番?そんなもの信じられません

はなまる

文字の大きさ
24 / 37

24策略

しおりを挟む

 まずは竜帝が乾杯をして晩さん会は順調に進んだ。

 和やかに出される食事をそれぞれが堪能していたが何しろ会話がない。

 ジェスとセリーシアだけは互いに目くばせして楽しそうだ。

 リリーシェは緊張とドレスのせいで喉の奥に食べ物を流し込んでいるだけのような食事で気分が悪くなりそうだった。


 ふいにユーリ様がいきなり尋ねて来る。

 「これはリスロートでは有名な料理なんだ。何だと思うリリーシェ?」

 「これですか?」

 見た目はハンバーグのような肉をミンチ状にして焼いたみたいだが…

 「ミートローフのようなものでしょうか?」

 「まあ、見た目はな。何の肉?」

 「はぁ、羊とか」

 「ぶぶー。残念。これはダチミューと言う飛べない鳥の肉だ」

 「ダチミュー?鳥なのに飛べないんですか?」

 「ああ、すごく体が大きいんだ。それで飛べないんだろうな」

 「すごく面白い鳥ですね。見てみたいですね」

 「今度行ってみるか?」

 「その鳥を見に?」

 「ああ、ヴァイアナには植物園や動物園があってダチミューもいる」

 「動物園ですか?うわ、すごいです」

 (前世の頃の動物園を想像する。でも、ここは異世界一体どんな動物がいるのだろう)


 「あの、リリーシェ、それはそうと今日、指輪を買いに行ったら君がデザインしたという指輪を見せてもらった。本当にリリーシェがデザインしたのか?」

 リオン殿下が気まずそうに口をはさむ。

 アリーネが指を出して指輪を見せた。

 「ああ、ええ、そうなんです。私なんかまだまだなのに皆さんに喜んでいただいてうれしい事です」

 「ピュアリータにいた頃にはそんなことしてなかったじゃないか」

 「はい、私には仕事がたくさんありましたから…」

 「今後はそう言うことも考えるつもりだ。だから」

 「リオン殿下、今はお食事中ですよ」アリーネがそれ以上は無粋だと止める。

 「ああ、すまない。何しろ気がせいて…いいんだ。食事を続けてくれ」

 それからみんなはしばらく静かに食事をつけた。



 「きゃっ!」

 いきなり静寂が破られた。

 アリーネがワインのグラスを倒してしまったらしい。

 「まあ、大変。ドレスは?」

 リリーシェも慌ててこぼれたワインにナプキンを当てる。


 アリーネは何とかドレスに被害はなかったが自分の侍女に命じてワインを持って来させた。

 「お騒がせして申し訳ありません。お詫びに新しいワインをいかがです?」

 「ああ、いいね。アリーネみなさんにワインを」

 リオンがせっかくだからとアリーネにワインを注いでまわるように言う。

 アリーネはワインのボトルを持つと竜帝のグラスからワインを注ぎ始める。

 そうやってみんなのグラスにワインを注いで回った。

 「では、乾杯」

 アリーネ自らワインのグラスを持って乾杯をした。


 すぐにリリーシェとウルムの様子がおかしくなった。

 アリーネが仕込んだ『番もどき』が効いてきたらしい。この薬は即効性があり酔ったような感覚になる。

 「リリーシェ大丈夫?酔ったんじゃない?」

 アリーネがわざとらしく声をかける。

 「ええ、そうかも。ドレスで締め付けてるからかもしれないわ。陛下、皆さんすみませんが先に部屋に戻ります」

 リリーシェは断りを入れて席を立った。

 「リオン殿下。リリーシェを送って差し上げたらどうかしら?」アリーネが言う。

 リオンもリリーシェを説得するチャンスと席を立つ。

 「ああ、そうだな。リリーシェ大丈夫か」

 リオンが席を立って回り込もうとしたその時。


 「リリーシェは僕が送ろう。さあ、リリーシェ僕に縋っていいから」

 リオンよりいち早くリリーシェに手を差し伸ばしたものがいた。

 「ウルム様ありがとうございます」

 リリーシェはためらいもなくウルムの手を取っておまけにふらついてそのままウルムに抱きかかえてもらう格好になった。


 その瞬間『番もどき』が発動した。

 「リリーシェ」

 「ウルム様」

 見つめ合うふたりの瞳は見開かれたと思ったら蕩けるような甘さを出していた。

 「もう、どうしてリリーシェが。それにあれはユーリ様じゃないの?!」

 アリーネは悔しそうに唇を噛んだ。

 (まあ、私に取ったらどちらでも構わないんだけど…それにしてもどうしてあのふたりなのよ!)


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

処理中です...