。その時はお前が人々を守りなさい。」
「はい!承知しています!」
「宜しく頼んだよ。そんなことより早く仏さんをアレに入れてあげなさい。」
「あっ!そうですね!」
クウコウは着物の腹帯の間に挟んでいた
「封栓の書」と書かれた書物を取り出した。
そしてパラパラっとページをめくると白紙のページで止めた後、書物が開いた谷間の辺りに右手を添えた。
「陰陽導術!悪狐封栓!」
そう言った後、横たわっていた悪狐は黄色い光に包まれ次第に小さくなって行き吸い込まれる様に書物の中へシュルルル~っと入って行った。
「クウコウ、ご苦労様でした。
これにて一件落着!私も友達への恩義も果たせました。」
「えっ?父上、カイガンさんと何かあったのですか?」
「いやいや、話すほど大した事ではないよ。思い出は胸の中に閉まっておきます。」
「父上!そんな事言われたら気になるじゃないですか~!教えて下さいよ~!」
「はははは!それはまた今度にしましょう。」
「約束ですよ?」
「ええ、分かりましたよ。
そんな事より私はカイガンに任務完了の報告に行きます。
クウコウ、お前はコーコちゃんをお願いします。」
「はい!」
クウコウは急いでコーコの元へ向かった。それを見送るドウゴはどこか想いにふけっているようだ。
「この戦いはまだ終わっていない。悪狐の子孫がいる限り、奴らは必ずまたやって来る。復習の連鎖が終わる日はやって来るのか。なぁアスカよ。」
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