ピリ辛×ちょい甘+コク=猛愛?一夜を共にしたからっておかしくありません?

はなまる

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4居心地のいい空間

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 それからしばらくは食堂モリーユの手伝いに没頭した。

 前世の記憶があるせいか接客も仕込みの手伝いも難なくこなせた。

 「ミルフィには驚かされました。いきなり仕込みの手伝いなんて絶対無理だって思ってたんです」

 「ええ、私も‥でも、前から元婚約者に差し入れにお弁当とか作ってたのが良かったのかも、それに自分で作るのってなんだかすごく楽しいの」

 「そう言ってもらえると、おかげで私はすごく助かってますよ」



 マベルは嬉しそうに野菜をリズミカルに刻む。

 「さあ、そろそろ開店の時間よ。今日も頑張らなきゃ」

 私はそう言うと表の看板をひっくり返した。



 しかし‥私には大きな悩みがあった。前世を思い出したせいでこの国の食事がまずく感じて仕方がないのだ。

 まず、調味料が圧倒的にない。何でも塩味。おまけに調理法はスープにするか焼くかの二択。

 魚は日持ちさせるために塩漬けがほとんどで肉は塩で焼くか干し肉やスモークしたハム。

 チーズやミルクはあるがケーキのような菓子はなく、野菜もスープに入れるか蒸すかゆでるかくらい。記憶を探っても子供の頃から同じような食生活だったと思う。

 食堂のメニューは昼はサンドイッチがメイン。それも持ち帰りのみ。

 夜は主にシチューと肉のソテー、それに魚の酢漬けも人気のメニュー。塩漬けした魚の塩を抜いてビネガーに野菜と一緒に漬けたものだ。どうやら酒のさかなにあうらしい。

 モリーユがある場所は王都ダールの繁華街の端っこになるが、王宮のそばにある政務局や騎士隊からも近い。

 職員たちの昼食は職員食堂だけでは賄いえないし、食堂の食事に飽きると言うこともあって昼時はそれなりに忙しかった。

 それにマベルが一人で高齢ということもあってとても接客は無理なので持ち帰りのサンドイッチをメインにしたらしい。



 それでもサンドイッチの種類はハムとチーズとピクルスのような酢漬けが挟まった物だけだが。

 まあ、私があれこれ言える立場でもないので‥でも、卵サンドとかあったらもっと売れるだろうな。それにマヨネーズ。これ絶対欲しいな。



 そんな事を考えながら今日もサンドイッチを売り捌いた。

 そして夜は仕事帰りの紳士淑女が立ち寄る気軽なレストランに早変わり。

 そんな穏やかな日が続いた。



 だけどある朝仕込みの途中でマベルが腰を痛めた。急いで医者に診てもらいいわゆるぎっくり腰と診断された。

 「もう、マベルは無理しすぎなのよ。食堂は私に任せてゆっくり休んで」

 「もう、お嬢様ほんとに申し訳ありません」

 マベルが申し訳なさそうに頭を下げる。

 「マベルったら私達もうほんとの家族同然なのよ。そんな他人行儀はやめて、いいから寝てなきゃだめだからね」

 私はそう言って食堂のキッチンに行った。昼のサンドイッチの仕込みを始めながら考える。

 仕事が始まるまではまだ10日ほどあったので問題はない。

 それにしても‥

 そうだ。私が職員寮に入らずにこのままここで暮らせばいいんだ。そうすれば夜の手伝いは出来るだろうし何よりマべルの負担が減るじゃない!

 私は政務局の内務課に職員寮の入寮をやめると連絡をした。そのおかげで引っ越しの必要もなくなった。元から荷物はほとんどなかったのだが、その分食堂の手伝いが出来る方がいい。



 そしてやっと政務局に出勤する日が来た。

 マベルはすっかり元気になった。

 私は支給された足首まである紺色のロングスカートに白いシャツと同じく紺色の上着を着て髪をきちんとまとめて薄めの化粧をした。

 「マべルどう?大丈夫そう?」

 「まあ、ミルフィ。見違えましたよ。立派なレディに見えます。これなら絶対に大丈夫です。自信をもって行って来て下さい」

 「ええ、ありがとう。マべル私がいないからって無理しないでね。帰ったら手伝うから」

 「もしミルフィ。ほんとにありがとう。それにあなたがここにいてくれるなんてうそみたい。でも、仕事が一番だからあなたこそ無理しないでね」

 「ええ、じゃ、行ってきます」

 「はい、行ってらっしゃい」

 マベルは笑顔で送り出してくれた。

 温かく出迎えてくれる家があるってこんなに心地いいんだって、なんだか胸の奥がくすぐったかった。



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