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しおりを挟むミシェルとルヴィアナは王太子の執務室に急いだ。
「レイモンド入りますわよ」
お母様も気がせいているのかドアをノックするなり執務室に入った。
「母上、いきなりどうされたのです」
レイモンドお兄様は驚かれて椅子から立ち上がり、ローラン様も手に資料を持たれたまま立ち止まってしまいました。
「お兄様。ローラン様お久しぶりです。ゆっくりお話をしたい所ですが急ぎの用なんですの。ランフォード様はどちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
「ルヴィアナどうした、王妃教育が忙しいと聞いているがいいのか?」
「お兄様、私がどなたと結婚するかご存じなのですか?ディミトリー殿下なのですよ」
「ああ、それは国王からも話が合って、あの時はランフォードと聞いたが婚約していたとは知らなかったから…良かったじゃないか」
「何が良かったのです?あんな人と結婚なんて死んでも嫌です。今まで私にはそのことは知らされていなかったんですよ。さっきお母様が来られて初めて知ったのです。国王も王妃もひどすぎますわ」
ルヴィアナは怒りをあらわにするが、すぐに肝心な事を思い出した。
「いいえ、そんな事よりランフォード様はどちらに?」
ルヴィアナはとにかくランフォードに会って話が聞きたかった。
「いや…それは…」
「もしやもう結婚されたのですか?」
ルヴィアナの頭に恐ろしい光景が広がる。ランフォードが別の女性と結婚式を挙げている姿が…
「そんな…ひどい。ひどすぎます。ランフォード様は私に結婚して欲しいと…」
彼を信じ切っていたルヴィアナに一抹の不安が浮かんだ。もしかして私は騙されたの?
「まさか、そんなはずはない。ルヴィアナ、結婚がそんな早く出来るとでも?」
レイモンドはルヴィアナを慰めるようにルヴィアナの肩を抱き寄せた。
「それより気になることがある。実は先日シャドドゥール公爵家の執事から伝言が来たんだ。主人に大切な用があるから一度屋敷に帰ってきてほしいと…執事の話ではランフォードは忙しいので王宮に泊まり込むと連絡があったらしいが、だが、ここにはいないしずっと姿も見かけていないから知り合いの近衛兵に聞いたんだ」
「それでランフォード様は?」
「どうやら牢に入れられたらしい。国王からランフォードに次期国王の件はなかった事にすると言われて国王に殴りかかったらしい。それで捕らえられて牢に…」
「そんなばかな…だって議会で決まったってお兄様はおっしゃったではないですか。それなのにどうして国王が」
「何を言ってるんだ。議会で決まっても任命権は国王にある。国王が拒否すればそんな話はなかった事になる…ルヴィアナだって分かっているだろう?」
「信じれないわ…」
民主主義の国で育った杏奈には信じられないが、ここは別世界なのだ。兄がそう言うならそれが正しいのだろう。だとすればランフォード様は今、牢に?
もはや怒りか不安かさえわからなくなる。
「お兄さますぐに会いに行かなくては…」
「だが、ランフォードは国王に逆らった重罪人。勝手な真似は無理だ。無茶を言うな!」
「だったら国王にお願いしますわ。お母様いいですよね?」
「ええ、私もそんな事があったなんて知りませんでしたわ。私も一緒に行きましょう。国王にランフォードに会わせてもらうように言いましょう」
ミシェルは思っていた、こうなったらシャドドゥール公爵からはっきり言ってもらった方がルヴィアナもあきらめがつくというものです。
*************
「陛下。どういう事でしょうかシャドドゥール公爵様が捕らえられたと聞きましたが」
ミシェルがニコライに問いただす。
ふたりとも執務室に入ったところでまだ座ってもいなかった。
「そのことか…」
「陛下、彼に会いたいんです。どうかお許しを下さい」
ルヴィアナは頭を下げた。
ニコライの返事は思った以上に悪かった。ソファーに座るようにとも言わずニコライは面倒がるように話始める。
「ミシェル、ルヴィアナ。その話は聞いてやれん。あの男は国王の座に目がくらんで婚約していたにもかかわらずこの話を受けるつもりだった。婚約者を苦しめただけでなくルヴィアナまでも騙したんだ。自分が留守だったのをいいことに議会や私までもだ。そんな男に会いたいなどと信じれん。いいか、ルヴィアナもうすぐ結婚式だ。他の事は何も心配しなくていい、ふたりとも式の準備に忙しいはずそんな事をしている暇はないはずだ。わかったら行きなさい。私も忙しいんだ」
ニコライは衛兵を呼ぶ仕草をする。
「陛下。ランフォード様に合わせて下さい。私は彼に会って話を聞くまで絶対に結婚なんかしませんわ」
いえ、ディミトリー様と結婚する気はありませんと言った方がいいのかもしれません。
「私に逆らうのか?」
国王の顔色が一気に豹変する。ルヴィアナに冷たい視線を浴びせる。
そんな顔をしても恐くなんかありませんから!
「いけませんか?私も牢に入れるとでも?どうぞ。そうすればランフォード様とお話が出来るかも知れません」
ルヴィアナは自分でも言い過ぎだとは思ったがもう止まらなかった。
「ばかな事を言うな。女性がそのようにでしゃばるものではない。いいからミシェル、ルヴィアナを連れて帰れ。結婚式までもう日がないんだ。ルヴィアナをしっかり見てやりなさい!」
「ルヴィアナ言い過ぎですよ。陛下に失礼でしょう。いいから行きますよ」
「でも、お母様。こんなのひどすぎます。私、ディミトリーなんかと結婚しませんわ」
「何を言っているのです。こんな光栄な事を…あなたは王妃になるのですよ。国王はあなたのためを思っているのです。さあ、いいから行きましょう」
ミシェルはルヴィアナの手を引っ張って部屋から連れ出した。
ルヴィアナの頭の中に突然母の考えていることが伝わった。
”国王に逆らおうなんて、いくら何でもやりすぎですよ。それに男なんて誰も一緒なんです。愛しているなど口先だけで、一番信頼できるのは高い地位に就く事。そうすればおのずと欲しいものは手に入るのですから、ルヴィアナの幸せは王妃になること。そう、ルヴィアナこそが王妃にふさわしいのですから、そのためならどんな手段でも使います”
お母様までそんな考えだったとは…
ルヴィアナの気持ちは、底なし沼に沈んで行くみたいになる。身体も気だるくなって行く。
いっそこのままどこかに逃げ出してしまいたい。みんなが私を操り人形のように。
どんなに抗っても運命に逆らうことは出来ないと悪魔があざ笑うかのように。
いいえ、私は決してあの人たちの思い通りにはなりません!
どんな手段を使っても結婚なんかしませんから。
でも、でもその前にランフォード様と会わなくては…話はそれからでも遅くはないはずです。
私に結婚を申し込んでおきながら、彼にはきっちり落とし前付けていただきますから!
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