ピリ辛×ちょい甘+コク=猛愛?一夜を共にしたからっておかしくありません?

はなまる

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2裏切り

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 そして無事に学園の卒業式が終わった。

 後は卒業パーティーになだれ込む予定だが、今のミルフィにはパーティーに着て行くドレスさえないのだから。

 ドルトから送られたドレスも没収されたのだ。

 でも、きっと彼はわかってくれる。事情を説明しなければと思っていたがなかなか彼に聯絡できるチャンスがなかった。

 彼は「俺はミルフィを愛してる。必ず君と一緒になって必ず侯爵家を盛り立てて行く。俺と婚約してくれてありがとう」と。

 3年前ドルトは確かにそう言ってくれた事を思い出す。

 きっと大丈夫よ。そんな言い訳をして私は逃げ出すように学園を後にしてしまった。



 なのに?

 今、目の前で繰り広げられている光景は一体なんなんだろう?



 卒業式が終わると私はあれから仕事が始まるまでの間身を寄せている元乳母マベルのやっている食堂に帰って来たが私の後を追っていたかのようにすぐにドルトに呼び出された。

 私は話をしようと彼の後に続いて食堂の脇の道に入る。

 くるりと向きを変えたドルトがいきなり言ったので私は話す機会を失った。

 「ミルフィ・ギスタン元侯爵令嬢。俺は君との婚約を破棄させてもらう」

 いきなりそんな事を言われて思わずドルトに言葉を返す。

 「そんな。あなた言ったじゃない。私を愛してるって!私と一緒になって侯爵家を盛り立てて行くって!」

 いきなり婚約破棄と言われ私は思わずドルトに大きな声を張り上げていた。

 ‥

 えっ?さっき元侯爵令嬢って言ったわよね?

 一瞬先日の出来事が脳裏をよぎった。

 まさかもう知られてる?

 でも、ドルトは私を愛してるって言ってたじゃない!

 彼は戸惑う私の気持ちを無視するかのように苛立った様子で次の言葉を繰り出した。

 「それは侯爵家が存在していればの話だ。まったくいい加減にしてくれ。俺は侯爵家に婿入りできると信じたから君と婚約したんじゃないか。それなのに君の父上は借金に借金を重ねとうとう爵位没収されるまでに落ちぶれてしまった。ミルフィ君は平民になったんだ。俺がそんな君と婚約を続けるとでも思っていたのか?」

 「ええ、確かに父のせいで母は病で亡くなって爵位も取り上げられたわよ。でも、私を愛してるんでしょう?だったら私と結婚できるはずじゃない!?」



 「ねぇ、ドルト。どういう事?話が違うじゃない?」

 いつの間にか女がいてドルトの腕に自分の腕を絡ませた。

 間に割り込んだのは友人だと思っていたサクルだ。

 彼女の見かけは淡いピンク色の髪で瞳は透き通った空を思わせるような青色。なんて清純な女の子かと思わせるような雰囲気の子で、ウォルト子爵家の令嬢。

 でも、確か婚約者がいてウォルト子爵家に婿として迎える予定になっていたはずだが‥

 「サクル、いいかい俺は君だけを愛してる。だからこうやってミルフィと話をしてるんじゃないか。なっ、ちょっと待っててくれ」

 「わかったぁ~」

 なに?こんな大切な話を今夜何にする?みたいな口調で!!

 

 「ちょっとどういう事よ?先から聞いてれば私が平民になったから手のひらを返すように‥だから捨てようって事なの?」

 頭に来て口調は辛辣になった。

 「いや、ミルフィ。ちょっと落ち着こうか。それに手に平を返すわけじゃないだろう?俺だってこの先の予定が狂ったていうか‥まさか爵位がなくなるなんて誰が予想できた?」

 「そんなの私のせいじゃないじゃない!」

 私はドルトに殴り掛かった。

 バシッ!拳が彼の顎を突き上げる。

 ドルトがふらつき、ぎょっとした顔で私を見る。まあ、こんな姿淑女と言い難いだろうが今さらよ。

 

 「いや、そうだけど。でも、平民のミルフィとの結婚には何のメリットもないし‥」

 彼はそう言いながらちらりとサクルを見る。

 サクルは舌打ちしてドルトを見て一歩前に踏み出して私に縋るような顔をして見せた。

 「違うの。ミルフィ。私達は本気でお互いを思い合ってるの。あなたには悪いと思ってる。でも、あなただって偽りの結婚をするよりずっといいんじゃない?」

 サクルは必死でそう言い訳をする。

 はっ?なにいい子ぶってるのよ。

 「そうだったんだ。でも、婚約者はどうしたの?」

 「あんな人大っ嫌い。お金には細かいしいつも礼儀がどうとかうるさいんだから‥婚約はこっちからなかったことにしたのよ」

 「ふ~ん。それでドルトが目を付けられたって事?こうなったら侯爵家でなくても子爵家でもいいから婿に入れる適当な相手を見繕ったって事なのね?ドルト」

 私はぎろりとドルトを睨みつける。

 「いや、そんな事あるわけ‥」

 ドルトが真っ赤になる。

 えっ、図星?まあ、わかってたけど。



 そこにサクルがつかかって来た。

 「もぉぉ!ドルトったらあなたがはっきり言わないから‥ミルフィ。私達かなり前から親密な関係なの。いつかはあなたに話すつもりだったのよ。ただ、タイミングが悪かっただけで爵位なんて関係なかったの。だってドルトは私を愛してるんだもの」

 「サクル!お前そこまで言わなくても‥」

 ドルトが慌ててサクルの腕を掴んでこれ以上余計な事を言うなとばかりに制する。

 

 「あら、同情は結構よ。大体あなたなんか好きじゃなかったもの。それにドルト。あなたの本性が分かって良かったわ。婚約は破棄するから心配しないで。その代りドルト。わかってるんでしょうね。婚約破棄の責はあなたにあるんだから慰謝料は頂くわよ」

 いきなりドルトの顔色が変わる。

 「はっ?何言ってるんだ。侯爵家が取り潰しになったのはそっちの責任だろ!慰謝料を請求する権利があるのはこっちだろ!」

 「でも、あいにく家にはお金はないってわかってるでしょう?それに浮気してたのはあなた達だもの。あなたが払えないならウォルト子爵家に請求するから覚悟してね」

 

 サクルが蒼い顔になる。

 「ちょっと待ってよ!そんなの家の親が知ったらどうなると思ってるのよ。私達の結婚はなくなるじゃない。おまけに私、家から追い出されるかも知れないじゃない!」

 「サクルそれどういう事だよ。お前が爵位を継ぐって決まってるんだろう?」

 「うちの親はそう言う事にはすごく厳しいのよ。人の婚約者を奪ったなんて知れたら私は即刻、修道院に送られるに決まってるわ。我が家には妹がいるから子爵家は妹に継がせればすむんだから」

 ドルトが狼狽えてサクルと私を交互に見る。

 「そんな‥ミルフィ頼む。俺が悪かったって認めるから慰謝料は勘弁してくれ。なあ、頼む」



 目の前の光景が嘘であればいいのにって思う。そう何もかもが‥

 涙が潤んで私はふっと首を振って足早に食堂の中に戻った。

 「ミルフィ、だからこの婚約はなかったことで。いいよな?俺もこれ以上何も言うつもりはないから。じゃ、これでお別れだから」

 食堂の中に向かってドルトの声が響いた。

 「ミルフィごめんね。こんなつもりじゃなかったの。ほんと。ごめん。じゃあ」

 その後を追うようにサクルの声がして辺りはし~んと静まり返った。


 私はそんな勝手な声を奥の調理場で耳を塞いでいるしかなかった。




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