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5いよいよ仕事始め
しおりを挟むマニール国の王宮は王都ダールの中心部にある。
王都ダールは周りを高い壁で囲ってあり高い鉄柵の門があってそこを通り過ぎて行くと大きなメイン通りが見えてくる。左右には店が目白押しに立ち並び賑わっている。
そのメイン通りを過ぎしばらく行くと小高い丘の上に王城が見えて来る。
いくつもの尖塔の白亜の城が現れるとその隣には石造りの建物がある。それが私が働く政務局になる。
城の向こう側には同じく石造りの騎士隊の建物があり向こうには貴族たちのの邸宅が広がっている。
政務局の門には護衛兵がいてそこで書類を見せると表玄関に向かう幾人もの新しく就職が決まったであろう男女が見えた。
私は政務局の財務課に勤務が決まっていたのでまっすぐに財務課を目指した。
新人はこっちにと案内されて財務課、管理官の執務室に向かった。
窓際の大きな机の前に40代くらいの男性が立っていた。この人が管理官だろうと思われた。
緊張で胃がむかむかするのを堪え急いで挨拶をする。すでに数人の新人職員であろう人がいた。
「失礼します。本日付でこちらに勤務する事になりましたミルフィ・ギス‥いえ、ミルフィと申します。よろしくお願いします」
平民には苗字はないのだ。
「ああ、君があの元ギスタン侯爵家の‥いや、失礼。ミルフィさん君にはこちらの職務ではなく新たに庶務課に行ってもらう事になった。せっかく来てもらって悪いが移動してもらいたい。おい、誰か悪いが庶務課の場所を教えてやってくれ!」
数人の新人職員の一人からクスッと笑いが漏れる。きれいにまとめられた金色の髪が揺れている。
別の男性からはあいつがそうかみたいな視線を向けられる。
覚悟はしていたが実際にそんな事態に晒されると心に堪えた。
気にしない。気にしない。気にしな~い♪そんな歌が前世にあったなと思うと何だか心の軋みがほぐれた。
「はい、管理官。ありがとうございます。すぐに移動しますので失礼します」
気丈にそう挨拶をして一礼して部屋を出た。
廊下に財政課の職員と思われる人がいて庶務課の場所を教えてもらった。
政務局には政務課、財政課、司法課、監察課、内務課。庶務課があって貴族が働くのが庶務課以外の部署で平民は庶務課がほとんどだったことをその時思いだした。
ああ、そうか。私って平民になったから。納得。
庶務課に行く間にすれ違う人達の視線が痛い。
明け透けに薄笑いを浮かべて見られたり、くすくす笑い声が聞こえたりした。
「あれ?ミルフィじゃない。どこ行くの?あなた確か財務課だったはずでしよ、行き先が違うわよ」
そう言って呼び止めたのはサクルだった。
ああ、そうか、サクルもここで仕事するのよね。
一気に血の気が引いた。
「ねえ、ミルフィ?」
更に追い詰めるような視線にどぎまぎしながら事情を話す。
「いえ、私は庶務課になったので…あの、サクル私急ぐから」
蒼白くなった私な顔色に気づいたのか彼女の唇が弧を描いた。
「あら、ごめんなさい。あなたもう貴族じゃなかったわね。でも、庶務課で働けるなら良かったわね。だって、働かないと生活出来ないものね。じゃ、頑張って」
つんと澄ました顔に勝ち誇ったような微笑み。
頭に来た。婚約者を平気で奪っておいてなに?その偉そうな態度!
「ええ、ありがとう。私もあなたみたいに嫌味を言う人がいるような所より平民ばかりの庶務課の方が気が楽でいいわ。じゃ、サクルも頑張って」
ふんと顔を背けてやる。
サクルの顔がひきつる。
「ええ、ドルトも私と結婚出来るから凄く頑張ってるの。私も頑張らなきゃね。じゃ」
サクルはそう言い込めると微笑んで急いで基部素を返した。
ぎゅっと拳を握り締める。
こんな人を友人と思っていたなんてばか!
気にしない。気にしない。
はぁ、ばかばかしい。
私はこの数日でくよくよ考えるのはもう疲れたのだ。これも前世を思い出したおかげかも知れない。
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