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20マクフォール管理官の手伝いに行く2
しおりを挟む馬車で数時間揺られてマクフォール伯爵領に着いた。
今日は病人の治癒が目的なので彼の屋敷などには立ち寄らず真っ直ぐ診療所に向かう事になっていた。
途中、微かに海の香りがして私は馬車の小窓を見た。
「すご~い。ここって海が見えるんですね」
「ああ、マクフォール領には港もあって漁もさかんだからな。ああ、新鮮な魚もある。ミルフィさんは生きてる魚を見たことはあるか?」
「いいえ、今までは令嬢でしたし調理前の魚を見る事もありませんでした。それに王都には新鮮な魚を売っていないと思いますから」
まっ、前世では嫌というほど見てるから、ええ、生きてる魚知ってますけど。
「ああ、実は数年前に国王が生魚を食して酷い腹板を起こされて、それ以来生の魚を王都で販売してはいけない事になってしまったんだ。まあ、生魚が危険って言うのはわかるが調理の仕方に寄ってなんとかなると思うんだが、まあ現実は厳しいって事なんだ」
ああ、そういう事情があって王都に新鮮な魚が入って来ないのか。でも、生魚のソテーやカルパチョなんか美味しいのに!
そうだ!
「あの、ここで調理できるところがあります?もちろん治癒が終わってからでいいんですが」
「ああ、港の食堂に行けば調理場くらい貸してくれると思うが‥では新鮮な魚も用意させておこう」
「いいんですか管理官。ありがとうございます」
リントがぶつぶつ文句を言う。
「ったく。ミルフィ、料理の事になると人が変わるんだから‥あいつ嬉しそうな顔をしやがって!」
「もう、リントったら、美味しいものが食べれるならいいじゃない。さあ、せっかく来たんだから手伝いしてよ」
それから私たちは街の診療所を訪れた。
小さな子供や若い男性。年おいたお婆さんや中年の男性まで、年齢は関係なくみんな揃って手や顔などがただれている。
微熱が続き倦怠感や食欲不振。ひどい人は下痢が治まらず亡くなった人もいると言う。
原因が何なのか分からず皮膚病に効果のある薬草や熱を冷ます薬草などで様子を見て来たそうだ。
それも、もう1年以上になるらしい。
私は具合の悪い人から順に治癒魔法をかけて行く。
ただれた皮膚が見る見るうちにきれいな肌に生まれ変わって行く。
お腹の具合が悪い人は痛みが治まり下痢が治まったとほっと笑みをこぼしてくれた。
小さな子供が治って喜ぶ母親にずっと微熱が続いていたお婆さんも顔色が良くなって行った。
リントも患者の治療をしてくれている。
彼は患者さんに優しく声をかけ安心させるようにそっと魔力を注いで治癒を施している。
竜人は竜力が強いものだがリントは角が折れてるのでまだそこまでの力を出せないらしいと聞いた。
彼なりに一生懸命手伝ってくれてるのでありがたい。
マクフォール管理官が治癒を施されて行く人たちを見て感慨の声を上げた。
「いやぁさすがだな。助かったよ。みんな原因が分からず仕事も手につかなくなってて、これで仕事も再会できる。ありがとうミルフィさん。やっぱり君にお願いして正解だったよ」
「ですが管理官。何が原因かわからないんじゃ、これからどうするんです?」
「まあ、そこはおいおいと‥俺も領地の事もあるが王宮での仕事もあってな」
「まあ、忙しいのはわかりますけど領民の事を考えれば原因を調べるのが先決じゃないんです?それにこれのどこが極秘任務なんです?」
「ま、まあ、こんな事自分がちゃんと領地管理が出来ていないと思われそうだろう?‥」
マクフォール管理官は口ごもって同意を求めて来る。
「そんな事‥」
「原因はわかっとるんです。あの毒草のせいなんじゃ」
突然お婆さんが口をはさむ。
「婆さん余計な事を言うんじゃない。それは彼女には関係ない事だ。ったく。ミルフィなんでもないんだ。婆さんはもうぼけてるみたいだしな‥ハハハ」
マクフォール管理官は急いで笑ってごまかすが絶対うそでしょ。でも、何もわからない以上口をはさむわけにも行かないかと思って口を閉じた。
診療所の人たちの手当てを終えると昼を回っていた。
「これでひと息つけそうですね。昼ごはんにしませんか?そうだ。診療所の皆さんもいかがでしょう?」
私とリントは持って来た昼食をその場に広げていく。
マヨネーズを挟んだ卵サンドやハムサンドに今日は丸いパンの間にミンチ肉を挟んだハンバーガー風のものや卵焼きを持って来た。
「ミルフィ。これすげぇうまそう。一つお先にいただき~」
リントは我慢できないとばかりにハンバーガー風のパンを頬張った。
「グフッ‥うますぎる!」
小さな子供たちが駆け寄って来てサンドイッチに手を伸ばす。
「さあ、遠慮しないで食べてね。こっちの卵焼きもどうぞ」
でも、卵焼きはだしがなくて味としては今いちなんだよね。鰹節みたいな代用品がこの世界じゃ手に入らないだろうな‥
それでも持って来たお弁当は大好評であっという間に売り切れ状態になった。
最期にアップルパイを小さく切り分けてみんなに配って歩いた。
みんなすごく喜んでくれて今日来た甲斐があったと嬉しかった。
ああ、でも、少し疲れた。
「ミルフィ。もし良かったらこの後港を案内しようか?新鮮な魚も準備させたあるんだ」
「ええ、ですが管理官もお忙しそうですから‥そうだ、この近くにカフェみたいな店あります?」
「ああ、案内しよう」
マクフォール管理官が手を差し伸べる。
ばしっ!リントが管理官の手をはたく。
「大丈夫です管理官。管理官もお疲れでしょう?俺達で行ってきますから」
「そ、そうか。じゃあ、1時間後に港で落ち合おう。ミルフィにうちの港を案内したいんだ」
食い下がる管理官にリントは少し嫌な顔をするがここは上司の顔を立てるべきかもと。
「わかりました。楽しみです。では管理官後程」
「ああ、ミルフィほんとにありがとう。助かったよ」
「はいはい、わかりましたから、行こうミルフィ」
リントは待ちきれないとばかりに私を抱き上げた。
「り、リント。ちょっと下ろしなさいよ」
私は焦った。はっ?何で抱き上げるのよ!
「だってミルフィ疲れたんだろう。俺が連れて行ってあげる。」
「何が安心してよ。いいから下ろしなさいよ!」
「キス以上はしないから安心して」
「勘弁しなさいよ!下ろして~」
そのまま私はカフェまで抱かれたままだった。
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