社畜から転生したらゆるゆるの婚活アドバイザーとして就職決まりましたが

はなまる

文字の大きさ
13 / 54

12カイトに会いに行く

しおりを挟む
 
 カイトの働いているニップ商会はマルベリー通りの次のもっと大きなオリーブ通りと言うところにあった。

 プリムローズは馬車から下りるとダイルに教えられたニップ商会に向かった。

 ニップ商会の事務所は上の階にあるらしく通りの前には仕立て屋の看板が掛かっていた。

 「ごめんください」

 「いらっしゃいませ、ご用件は?」きちんとしたスーツを着こなした紳士が出迎える。

 プリムローズは緊張したが心配しているカイルに会わないわけにはいかないと声を出した。

 「あの…カイトって人を訪ねて来たんですが…私は幼なじみのプリムローズと言います」

 「カイトだって?お嬢さんお客じゃないのかい?それなら裏口に回ってくれ!」

 店員は凝ろっと態度を変えた、愛想笑いもすっと消えて苛立ったように言葉をまくしたてる。

 「ごめんなさい。どうしていいかわからなかったので…」消え入るような声で謝るとプリムローズはすぐに通りの裏手に回った。

 小さな扉があったので急いでノックしてみる。

 「はい、どなた?」


 扉が開いてカイトが顔をのぞかせた。カイトは黒髪で琥珀色の瞳をした痩せた男の子だった。最後に見たのは15歳だった。

 なのに屋敷で出会ったカイトはすっかり逞しい男になっていた。

 逞しいだけでなく元々端整な顔立ちだったのですっかり美形な男になって背も伸びてすっかりプリムローズを追い越していた。

 「プリムローズ?良かった。無事だったんだな。神殿の近くまで行ったけど警備が厳しくて追い払われたんだ。でも、神殿から出て来た騎士隊が生贄は必要なくなって良かったって言ってたからほっとしていたんだ。なのに遅いから心配してたんだぞ!」

 カイトはそう言うとプリムローズを中に引き入れた。



 「うん、遅くなってごめんカイト。あなたのおかげですぐに街で仕事を探せたわ。仕事決まったのよ。それに住むところのお世話してもらえることになって」

 「そうか…でも大丈夫なのか?それ、どんな仕事なんだ?俺が一度調べてやろうか?それに住むところって?しばらくはローリーの所に居させてもらえばいいんじゃないのか?」

 カイトはプリムローズの手を掴んで身体を引き寄せるとこそこそ小さな声で話をする。

 カイトの声が耳元にかかってくすぐったくてプリムローズは肩を震わせた。



 カイトとは仲のいい友達だったが、再会してからはまだほんの数回話をしただけだった。

 (カイトったら一体どうしたの。再会したらいきなり大人になっててわたしまだとまどってるのに…そんな態度取られたらうしていいかわからなくなるじゃない。でも心配してるって事はわかる。カイトに心配ないって話しなきゃ)

 プリムローズはドキドキする気持ちをぐっと押し込んでカイトに安心するように微笑んだ。

 「大丈夫よ。彼らは竜人なんだって、私たちと同族なのよ。そんな人がひどいことするはずないもの。カイトだってそう思うでしょう?」

 「そんなの嘘かも知れないぞ。竜人だって人化すれば人間と大して変わらないんだ」

 「ううん、私神殿で見たの。竜が空から舞い降りて来て人間の姿に変わったの。そして生贄はもうやめるって言ったの。その人竜帝らしいんだけどその人が今度働くことになった職場にいるのよ。だから絶対心配ないから」

 「そんなに言うならいいけど。ちょっと待ってろ。今仕事終わらせて送ってってやるから、それにどんなところに住むのか知っておきたいし」

 「カイト大丈夫よ。一緒にそこで働く人がついてきてくれたの」

 「はっ?何してんだよ。プリムローズ無防備すぎだろ?男と一緒に馬車になったのか?」

 「だって…」

 「っつ!お前、俺がお前を…もういい。そいつはどこにいるんだ?俺が送って行くって話をつけるから案内しろ!」

 「そんなのだめよ。これから一緒に働くのよ。気分悪くさせたら働き辛くなるから…カイトには感謝してるから。ほんとにありがとう。あなたに会えていなかったら私死んでたかも知れないもの。また遊びに来るから。あっ、これ働く縁結び処って言うところの住所。結婚相談所なのよ。うふっ。私頑張るから」

 「結婚相談所?何だよそれ?」

 「真剣に結婚を考えている人を募集してお相手を紹介するの。あっ、そうだ。カイトの働いているニップ商会にはたくさんの独身の人がいるわよね?今度募集のビラを持ってくるから配布させてくれない?」

 「そんなの上司に聞いてみないと…」

 「ええ、きちんと話をするから心配しないで。ごめんねカイト。そうだ。ローリーと会えるんでしょ?私は大丈夫だって伝えておいて、また会おうって。じゃあ、カイトまたね。ほんとにありがとう」

 「ばか!勘違いするな。俺はいつだってお前の味方だ。何かあったらいつでも頼ってこい。いいかプリムローズわかったか?」

 「うん、カイトありがとう」



 カイトはやっと手を放してくれた。そしてプリムローズが見えなくなるまで見送ってくれた。

 プリムローズは表通りに出るまでカイトに手を振った。



 そんなプリムローズを悩まし気に見ていたのはダイルだった。

 ダイルは何故かプリムローズを見た時から何か惹きつけられるものを感じた。

 それが何なのかはよくわからないが多分レゴマールもブレディもピックも、それにアルナンドの態度もおかしかったと思っていた。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...