お別れ前提。やっぱりですか。そんなの最初から分かっていましたが

はなまる

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7ソル襲われる

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 ソルが王女のメイドとして働き始めて1週間が経った。

 いやだいやだと言いながらも、ソルは本来責任感が強く仕事もテキパキこなせるのですぐに仕事を覚えて他の侍女たちとも打ち解けて行った。

 クリストフは、王女の学園に一緒に出向き、お茶の時間や食事の時、そのほか公務のそばに付き添うのが日課だった。


 ソルがメイドになってからはクリストフの日課は変わった。

 まず朝一番。ソルの部屋まで迎えに行く。まず目に入るのはソルの可愛らしいメイド姿。その姿に心躍らせる。

 それから一緒に王女の部屋まで肩を並べて歩く。この時ソルのひとまとめにした髪が揺れていい香りが鼻腔の奥深くに入り込む。この素晴らしく幸せな至福の時に心を震わせる。

 それからお茶の時間までは地獄とまではいかないが、時間が立つのが遅いとイライラを募らせる始末。

 そして待ちに待ったお茶の時間。ワゴンを押して入って来る時からクリストフの緊張は一気に高まる。

 ソルの後ろ姿や横顔、手のさばき方。どんな動きも見逃さないよう一つ一つを目を皿のようにして見守る。

 きっとクリストフは息もしていないのではないかと思う。


 そしてメイドの仕事が終わったソルを送り届ける。日によっては王女が夜会などに出る場合はその後また王女の所に戻ることもあるが、ソルをひとりで帰らせるようなことはしない。

 何しろソルを守ると言い切ったのだ。責任があるといくらソルが言ってもやめることはなかった。


 10日も過ぎるとソルが帰りに言い始めた。

 「クリストフ。あなたの言いたいことはわかったわ。でもね。これはやり過ぎよ。私は子供じゃないの。帰りはひとりで帰れるから、もう送るのはなしにしてね」

 「だめだ。ソル。いいか。騎士団の奴らも王宮で働いている男達もソルを狙っているのが分からないのか?ソルだって男が危険な生き物だって知ってるだろう?」

 ソルが何を騒動したのか真っ赤になる。クリストフの脇腹をいきなり拳でこつんと叩く。

 「な、なに言ってるのよ。まだ明るいのよ。そんなことする人いるはず…」

 そこまで言ってソルが固まる。

 (自分はどうだったのよ。夕暮れ時あいつに好きなようにされていたのは誰なの?)

 いやなことを思い出してソルは走り出す。

 「ソル!待て。おい、っ待てよ!」


 「いいから。ついて来ないでよ。クリストフもう朝も帰りも来ないで!じゃあね」

 クリストフはその場から動けなくなった。

 ソルに嫌われた。どうすればいい?

 こんなに好きなのに。

 ソルにはいつも幸せでいて欲しいのに。

 俺は邪魔か?ソル。



 それから数日が立った。

 あれからクリストフは朝のお迎えも帰りに送ることもしなくなった。

 ソルは挨拶はしてくるがそれ以上の事は何も言ってもくれない。クリストフは何を話したらいいかも分からず挨拶だけすると後は何も言えなかった。


 そんな日ソルが襲われた。

 ソルは仕事を終えていつものように王宮の使用人で入り口に向かう途中だった。

 そこに行くまでには王宮内の廊下を歩いて階段を下りてまた長い廊下を歩く。

 その途中の部屋に連れ込まれた。

 幸いソルが暴れて大声を出したおかげで他の使用人が気づき事なきを得たのだが…

 ソルに良く似合っていた黒い仕立ての良いメイド服は胸元に裂けめが入りスカートの部分にも亀裂が入っていた。


 ソルはすぐに侍女長の手配で支度部屋と言う侍女の控えの部屋に運ばれ医師の診察を受けた。

 何もなかったのは事実で、打ち身と擦り傷だけで他に目立った外傷はなかった。

 「ソル。相手の顔を見ましたか?」 

 侍女長キャサリンは事を深刻に受け止めていた。王宮にはたくさんの若い女性の使用人がいる。もしまた同じようなことが起これば大変なことになると分かっていた。

 「…言えません」

 「どうして?これはあなただけの問題ではないのです。犯人が誰かわからないと困るのです。いいから言いなさい」

 ソルはものすごく困った。


 襲われたとは言っても一度はそう言う関係にあったブロスだったからだ。

 ソルは仕事を終えて廊下を歩いていたらいきなり腕を掴まれてあの部屋に連れ込まれた。

 ソルは驚いたが相手がブロスとわかって少し安堵した。

 ブロスはソルに滾々と話をした。婚約者が出来てからと言うもの今までの素行を改めるよう皇王からきつく言われたらしくずっと我慢していたと。


 「ソル。でも、俺はもう限界なんだ。わかるだろう?ソルとの逢瀬はいつも楽しかった。頼む。頼むから内緒で相手をして欲しい」と言い寄られた。

 (はっ?今さら何を言ってるのかとむかついた。それも欲のはけ口の為に?)

 「そんな事。殿下には婚約者がいるじゃないですか。私に頼まれても困ります」

 「そこを何とか頼む。ほら、触ってごらん。ソルを見てこんなに…」

 ブロスの遠慮のない手がソルの手を掴んでズボンの膨らみに…

 「バッチ~ン!何するんです。放してください。出ないと声を出します」

 ブロスは一瞬引き下がったが…

 「ソル、それは困る。こんなことをしたと知れたら…父に何を言われるか…他の令嬢も俺と関係するなときつく言いつけられてるみたいで駄目だったんだ。だからソル!」

 (なんですって?他の女にも同じことを?うぅぅぅぅ。許せない。一度ならず二度までも!)

 逆らうソルに逆上したのか、ブロスの力は追った以上に強くソルのメイド服は引き破られ力ずくで奪われそうになる。

 ソルは渾身の力を振り絞った。

 「私を何だと思ってるのよ!あなたなんか大っ嫌い。いいから、放して…きゃ~助けて~誰か‥だれかたすけて~」




 「ソル。名前を言ってくれるまで返しませんよ。アンナ様からもはっきり聞きだすようにと言われてますからね。さあ…」

 ソルはやっとブロスが犯人だと侍女長に話した。

 そして自室に戻って来た。



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