こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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58シュナウト殿下が可愛く見える?

 
 私はドーナン殿下の病室を後にして神殿に戻った。

 途中でおじいちゃんの側近の人がいて、カルキース辺境伯にワインを渡すように頼まれた。

 カルキース辺境伯はワインが好きらしい。

 でも、おじいちゃん、今さらこんなもので釣ろうとしたって無理だと思うけど‥でも、押し付けるように渡されて拒む事も出来なかったし、渡すだけはわたしておこう。

 私が神殿に入るとシュナウト殿下とラドール様が来ていると知らされた。

 客間に行くとふたりがいた。

 ラドール様?ああ、西の辺境伯領から帰って来たんだ。

 「リンローズ来てたのか?」

 シュナウト殿下。いつものように横柄な態度。何の反省もなし。

 だが、私を見て破顔する彼にふと無意識にうれしさを覚えて表情筋がふるっと緩むんだので急いで顔を背けた。

 ううん、もぉ!何なの?こんな奴。すっと真顔に戻してから彼の顔を見る。

 「はい、今、ドーナン殿下のお見舞いに伺っていました。かなりお元気になられていましたので安心しました」

 我ながら完璧。私はまだ立ったままそこに彼が近寄って来る。

 「そうか。ありがとうリンローズ。兄上が早く元気になってくれれば俺もうれしい」

 「殿下もお見舞いに伺ってはどうです?」ラドール様グッジョブ!

 「ああ、でも、またにする。それに時間もあまりないだろう?」はぁぁ、あんたはそういう奴だよ。

 いけない。心の中で突っ込みが止まらない。

 それにそれがまた本心だと読み取れるから始末に負えないって?


 「リンローズ。その籠に入ってるのはなんだ?」シュナウトが籠を見た。

 オートミールバーがまだ少し残っていた。それにワインもここに押し込んでいた。

 「ああ、ドーナン殿下へお見舞いにと思って作ったのよ」

 「それ、あの‥もしかして例のやつか?それにワインは?まさか一緒に飲んだんじゃないだろうな?」

 シュナウト殿下の目つきが鋭くなった。

 「病気の人にワインなんかすすめませんから。それになんです?例の奴って‥」ぎくっ!

 私は籠を隠して身構えた。


 「それ、ドーナンに食べさせたって言う菓子だろ?俺も食べたい。あっ、そのワインもよこせ」

 【それって例のあれだよね。ったく、リンローズ作ったならまず俺に食べさせろよな】

 何?言ってることと考えそのままじゃない。あほだ。やっぱりあげたくない。

 「こ、これは栄養満点の回復薬なんです。シュナウト殿下のように体力満々の方は食べなくてもいいんですよ~。ワインはカルキース辺境伯にお渡しするんです」

 私はとっさに籠を後ろに隠す。

 「あぁぁぁ、急に身体が痛くなくなって来た。このままでは結界の修復に支障が‥ああ‥胸がく、くるしぃぃぃ~」

 【もう、いいじゃないかよ。ひとつだけでも欲しい~】

 はいはい。まったくお子様なんだから。

 「もぉ、じゃあ、一つだけですよ」ジト目の私。

 そう言った瞬間、瞳がキラッと輝いたように見えた。多分。

 差し出したオートミールバーは半分だけだったが、シュナウト殿下はさすが王子、ソファーに座ると夢中でそれを貪る。

 その姿は‥可愛いと。

 時々おかしくなるな。私の不埒な脳内細胞。

 こんな奴!と思うがその様はどう見ても可愛い子犬に見える。

 恐いと思っていた気持ちはいつの間にか消えていた。あれは本当に彼の言った通り間違いだったんだとそんな考えがすとんと心に落ちる。

 私って相当お人好しだわ。

 

 「そう言えばシュナウト殿下。身体の調子はどうなんです?」

 そうだ。彼の魔力制御の事すっかり忘れてた。

 「ああ、少し身体が重だるいけど」

 【そうなんだよな。リンローズに頼むの気が引けるって言うか‥】

 ああ、言わなければよかった。魔力を出せるようになったんだからもう制御は必要ないのかもしれないけど、これから危険な場所に行くんだし何かあっては大変だしね。

 気を取り直してシュナウト殿下の隣に腰かけると殿下も素直に従う。

 「調子を整えておいた方がいいですね」

 「服は脱ぐか?」

 「いえ、あまり時間もないので、その代わり背中を向けて下さい。直接触りますがお許し下さい」

 触らずに出来ない事もないが今は時間がないので直接服の上から触れる。

 あれ?少しやせた?ううん、締まってがっしりした?もしかして鍛えているの?

 シュナウト殿下が努力してる?まさか。こんなうぬぼれやがそんなことするわけが‥

 まあいい。早く終わらせよう。


 私は彼の魔力を整える事に神経を傾けた。

 シュナウト殿下の魔力は色で言えば濃いグレー。その魔力が全身で渦巻いている感じ。刺々してて‥威嚇したハリネズミみたいだ。

 その魔力をゆっくりなだめるように落ち着かせていくと渦巻いていた魔力が次第におさまって行く感じなのだが、今日の魔力は何かが違う気がした。

 色で言えば濃いグレーから白っぽくなった感じ。相変らず魔力は多くて渦巻いているんだけど、その魔力に優しさが加わったようなハリネズミ触れせてくれるの?的な感覚。

 まあ、私も緊張しているからかも。

 「はい、終わりました」

 私はすっと立ち上がる。

 「ああ、ありがとう。やっぱりリンローズの力はすごいな。おかげで楽になった」と破顔した。

 おお!!いつ見てもやはり眉目劉伶なご尊顔と心で手を合わせるが前ほど心は乱れていないのはネイト様のせいかも。


 「殿下、そういうことはもっと早くリンローズ様にお願いしとかないと‥ったく、リンローズ様が気づいてくれたからよかったものの」

 「ああ、そうだな。リンローズありがとう」

 ラドール様の方が機嫌が悪いのも面白い構図に思えた。それにしてもシュナウト殿下が可愛いと思うとは‥まあ、彼とは付き合いも長いし可愛い弟とでも思うか‥

 でも、婚約解消はするわよ。絶対に!



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