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21マクフォール管理官の手伝いに行く3
しおりを挟む私はカフェの中まで抱かれたまま入った。
「ちょっといい加減にしてよ!」
「でも、ミルフィ疲れたんだろう。遠慮はいらない。俺の膝の上に座っ「いいから下ろして!」‥‥」
リントは暴れる私を仕方なく床に下ろした。
私は服をチャチャッと直すとカフェの窓際の席にさっさと腰を下ろした。
機嫌を悪くした私はリントの事は完全に無視。
リントはおろおろしながら私の隣に座ろうとする。
「リント!私はゆっくりお茶を飲みたいの。疲れてるんだから少しはゆっくりさせて!」
「だから、俺がそばについて世話をすれば‥」
「しっ!」
手を振ってあっちへ行けを合図する。
リントはしょんぼり向かいの席に移るとすぐにメニューを手に取って私に尋ねる。
「ミルフィ、これなんかどう?イチゴのジャムがたっぷり入ったヨーグルト。それともこっちのハチミツたっぷりの紅茶とか?」
はぁぁぁ、イチゴのクレープとかパフェなんてものはないわよねぇ‥
ラテは?ないか。コーヒーがないんだから‥
「リントいいから少し黙ってて!」
その時目の前を店員が美しいサケのような魚が乗った皿を運んでいくのが見えた。
「こ、これは何ですか?」
「はい、これはモドリと言いまして生まれた川に戻って来る不思議な魚なんです。今はちょうど遡上の時期でして脂がが乗って美味しいんですよ」
この魚は日本で言うサケじゃない!こんな魚がこの世界にもあったなんて!!
そうだ、管理官に港を案内してもらえばもっとおいしいものがあるかもしれない。
いや、取りあえずこの魚を食べたい!
「私もその魚を下さい!」
運ばれて来たその魚は生をソテーしてあった。塩とハーブがまぶされて脂がのってその美味しい事。
私は一口食べるたびに脳芯が震えた。お腹の底から美味しさを堪能した。
「ミルフィ俺にも一口‥」
「いやよ。こんなにおいしいもの上げるわけないじゃない。自分も頼めばいいでしょ!」
「俺はミルフィの作った物しか食べないことにしてるから‥あ~んしてくれたら」
「あっ、そう好きにして」
リントはそんな私を見て嬉しそうに涎を垂らしていた。
時間になって管理官と落ち合って港をあんなにしてもらう事に。
「港にはたくさんの船が出入りしていて大きな船は入り江の向こうに停泊しているんだ。漁をする船はこの岸まで入って来て、捕れた魚はここからあっちの建物に運ばれて、あの建物で魚の加工をして王都などに運ぶんだ」
マクフォール管理官は自慢げに私達を案内する。
「マクフォール領では、生の魚も食べるんですか?」
「生は‥どうだろう?俺はほとんどこちらにはいないから‥ああ、君。この辺りでは生の魚を食べるのか?」
すぐ近くにいた漁師らしい男に声をかける。
管理官全然地元のこと知らないんですね。これはあてにならない。
「ええ、もちろんです。イキのいい魚はうまいですから」
「そうか。だそうだミルフィ」
「あの、地元の料理を食べれる店とかあります?」
私はその漁師さんに尋ねる。
「ああ、あそこに見える食堂に行けば今日捕れた魚を食べさせてくれるぞ」
「そうなんですね。ありがとうございます。管理官行ってみませんか?私、どんな魚料理が出て来るのかすごく興味あるんです」
「いや、俺は遠慮しておこう。実は魚の匂いは得意じゃなくて‥じゃあ、先に案内をして後であの食堂に立ち寄ったらどうだろう?」
「いいですけど。後はどこを案内して下さるつもりです?」
「ああ、良ければ俺の船に招待しようかと思っているんだ」
「管理官。船をお持ちなんです?魚が苦手なのに?」
「ああ、帆船でヤハトという乗り物で風を受けて水上を走らせると気持ちがいい。沖合に出てのんびり揺られるのはいいものだぞ。どうだミルフィ一緒に」
管理官はすがすがしい顔でそんな話をして私に手を差し伸べた。
きっといつもそんな言葉で女性を誘っているのだろう。自信たっぷりなその微笑みに私は背中がゾクッとする。
それに私は海が苦手なのだ。
「悪いが管理官。ミルフィは海は嫌いなんだ」
リントが先にそう言った。どうしてリントがそんなこと知ってるの?私そんな話してないのに‥
でも、今は管理官に断りを言う方が先だ。
「いえ、申し訳ありませんが私、海は苦手ですのでご遠慮します。私はやはり食堂が魅力的なのであちらに行ってきます。帰りの時間には間に合うようにしますので」
「そうか、残念だ。では、また帰りに」
マクフォール管理官は立ち去って行った。
「リント。どうして私は海が苦手ってわかったの?」
「うん?ああ、ミルフィ誘われて何だか嫌な顔しただろ?だからそうなのかなって思った」
「そう。でも、そんな細かい事に気づくリントも気持ち悪いけど」
リントの顔が見る見るうちにしぼんでいく。
「えっ?そんな。俺はミルフィが嫌がってるからと思ったから‥」
声は蚊が鳴くほど小さくなって。
「まあ、リントの気持ちはうれしいけどね。やり過ぎはちょっと」
「わかった。気を付ける!」
リントはすぐにシャキッとして私の腕を取った。
「えっ?」
「食堂行きたいんだろ?急がないと。ほら、行くよ」
ああ、ここにも邪魔ものがいた。
私はほんとに頭を抱えそうになった。
でも、食堂に入ると一気に気分は上がった。
そこには魚料理が目白押しでいい匂いが店中にしていた。
生の魚のソテーに、ブイヤベースのようなスープにアヒージョもどき、イカや貝料理もあった。
もしいつものような料理だったら自分で調理でもしようかと思っていたがそれどころではなかった。
私は早速ブイヤベース風のスープを頼んだ。
「うっ、美味しい~。リントも食べたら?」
「やだ。俺はミルフィの料理がいい。でも、あ~んしてくれるなら」
もう、めんどくさい男。でも、そんな事言われるとうれしいのも嘘じゃなくて‥
「仕方ないわねぇ。じゃあ、はい、あ~ん」
リントは眩しいほどの笑顔を浮かべて口を開ける。
その口にスープも魚も一緒にスプーンで放りこむ。
「うん!旨い」
「でしょ。でも、これ、辛子があるともっとおいしいはずよね」
そうだ。私は念じる。
手に辛子が現れた。
それを少しスープに振りかける。
味にアクセントが出来てもう、何とも言えない美味しさに早変わりした。
食堂のおばさんが不思議そうな顔で尋ねた。
「お客さん。そりゃなんだい?」
「辛子って言うスパイスです。これを入れるとすごく味がしまるって言うか‥」
おばさんは興味深々でそれをぱらりと振りかけてブイヤベースを飲んだ。
「何だいこりゃ?味が断然しまって旨い。お嬢さんこれはどこで手に入れたんだい?」
「いえ、これは偶然知り合いから貰ったもので‥」
「どこに行けば手に入るんだい?ぜひ、知りたい」
リントが口をはさんだ。
「その調味料はピュタール国にしかないと思います。手に入れるのは困難かと」
私はそれを聞いて啞然とする。そんなものをどうして私は手に入れられるんだろう?
「そうか、そりゃ諦めるしかないな」
「だったらこれだけでもどうぞ」
私はまた念じれば出て来るんだからこれくらい上げたって。
「いいのかい?」
「はい、ほんの少しで申し訳ないんですけど」
「とんでもない、貴重なものをありがとう。そうだ。お嬢さんお代はいいからもっと食べて行きな」
そう言って私は色々な料理を振る舞われたのだった。
おまけにカツオに似た魚を発見。もしかしてこれを燻製すればかつお節が出来たりしないかな?
やってみる価値はある。
「おばさん?この魚を少し分けてもらえませんか?」
「ああ、シマクロかい?この魚はえぐみがあってソテーには向かないよ。まあ、スープにすればいいだしが出るんだけどね。欲しいなら持って帰っていいけど、生のままじゃねぇ‥」
「ええ、さっと湯通しして持って帰っていいですか」
「ああ、それなら安心だ。たくさん持っておかえり」
「ありがとうございます」
こうやって私は充実した一日を過ごした。
「そう言えばリント。私が願ったらいろんなスパイスが出てくるのってあなたと関係あるのかな?だって、あのスパイス、ピュタール国にしかないんでしょう?もしかしてあの一夜が関係してるとか?」
「そんな事ある訳‥」
リントが焦った様子で否定した。何かあるのかも?でも、これ以上リントを追及して万が一あの力を使えなくなったら困るし。
「そうよね。まさかよね。ごめん余計な事だった」
私はさらっとその話をスルーすることにしたのだった。
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