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75-1神の声
しおりを挟む王都の神宿石はまさに全能の神であるガイアン大神を象徴している。
金色の神宿石は、陽の光を受けて眩しいほど輝いていた。
「とにかくガイアン大神に祈りましょう」
「「「ああ、4神の怒りを鎮めて下さるよう心から祈ろう」」」
私、シュナウト殿下、ドーナン殿下、セダ神官は、それぞれ東西南北の一に立ちその表面に手のひらを当てる。
私は心の中で念ずる。
(ガイアン大神、どうか私たちの願いを聞き届けて下さい。この国の不正を必ず正します。一部の者が神への感謝と祈りを怠った事をお許しください。ですが国の民はみな神を信じています。一部の者の愚かな行いをどうかお許しください。今、4辺境伯たちが新たな神宿石を捧げるために力を尽くしております。どうか、どうかガイアン大神のお力で4神の怒りをお鎮め下さい‥)
神宿石に私達の魔力を注ぎ込むと言うよりも祈りが身体中からあふれ出す感覚だ。
【セレネーン。ポトス。ペリオス。ウレリオン。ここに集結せよ!】
突然脳内で声がした。
それは4人同時に聞こえたらしく「今、声がしなかったか?」シュナウト殿下が声を上げる。
「ええ、きっとガイアン大神が4神を呼んだんじゃないかしら?」私。
「いいからこのまま祈りを捧げよう」ドーナン殿下。
「声は出さない方がいいかも知れません。このまま黙って祈りましょう」とセダ神官。
さすが叔父様。神官だけの事はある。神の事がよくわかる。
私はそう思いながらさらに祈りを込めた。
しばらくするとまた声がした。私達はじっと気づかぬふりで祈り続ける。
【ガイアン様。お呼びですか?】
【ペリオス。ウレリオンよく来た。お前たち何をした?国中が混沌としておるじゃないか】
【ああ、神を蔑ろにする人間を懲らしめることにしたんです。私達はずっとこの国を見守って来たのに、このところ人間は神に感謝する事さえ忘れているんです。とっくに捧げられるはずの神宿石はほったらかし。国を治める奴らは自分たちの欲に目がくらんでいるようで】
【なるほど。お前たちの気持ちはわかる。だからと言って人間を殺めるような行為をしていいとは言えん。すぐにやめるんだ。見てみろ。こうやって祈りを捧げる者もおるのだ。すべての人間を懲らしめるのは間違っておろう】
【まあ、そうですかね‥おい、ペリオスどうする?】
【どうするって、もともと言い出したのはセレネーンだぞ。あいつはまだここに来てないじゃないか。まあ、ガイアン様がそうおっしゃるなら俺達はもう怒りを納めますけど】
【ああ、わかったならもう行け。すぐに元の状態に戻すんだ。いいな?】
【はいはい。わかりました。ったく。ガイアン様にはかなわないよな】
【私もすぐに元に戻しますよ。でも、セレネーンは怒ってますから知りませんよ。それにポトスもです】
【セレネーンとポトスには私がきつく話をする。心配するな。さあ、行け!】
【【はいはい。まったく。ポトスの話に乗った私たちがばかだった‥】】
良かった。これで東と南は心配なさそうだわ。ぺリウス様。ウレリオン様ありがとうございます。でも、西と北は‥
【セレネーン。ポトス。隠れていないで出て来い!そこにいるのはわかっておるぞ!】
強い口調でガイアン大神が言うと‥
【わかったわよ~。そんなに大きな声を出さなくてもいいじゃない!】
ああ、これはきっとセレネーン様だ。
【ガイアン様。セレネーンを怒らないで下さい。彼女は悪くない。悪いのはうそをついたり騙したりする人間です】
これはポトス様だ。うん、確かにひどいと思う。けど、いい人間だっているんです。ここは怒りを鎮めて頂かないと…私は心の中でひたすら祈る。
【だが、これはやり過ぎだ。神宿石を倒すくらいならまだしも、洪水や地震を引き起こすとは何事だ!誰がそんな事をしていいと言った?!】
ガイアン大神がかなり怒っている。さしずめ今の顔はピキピキ頬が引くついている?
と思ったら空から稲光が湧き起こり雷鳴が轟く。
うわ、さすがガイアン大神。
【‥だって‥】
【だってじゃない。そもそもお前たちを作ったのは私。その私を差し置いて何を勝手なことをしておる。すぐに元に戻せ。今すぐだ!】
【セレネーン。ガイアン様の言う通りだ。これは少しやり過ぎた。なっ、いいから機嫌を直せ。私も一緒に謝るから‥ガイアン様私たちがやり過ぎました。どうかお許しください】
【分かれば今回の事は許そう。さあ、早く行け!】
良かった。
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