こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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67えっ?シュナウト殿下も死に戻りなの?

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 私が部屋に戻ると侍女が来て支度を手伝ってくれた。

 私は昨日の聖女服のままだったのを今度はシャツとズボンに着替えた。

 気持ちを入れ替えて結界の修復作業をするつもりだ。とは言っても私の参加を許してもらえるかもわからないけど‥

 そこへ扉がノックされた。

 「どうぞ」

 入って来たのはシュナウト殿下だった。彼は本当に心配していたらしく顔色が悪い。

 「リンローズ大丈夫か?具合はどうだ?」

 「ええ、もうすっかり。ほらこの通り」

 そうは言ったが精神的にはかなり参ってはいるのは確かかな。ああ、これがネイト様っだたら良かったのに。と思っていたら。

 シュナウト殿下がいきなり頭を下げた。

 「すまなかった。お前がそんな事をするはずがないって言ったんだ。でも、あの状態ではどうする事も出来なくて、ああ、ラセッタ辺境伯がお前の薬をカルキース辺境伯に飲ませたんだ。解毒薬。持って来てただろう?おかげでカルキース辺境伯は助かった。今朝早くカルキース辺境伯の容体を見に行って夫人とも話をしたんだ。それでリンローズは犯人じゃないってわかってくれた」

 彼はそれはもう満面の笑顔だ。

 ああ、そうだったんだ。うん?それにしても私神宿石に触れてからちっとも人の考えが脳内に流れ込んで来ないんだけど。これってその能力が亡くなったって事?まあ、その方がいいよね。人の本心なんて知らない方がいい事もある。けど知った方がいい事も‥

 私はシュナウト殿下は昨晩の事を説明を聞きながらそんな事を思った。

 まあ、その話はネイト様から聞いてしていたけどそこは知らないふり。

 「そうなんだ。ありがとう。それでカルキース辺境伯の具合は?」

 私はそれで護衛兵が私を連れに来たんだと思った。夫人との朝食もそのせいかとも。

 「ああ、まだ熱はあるみたいだがもう命の危険はない」

 とにかく良かった。ネイト様からも護衛兵からも聞いていたけどまだ心のどこかで安心しきれなくて。


 ほっとした途端、糸が切れたみたいに饒舌になった。

 「そう、薬を持ってきてよかったわ。もう、すごく恐かったんだから。また、同じ目に合うのかと思って、だって一度目は父がくれたワインをあなたが飲んであの時はシュナウト殿下、死んだでしょう?私は有無を言わさず毒を飲む事になって‥えっ?あっ、やだ。しまった。ううん、違うの。おじいちゃんったらほんとひどい「今なんて言った?俺にワインを飲ませたら死んだ?どういうことだ?リンローズ。誤魔化さないではっきり言えよ!」‥ちょ、待って。違うって。聞き間違いよ。おじいちゃんがくれたワインだってば!」

 私は一度目の話をうっかりしてしまった。うわぁ、どうしよう。でも、どうにか誤魔化さないと‥‥

 シュナウト殿下の顔は恐いくらいに緊迫していて。

 「リンローズ?お前まさか‥‥だって死んだんだろう?どうして先の事を知って‥まさか記憶が?いや、死んで半年前に戻ったなんて言わないよな」

 ぼそりとつぶやいたような言葉にぎょっとする。

 「殿下。どうしてそれを?」

 そうよ。シュナウト殿下がどうしてそれを知ってるのよ。まだ事は起きていないのよ。

 「はっ、やっぱりそうなのか?これから数か月後、俺はお前の入れたワインを飲んで命を落とす。だが、俺は死んだはずなのに半年前に巻き戻ったんだ。リンローズもなのか?」

 「うそ、うそ、うそ。そんなことあり得ないわ。ほんとに?シュナウト殿下も半年前に死に戻ったって事?」

 「そうか。やっぱり。それで急に婚約を解消するって言いだしたわけか。アシュリーとうまくやれとか言い出しておかしいと思ったんだ」

 「そっちこそ!だから、アシュリーとは距離を置くとか、執務をやるとか言い出したの?」

 「「信じられない!」」

 ふたりで顔を見合わせて声を上げる。

 彼の顔をじっと見る。だめだ。嘘か本当かわからない。でも、これってどう見ても嘘はついてない。


 「ということはリンローズ。お前、今度はカルキース辺境伯に毒を盛ったと言う事か?どうして?」

 「もぉぉぉ!どうしてそうなるのよ!あなたの時だってあれは父にもらったワインだった。父は私を殺そうとしていたのよ。アシュリーは妊娠して私が邪魔になったから‥」

 「ああ、そういう事か‥って、お前大丈夫か?」

 「大丈夫じゃないわよ。もう、いい加減にしてよね。少しは考えなさいよ。私が貴方を殺して何の得があるのよ。あの頃は婚約だって解消するつもりはなかった。私はあなたを支えて行こうって思っていた。なのにぃ。あなたはアシュリーを妊娠させるような事なんかしてたんじゃない!大っ嫌い!もう出て行ってよ。顔も見たくないんだから‥」

 私は彼の胸を押した。

 シュナウト殿下は少しぐらついたが逆に私は肩を掴まれた。

 「悪かった。俺も今回の事で何かおかしいって、お前がそんな事したんじゃないって気がしてたんだ。お前あの時すごく俺の事心配してただろう?毒を盛った奴がそんな心配するなんておかしいって思ってた。今回だって国王代理に言いように使われたって事だよな。俺、もう決心した。あいつを国王代理から降ろす。国王には兄上になってもらおう。それならみんな文句はないはずだ。そうだろう?だからリンローズ。いや俺は国王にはなれないけどこのまま婚約者でいてくれないか?頼むよ~。俺が悪かった。この通り謝るから。なぁ、すぐでなくていいから考えてくれないか」

 「いいえ、絶対に気持ちは変わらないから。いいからもう出て行って。これから朝食なのよ。シュナウト殿下も支度しなさいよ。早く!」

 「わかった。わかった。でも、考えてくれよな!」

 シュナウト殿下はそう言うとやっと部屋から出て行った。


 そして入れ替わるようにネイト様が入って来た。彼は私のそばに駆け寄った。

 「リンローズ。さっき来たらあいつが先に入ったから。何かされなかったか?」

 「ううん、私の疑いが晴れたって言いに来てくれたの。まあ、一応婚約者だから、お礼を言って出て行ってもらったわ」

 「ほんとにそれだけか?でも、長かったじゃないか」

 ネイト様は顎に手を当ててへそを曲げたみたいにする。

 さっきの話を知られるわけにはいかない。でも、かわいい。

 何とか話を反らすには‥

 私は両手を組んで首をこてんと傾ける。思いっきり可愛いポーズ。だと思うけど‥

 「ネイト様ったらヤキモチです?だったらうれしいけど‥」

 「わっ!よせ!そんな可愛い顔。反則だぞ。リンローズ。これでもぐっと堪えてるんだ。襲いたくなったらどうする?もういい、すぐに朝食だ。一緒に行きたいがみんなの目もあるからな。じゃあ、後でな」

 ネイト様は急いで部屋を出て行ったが彼の考えはわからなかった。

 私やっぱり人の考え分からなくなったみたい。私はそう確信した。



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