58 / 61
58
しおりを挟むその時、馬の嘶きがして大きな物音がしました。
人が近付いてくる足音がして…
「アルベルト、一体何事だ?煙がもうもうと上がっていて驚いて来てみたら…嘘だ…」
誰かの足音がして私の身体はがっしり掴まれました。
「シャルロット!シャルロット…何があったんだ?どうしてこんな事に」
狼狽えた叫び声、震える手の感触が私の身体に伝わって来ます。
誰でしょうか?こんなにわたしを心配して下さるのは…
「クレティオス帝、薪ストーブです。私が着いた時にはもう薪ストーブの煙が部屋中に充満していて、シャルロットがどこにいるかもわからず、やっとソファーにいた彼女を連れ出してきたところです。でも彼女は息を…い、きを…してなくて…死なせない。絶対に死なせたり…クッソ…」
「いいからシャルロットをそこに寝かせてくれ‥私がやってみる」
私は地面に横たえられたらしく。
でも、声は聞こえるのですが身体は全くいうことをききません。
目を開けたいのに、まつ毛一本たりとも動かせなくて。
それに今確かクレティオス帝と言ったような…
「ハルチウム・ラウト・ゾラクス・イシュビック・マーイン…ハルチウム・ラウト・ゾラクス・イシュビック…ハルチウム・ラウト・ゾラクス・イシュビック!」
私の身体にパワーが送り込まれて来ます。力が沸き上がり心臓が鼓動を始めようとし始めています。が…
でも、まだ何かが足りないようです。
「ああ…シャルロットしっかりしろ。こんなに震えて…」
ふわりと温かい物が身体の上に掛けられました。きっとアルベルト様の上着かなにかでしょうか?
彼の香りがしてとても夢心地の気持ちになります。
「アルベルト、それは…アドリエーヌの守護の宝輪ではないのか?いったいどこでこれを?」
「あっ、クレティオス帝にお返しするつもりで上着のポケットに入れたままで、エリザベートが付けていましたがこの腕輪は彼女を守るどころか傷つけたんです」
「当たり前だ!アドリエーヌの為に作ったこの守護の宝輪は彼女自身を守るもの。他の者を守ったりするわけがない…ちょっと待て、そうだ!これをシャルロットの腕につけてみたらいいかもしれん。ほら、シャルロットこの腕輪がお前を蘇らせてくれるかも知れん」
私の腕に守護の宝輪がはめられたらしいです。
その瞬間私は魔力の泉ともいうべき力に包まれました。
守護の宝輪はシャルロットのパワーを吸収しあの腕輪の中に魔力をため込んでいた。
それは守るべき人にのみ使う力だったが…
どこからかニオイイリスの花びらが舞いシャルロットの身体の上に舞い降りて行く。
私の身体中の細胞が目を覚まし肉体の機能が復活し始めたらしく。
心臓が力強く鼓動を繰り返し、脳細胞は身体中に指令を送り始めます。
酸素を取り込み肺を酸素で満たすと呼吸が再開されました。
心臓が動き始めると指先がピクリと動いて。
まぶたがプルプル震えるとまつ毛も一緒にふるふる震えてます。
真っ白になっていた肌の色がピンク色になってとうとう唇も赤く色ずき始めたらしく。
「シャルロット!シャルロット?聞こえるか?息が…ああ…神様シャルロットが息を…息をしている。ああ…顔が…頬が…唇が色づいて…シャルロットしっかり。しっかり息をするんだ…」
私はついにまぶたを開けることが出来ました。
ゆっくり目を開けると、目の前には愛しいアルベルト様がくしゃくしゃになった顔で私を見つめていらして。
ああ…愛しいあるべるとさま。胸が締め付けられそうになります。
「ある、べる、と。さ、ま…」
「しゃ、しゃる、ろっと…ああ、良かった。良かった。君が…生き返ってくれて、君を失ったかと…失ってしまったかと」
アルベルト様は私の身体をがっしりと抱きかかえられて私をむぎゅうと抱きしめられて。
「あ、ある、べるとさま。く、くるしい。です」
「あっ!すまん。ついうれし過ぎて…」
でも私は彼の腕の中にしっかり納まっています…
彼が私を抱き上げると降り注いだニオイイリスの花びらがまた舞い上がった。
かぐわしい香りを放ちながらニオイイリスの花びらは私の周りでひらひらと舞って、まるで私の無事を祝福しているかのように見えた。
「見て、きれいです」
私はその花びらに見とれて。
「ああ、きれいだ…」
アルベルト様もその花びらを見上げて。
空は満点の星が煌めいて大きな満月さえもが顔を出していた。
そのおかげで辺り一面がキラキラ輝いているように見えた。
「シャルロットもう二度と離さない」
またアルベルト様が私をぎゅっと抱きしめて下さって。
「シャルロット良かった。やはり守護の宝輪はお前を守ってくれたな…」
聞き覚えのある声に私はぎょっとしました。
「ク、クレティオス帝?どうしてここに?えっ?でも、そんなことしたら私のことが…」
私が起き上がろうとしたので、アルベルト様が私を支えて起して下さって。
脳は混乱を極めてしまい。
クレティオス帝がどうしてこんな所にいらっしゃるのか?それに守護の宝輪が私を守ったてどういう事でしょうか?
あれはお母様のもので…それにそんな事言ってよかったんでしょうか?
あの秘密が…あわゎゎ…
1
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日
クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。
いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった……
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新が不定期ですが、よろしくお願いします。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!
藤原ライラ
恋愛
ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。
ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。
解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。
「君は、おれに、一体何をくれる?」
呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?
強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。
※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる