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3私って転生者?
しおりを挟む私は気づかないまま泣いていたみたい。
婚約は3年前だった。
私が学園に入る年でドルトは2歳年上でタティウス伯爵家の3男だった。
我が家のギスタン侯爵家は母のジプアしか子がいなくて父ドーマンを婿として迎え入れた。
そして生まれたのが私。母はもともと病弱で子供は一人が精いっぱいだったらしく祖父母には母と同じように婿を迎えればいいと言われて育った。
祖父母が数年前に流行り病で亡くなって父がその後を引き継いだが、父は事業を大失敗して酒に溺れるようになって行った。
そこに2年前の母の死。父はすっかり生きる気力を失ったらしかった。
詳しく聞けば父は借金を抱えてとうとう耐え切れず爵位を返上しようとしていたらしいが先に訴えを起こされた。
訴えを起こされ調べを受けて父は侯爵家にふさわしくないと判断されたらしい。
国王もそれを受理してあっさり爵位は没収。ギスタン侯爵家は没落した。
私にも王家から連絡が来たが母は一人っ子で叔父叔母もいないし借金を返す手立てもなく学園を卒業できるまでになった私も爵位放棄した。
これで私は借金を払う必要はなくなったからまあ助かった。
私はもともと父が苦手だった。
それはこの銀色の髪と緋色の瞳が原因だろう。
父の色でも侯爵家の色でもない髪色と瞳。
父はずっと母を疑っていた。私は自分の子ではないと思っていたのだと思う。
父は幼い時から私を避け嫌っていた。そんな気配幼い頃から感じ取っていたせいだろう。父とはずっと距離を置いて来た。
王都で父とは離れて暮らしていて父がそんな事になっているとは全く気付いていなかった。いや、気にしていなかったと言った方がいい。
母の葬儀が終わると私は母が亡くなった事を忘れようと領地には帰らなかった。
それでも学園で一生懸命学んで卒業したらドルトと一緒に父を手伝おうと思っていた。
だからここ1年は学園を卒業して騎士訓練生となっていたドルトとの関係を築く事に必死だった。
マニール国では学園を卒業した者は1年間、騎士か文官として国に尽くす事が義務づけられている。
そのため学園の授業料や学食や寮の費用は格安なのだ。将来ある若者の育成がマニール国の方針でもあった。
但し親の不幸などで領地経営に不都合が出る場合は免除もあるので貴族の親たちも安心だった。
そんな訳で私は休日には彼にお弁当を自ら作って届けて一緒に過ごす時間を作った。
自分では結構上手くいっていると思っていたのに‥
ドルトとの関係を築こうと必死だった私が笑える。
おまけにあんな父を支えようなどと思っていたことも‥
ぐらりと身体が傾いだ。
そして私は意識を手放した。
「ミルフィ大丈夫ですか?」
そんな声がして意識が戻った。
「マベル?」
「ええ、お嬢さんったらあんなところで倒れてるから驚きましたよ」
マベルは母の侍女をしていた人で私の乳母でもある。数年前に乳母もやめて王都に夫婦で食堂を開いた。
学園に通うようになってからは時々マベルのところに遊びに来ていて学園を卒業して平民となった私を心配してここに来るように言ってくれたのもマベルだった。
ロベルト夫婦もうちに来るように誘ってくれたがマベルは夫を亡くして食堂が大変と聞いていたので手伝いも兼ねてと思ったのだ。
ちなみにマベルの子供たちは独り立ちしている。
でもまさかこんな事になるとは思っていなかった。
「‥ああ。ごめんなさい」
途端に頭痛がして訳の分からない情報が脳内に流れ込んで来た。
小向りん。28歳。父は暴力夫で母はそれに耐えきれず逃げたみたい。
その後りんと弟の湊みなとはりんが12歳の時に養護施設に預けられて育った。
これってなに?
ついこの間弟の湊が大学を卒業して無事就職したらしい。
それまではずっと弟の面倒を見ていたみたいだ。
えっ?りんには恋人がいた?会社の同僚で田中リヒトって男性だ。
婚約していてが浮気現場を見て喧嘩別れしたばかりの帰り道、車にはねられて‥そこで記憶が途切れていた。
うそ‥小向りんって死んだって事?
これってもしかして今はやりの転生ってやつ?
でも、こんな小説読んだ記憶もないし、ゲームとかそもそもあまりやらないし‥
なに?
まったく異世界に転生したって事なの?
それもりんと同じく婚約者に裏切られて平民になったばかりの私に?
ったく、受けるんだけど‥
でもこうなったら仕方ないんじゃない。
ここで逞しく生きていくしかないって。それに平民だったら気楽でいいんじゃ?
私はぼんやりそんな事を思っていた。
「お嬢様?気を確かに。聞きましたよ。あのドルトって前からいけ好かないって思ってたんです。お嬢様、今は辛くてもきっと良かったと思えます。これからお嬢様は王宮で文官として働くんです。きっと素敵な出会いが目白押しです。婚約者がいないと分かればお嬢様きっと引く手あまたでしょうね」
「まあ、ちょうど良かったのかもね。あんな奴に未練はないから安心してマベル」
「そうですよ。その意気です。お嬢様!」
お嬢様連呼に気恥ずかしさがどっとこみ上げた。
「マベル。お嬢様はやめて。これからはミルフィって呼んでほしい」
「まあ、私ったら‥そうですね。これからはミルフィ様と‥」
「様はおかしいわ。ミルフィで」
「ええ、そうですね。ミルフィ‥さあ、もう少し休んだ方がいいです。おじょ、いえ、ミルフィ元気を出して下さいね」
マベルは少し涙ぐんでさっと部屋を出て行った。
見渡せば質素な造りの部屋だったが掃除は行き届いてシーツも清潔でカーテンは明るいピンクの花柄だった。
もう、マベルったらここに住むわけでもないのに私の部屋を準備してくれてるんだ。
彼女の気づかいが心に染みた。
何だか元気が出た。
さあ、これから頑張らなきゃ!
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