魔手 ~Magic Hands〜

マシュー

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第8話

魔書

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トントンとドアをノックする音が聞こえ、扉の方へと振り向く2人。

扉が開き、部屋の中へと入って来たのはピーシュだった。
「カツ殿、香音さん。お待たせ致しました。ゆっくりとおくつろぎ頂けていますか?」ピーシュが笑顔で部屋に入って来た。「あぁ、まぁね。少しビックリしたこともあったけどな。」と、勝利が答えると「そうでしょうね~。コチラとアチラの世界と比較すると驚かれることも多いかと思いますが。ご了承くださいませ。」と、ピーシュは丁寧に言った。「あぁ、わかったよ。ところで、あれ?マッくんは?」勝利はマックがいない事に気付き扉の向こうを気にしながらピーシュに聞いた。「ええ、坊ちゃんは部屋に戻られました。お勉強の続きがありますので。」「へぇ~。エライじゃん。ところでさぁピーちゃん、あの天井まであるでっかい本棚は一体何なの?」勝利が本棚を指差してピーシュに質問した。
「わたしもこれからお話しようとしていたところでしたので丁度良かったです。お二人ともどうぞこちらへ。」
ピーシュは2人を連れて本棚の前へと向かった。そして本棚の前に到着すると2人はそびえ立つ壁の様な本棚を口を開けて見上げた。「この部屋には間違いなく似つかわしくないよな。この本棚。」と、勝利が言うと。「そうですね先輩。上の本なんて届かないのにどうやって取るんですかねぇ。」と、香音が続けて言った。すると「オホン!」と、ピーシュが咳払いをすると2人はピーシュを見た。「そうですよね。お二人がおっしゃる様にこの書棚には矛盾点がいくつかあるかと思います。ですがそれは置いておいて下さい。」それを聞いた2人は右側に首を傾げた。ピーシュは話を続けた。「なぜならこの書棚は見せかけで、実は、これからお見せする【魔書】への入り口なのです。」2人は今度は左側に首を傾げた。そして2人は首を元に戻した。まず口を開いたのは勝利だった。「なんだって?!このバカデカイ本棚が?なんちゅ~大袈裟なダミーなんだよ!」続けて香音が口を開いた。「そうですよ~ピーシュさん!それに【マショ】?って言うのは一体何の事ですか??」そしてピーシュは質問に答えた。「ええ。【魔書】というのは【魔法の辞書】の事で魔法に関する全ての事柄が載っている書物なのです。」「へぇ~~!そんな本があんだ~。で?その本が一体何なの?」勝利は興味があるのか無いのか鼻をほじりながら言った。すると香音が勝利に向かって口を開いた。「先輩!何言ってるんですか?もう忘れたんですか?」「うん?何だったっけ?」勝利は腕を組んで眉をひそめて頭を傾げた。それを見ていたピーシュはクスッと軽く笑った。「香音さん。さすが察しがよろしいですね。カツ殿にはわたくしから説明を致しましょう。」「何だよ~!俺だけ話に付いていけてねぇみたいじゃんかよ。ピーちゃんどういう事か教えてくれよ~。」勝利は口を尖らせて困った表情をしながら言った。「ではカツ殿は何を目的としてこの魔天界にやって来たのでしたか?」「そりゃ~。この俺の両手の魔法の力をコントロールするためだけど?」勝利は自分の両手を見ながら言った。「そうですね。ではどのようにしてその魔法の手【魔手】のコントロール方法を学ぼうと思っていましたか?」ピーシュは勝利の周りをゆっくりと歩きながら話した。「そりゃ~。ピーちゃんが手取り足取り教えてくれるんじゃ無いの?」それを聞いたピーシュは勝利の背後でピタッと足を止めた。そして首を振りながら「いいえ。カツ殿、わたくしからは教える事は致しません。というか出来ないのです。」それを聞いた勝利は後ろを振り向きピーシュを見た。「えぇ~!そうなの?何だよ~!それじゃぁどうやって魔手のコントロールを学ぶってんだよ~!?」勝利はピーシュの意外な返答に少し驚いた。「安心してください。わたくしが出来るのはこれからその【学ぶ方法】をお教えする事です。それでは早速ですがこの秘密の扉を開けますね。え~っと、これだな。」ピーシュはそう言うと本棚の沢山ある本達の中から一冊の本を引き抜いた。と思ったらその本は本当の本ではなく本棚の一部の様で本全体が見えたところで止まった状態で、ピーシュはそのまま右にそれを半回転させた。すると、ガシャン!!と言う音と共に巨大な本棚はゆっくりと真ん中から開いていった。
「うぉーーぉ!なんだこりゃ~~!
本棚が隠し扉みたいに開いてく~!」
勝利は子供みたいに目を輝かせながら驚愕した。「わ~!先輩~!すごいですね~!なんだか面白そうですね!ワクワク。」香音も一緒に嬉しそうに驚いた。「これからお二人にご覧頂きますのは先ほど申し上げました【魔書】でございます。ですがその前に1つお願いがあります。魔書はただの書物ではございません。その名の通り魔法の書物ですから生きております。ただ、性格は臆病で人見知りで引っ込み思案なためくれぐれも驚いたり大きい声を出したりしない様にお気をつけ下さいませ。」ピーシュが2人にそう説明すると2人は顔を見合わせてニコっと笑い「は~い。」と答えた。「先輩~。今、何か企んだ顔したでしょ~?」「えっ!?そんなことないよ。」勝利は口を尖らせて口笛を吹くマネをした。「あはは。先輩、ウソが下手ですね。」「何を言ってるんだい香音ちゃん。ほら扉が開いたよ。」勝利は話を逸らす様に扉が開いた奥を指差した。
「さぁ中へどうぞ。」2人はピーシュの案内で本棚の隠し扉の中へと入って行った。なかは薄暗く視界があまり良くない。「ピーちゃん暗くて歩きにくいよ。電気無いの?電気。」と勝利が言うと「これは失礼!私たちの視界とは違いましたね。」と言ってピーシュはパチンッと指を鳴らした。

すると、ポッ、ポッ、ポッ。と等間隔に明かりが灯された。

「ありがとうピーちゃん。これで普通に歩けるよ。」
「先輩って暗いの苦手なんですか?」と香音が後ろから言うと「またまた香音ちゃんは。何を言ってるんだかなぁ~!ピーちゃん、その魔書ちゃんってのはどこかね?」と勝利はまた話を逸らした。

「ええ。もう間もなくで到着しますよ。」3人は真っ直ぐに道を歩いて行った。
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